読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

明石橋の殺人-新・御宿かわせみ- 平岩弓枝 オール読物10月号

2008-10-24 20:59:19 | 読んだ
「新・御宿かわせみ」(明治編)の再開である。

この再開は華々しく大仰な物語ではない。

先日、テレビドラマ「相棒」が再会されたが、通常1時間ドラマが2時間になって更に翌週に続くという、すごい扱いになっている。
でも、私が見たかったのは日本全体を包むような事件ではなく、1話完結の人というものの不思議さを感じることができる物語なのである。
そういう意味では、あの相棒にはちょいと失望なのである。

ところが、この「明石橋の殺人」は新・御宿かわせみシリーズの原点或いは様式に従っているのである。
つまり、一話完結でありながら「かわせみ」を取り巻く人たちの成長劇であり人情話である。
この姿勢が良い。

さて物語は「かわせみ」に宿泊した男女と神林麻太郎や麻生花世の幼なじみの姉妹との偶然的な関わりであり、人の心に潜む気持ちの恐ろしさが描かれている。

人の心の奥底うごめくものは、今も昔もかわらなずそれぞれが備えていると思うのであるが、それを大人しくさせる力が徐々に薄れてきているのではないだろうか。

かわせみに登場するいわゆるレギュラーの人たちは「うごめくもの」があることは否定しないが、それを抑えることができるものが「人」だと思っている。
だから、それを抑えきれずに何事かを起こした人たちに対して、時には憎み時には同情するのである。

そしてそのことが本来の人間関係ではないかと思うのである。

更に、こういう物語を読むことができるということに幸せを感じるのである。
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