尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

不条理な「ブランディング事業」打ち切り

2019年05月09日 22時52分14秒 |  〃 (教育問題一般)
 「私立大学研究ブランディング事業」というものがある。それ自体の評価は別にして、とにかく2016年度に40大学、2017年度に60大学が指定を受けた。2018年度も20大学が選ばれて計120大学が指定を受けた研究をしている。ところがこの制度が途中で打ち切られることになった。最長5年の助成をうけるはずが、軒並み3年で終了となるという。
 (文科省ホームページにある事業の概要)
 きっかけは東京医科大による文科省官僚汚職事件である。東京医科大は2017年度に「先制医療による健康長寿社会の実現を目指した低侵襲医療の世界的拠点形成」という研究で指定を受けている。しかし、この選定に絡んで文科省の官僚に賄賂が渡されていたという事件が2018年7月に発覚した。そのため財務省の理解が得られず、事業の中途打ち切りになった。しかし助成金は数千万単位の高額にのぼるため、期限付きで採用した研究者の中には雇用継続が難しくなった人もいるという。

 僕はこの問題を4月9日付朝日新聞の記事で知った。その後5月9日の東京新聞でも記事が掲載されている。僕は非常におかしなことだと思って、もっと大きな問題になるかと思った。しかしどうも大きく報道されないので、ここで触れておきたいと思う。何がおかしいと言って、どこか一校で起こった問題で、なんで「連座制」のごとく全部助成が無くなるのか。当初5年ということで助成が決定しているのなら、予算は単年度で作られるわけではあるが、問題を起こした大学はともかく他大学の助成金を打ち切るのは「契約違反」というべきじゃないか。

 財務省は「ブランド形成より教育や研究の質的向上を」と言ってるらしい。しかし、この事業に代わる新事業計画はないようなので、私立大学への支援事業が初めて完全に打ち切られると言われている。財務省の言ってることはそれ自体は正しいと思う。文科省のホームページを見ると、そもそもの目的が「学長のリーダーシップの下、大学の特色ある研究を基軸として、全学的な独自色を取り組みを大きく打ち出す取組を行う私立大学の機能強化を促進する」と書かれている。文科省直々で、上意下達の大学作りをお金の力で作っていこうという政策と考えられる。

 しかし、僕が納得できないのは助成すると決めた決定を途中で勝手に打ち切っていいのかということだ。財務省は文科省だけを見ているのかもしれないが、実際のお金はその助成金で研究する研究者に回る。税金がどこに回って生きたお金になるかを財務省が考えていないのだ。この問題はそのことをはっきり示している。そして僕が一番思うのは、2018年に大きな不祥事を起こしたのは文科省だけじゃないだろということだ。むしろ大きな問題になったのは、森友文書書き換え問題財務次官セクハラ問題に揺れた財務省ではないか。文科省の事業を打ち切るというのなら、財務省は財務省にどんなペナルティを課したのか。もっと大きな財務省予算の削減があって然るべきじゃないか。
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