尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画『あした輝く』と浅田美代子トークショー、戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭

2024年08月12日 22時02分27秒 |  〃  (旧作日本映画)
 シネマヴェーラ渋谷の「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」、今日は1974年の『あした輝く』(山根成之監督)と主演の浅田美代子のトークショーに行ってきた。実は前日に原作者の漫画家里中満智子のトークもあったのだけど、やはり浅田美代子の方が聞きたい。まあ猛暑の中二日連続は体力的にきついし。浅田美代子も言ってたけど、戦争を描く映画はいっぱいあるのに何でこの映画が選ばれたんだろうという感じはした。でも半世紀前の普通の「アイドル映画」が戦争をどう描いていたかという意味で興味深い。

 この映画は初めて見たが、公開当時に映画は知っていた。里中満智子原作の漫画の映画化で、前年(1973年)テレビ『時間ですよ』でデビューした浅田美代子が主演したんだから話題作である。浅田美代子は劇中歌「赤い風船」も大ヒットして、大注目のタレントだった。監督の山根成之(やまね・しげゆき)は、当時『同棲時代』『愛と誠』など青春映画の話題作を連発していた。しかし、今回見てみると突っ込みどころいっぱいの「アイドル映画」で、何だこれは的な展開が続く。

 確かに「この映画を何でやるか」的な感じである。時は敗戦直後の「満州国」。関東軍は民間人を置いて撤退してしまい、引き揚げ時に多くの犠牲を出した。ソ連軍の攻撃に加え、現地中国人の襲撃も受け、後に「残留孤児」問題が起きる。しかし、映画では「満州国」の本質は追求しない。主人公今日子(浅田美代子)は奉天の夏樹医院の「お嬢様」で、加賀中尉(沖雅也)に言い寄られているが、衛生兵速水香(志垣太郎)を好きになる。運命的に結ばれ、速水は民間人保護のためとして今日子らの引き揚げに同行する。今日子の父は途中で死に、香は後を託される。その時、今日子は香の子を宿していた、っていつそうなったの?
(今日子と香)
 2022年に亡くなった志垣太郎はこんなにカッコよかったのか。恋敵の沖雅也は1983年に31歳で自殺した俳優である。その後、帰還船の中で今日子は流産するが、同行していた女学校の教員、緑川先生(田島令子)が出産後に亡くなり、その子を引き受ける。速水の実家(九十九里)に赴くと、助産師の母親(津島恵子)は子どもを香との子どもと思い込む。子どもは「今日子と香」から「今日香」にしようと香が言うが、今日じゃなくあしたが輝いて欲しいから「あすか」にしようと今日子が言った。これが題名になるが、その後ソ連軍に連行され生きているかも不明な香を今日子は義母とあすかと一緒に待ち続ける。
(里中満智子)
 その向日性が浅田美代子の持ち味と合っていて、都合のいい展開に納得してしまうわけである。「引き揚げ」もの、「シベリア」ものはかなりあるが、この映画は戦争映画という意味では特に書くこともない。ただ半世紀前のアイドル映画では、戦争が背景として成立していたのが興味深い。今では時間が経ちすぎて「歴史映画」になってしまう。半世紀前は「戦後29年」ということで、若い世代からしても「戦争は父母の時代の話」だった。一家の成り立ちを振り返れば、そこには当然戦争という歴史が出て来る。そういう時代性を背景にして、愛の物語が成り立っている。山根演出はまさに「少女漫画」の実写化という感じで撮っていて面白かった。
(浅田美代子=現在)
 浅田美代子さんは最近も良くテレビで見るが、いつまでも元気で活躍して欲しい。この映画のことは船酔いしたことが最大の思い出だという。乗馬のシーンがあるが、自分じゃないという話。それはそうだろうなと思って見ていた。テレビと映画の違い、樹木希林さんの話など興味深い。しかし、それ以上に犬の保護活動を通じて、猛暑が続く中で犬を外で飼ってはいけない、猛暑の昼間に散歩させてはいけない。自分は夜10時過ぎに毎日行ってるとのこと。諸外国ではペットショップ自体が無くなりつつある。ペットショップだと売れ残る犬が出て来るからという話に考えさせられた。共同通信の立花珠樹さんの司会。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする