読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

やどかりの人生-君たちに明日はないPART3- 垣根涼介 小説新潮11月号

2009-12-05 19:30:59 | 読んだ
「君たちに明日はない」シリーズのPART3が小説新潮に掲載されている。

このシリーズは、今までもこの雑誌に掲載されていたのだが、迂闊にも・悔しいことに見逃していたのであった。

主人公は村上真介。
「日本ヒューマンリアクト株」に勤務している。

この会社は「リストラ」つまり社員の首切りを請け負っている。
従って、真介は委託を受けた会社に赴き、リストラに指名された社員にいわば「引導」を渡す仕事をしている。

恋人は芹沢陽子。
年上の恋人である。そして彼女も委託を受けて退職を奨めた一人である。

今回の物語は『旅行代理店』が舞台である。
その会社にいる古屋という営業は、九州大学を卒業し大手広告代理店に勤めるものの2年で退社、次には業界最大手の製紙会社に就職、しかしここも半年で退職。次に旅行代理店の日本ツーリストに入社。

その面接試験時に『一生勤める気はない」『給料の3倍の収益を出す』といい合格した。
そして、そのとおりの仕事をしている。

しかし、そのとおりの仕事というのは、3倍の収益を出す仕事であり、それ以上に収益を出そうとしない、つまり無駄な仕事はしない、のである。

あっさりと3倍の収益を確保するのだから、優秀、なのである。
しかし、優秀な人間に社会や世間が求めているのは、一生懸命なのである。

私も思う。
有能な人間に求められているのは、いつでもどこでも一生懸命に仕事をして成果を挙げること。但し、その成果を認めて給料を上げることはしない。
また、一生懸命仕事をしていても成果を上げられない人間には、給料を下げない、というやさしさがある。

有能な人間は長期的には評価されるが、そこまで待てない人間のうち出世に興味のないものはあっさりと脱落していく。
そのあたりが人事管理の難しさである。

というわけで、この古屋を真介がどのように退職に追い込むのか?

というところが見所である。

この物語はリストラという、いわば「暗い」ところを軸にしているので、厳しく・冷たく・やるせない。そして、リストラされる側の気持ちが身につまされる。

しかし、この物語の後味はいい。
すがすがしいというか、さっぱりする、というか、いわゆるハッピーエンドなのである。

12月号は「みんなの力」という物語である。

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