読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

哲学探偵 鯨統一郎 光文社文庫

2012-04-28 22:55:22 | 読んだ
鯨統一郎は、近年のめり込んでいる作家である。

そして、この哲学探偵は、これまで読んだものとは違うシリーズである。

では、これまで読んだシリーズとは

・サイコセラピスト探偵波田煌子シリーズ
・タイムスリップシリーズ
・間暮警部の事件簿シリーズ
・作家六波羅一輝の推理シリーズ
・早乙女静香シリーズ
・桜川東子シリーズ
・とんち探偵一休さんシリーズ

このほかにもシリーズにはなっていないものの、シリーズになるのではないか?と予感させられるものがある。

上記に掲げたものの多くはいわゆる「推理小説」に分類されるものであるが、まじめにというか従来の推理物と同様に事件に正面から向かい合っているものは「作家六波羅一輝シリーズ」くらいである。

では、他の小説はどういうものかといえば、トリックやアリバイなどは解明されるものの、その解明に至る手法が「異常」なのである。

『こじつけ』『ひらめき』という推理で、そんな馬鹿な!という理屈がぴったりとあたる、のだ。

で、今回の哲学探偵もその類である。

事件が起こり、警視庁の特捜班に所属する高島警視と久保主任が捜査を行う。

そして事件の謎を解くために競馬場に行く。
一応の理由は被害者あるいは関係者が競馬好きということと、久保主任が競馬好きということである。
しかし、本当の理由は、競馬場でであう「哲学探偵」に謎を解いてもらうためである。

第1回目は偶然その哲学探偵に出会うのであるが、その後は完全に哲学探偵頼みである。

哲学探偵とは、名前も住まいも年齢も明かされない。

警視庁の二人の話を聞いて、短歌と哲学について述べ、そして推理する。
それだけで哲学探偵は謎を解いてしまうのである。

だから、この推理小説は、謎を解くまでの過程を楽しむのではなく、突拍子もないこじつけを楽しむものである。

物語は8つ

第1話 世界は水からできている    (タレス)  <中山金杯>
第2話 汝自身を知れ         (ソクラテス)<皐月賞>
第3話 われ思う、ゆえにわれ在り   (デカルト) <優駿牝馬:オークス>
第4話 人間は考える葦である     (パスカル) <ダービー>
第5話 純粋理性を求めて       (カント)  <菊花賞>
第6話 厭世主義(パシミズム)の暴走 (ショーペンハウアー) <天皇賞>
第7話 神は死んだ          (ニーチェ) <ジャパンカップ>
第8話 存在と時間の果てに      (ハイデッガー)<有馬記念>

哲学と競馬と、そして数多くの短歌。
この組み合わせで推理小説を作るのは、鯨統一郎だけであろう。
ホント感心する。

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