読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

小説十八史略(5) 陳舜臣 講談社文庫

2007-04-14 23:49:30 | 読んだ
第5巻は「唐」の建国から、玄宗皇帝と楊貴妃が帝国を傾け「安史の乱」を招くところまでである。

新たな帝国を建国する創設者たちの抜群のパワーとバランス感覚には感心する。
強弱、硬軟、考え方のバランスがとてもいいのである。

いわゆる英雄は、調整能力に長けているのだと思う。
ここでいう調整能力は、他と他、他と自分、ということのほかに、自分と自分を含む。そして自分自身の調整能力がもっとも大切なことなのである。

つまりは自分が我慢したり覚悟をすべきところはきっちり自分を抑え、無理をしても行かなければならないときには勇気を奮い決然として進む。それが英雄のようなのである。

しかし、そういう英雄たちも長い間権力を握っていると堕落してしまう。
堕落というか、大局的に見えず聞こえなくなるのではないか。

唐建国の立役者であり、2代皇帝太宗となった李世民も、中国史上最高の名君といわれているが、やっぱりその晩年はおかしくなる。
権力者のもっとも大切なことは、後継者の育成である。
太宗は、後継者問題をきっちりとせずに亡くなったのである。

その死後、唐は武則天という太宗の後継者・高宗の妻に簒奪される。
この武則天も中国史上、空前絶後の女帝である。
しかし、その死後またも争いがおこるのである。

そして武則天の三男・叡宗の子が名君といわれた玄宗である。
しかし、玄宗もその治世の前半は「開元の治」とよばれるほど栄えたが、その晩年は、あの有名な「楊貴妃」におぼれ、ついには安禄山そして史思明の「安史の乱」によって唐を傾けるのである。

なんだか「むなしい」気持ちになってしまう。
権力とはなんなのだろうか?
政治とはなんなのだろうか?

皇帝に仕える「臣」たちもさまざまである。
硬骨漢もいる、皇帝に阿るだけのものもいる、わが身の富貴だけを願い立ち回るやつ、大望を胸に秘めているものも・・・

皇帝を柱とする政治体制も、皇帝がしっかりしていて、臣たちが民をおもっていればいい治世となるのだが、一旦、権力の奪い合いとなるとブレーキがきかなくなる。

小説十八史略に描かれている歴史は、その繰り返しである。
だから、面白いのだ。

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