尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

名張毒ぶどう酒事件の集会

2011年04月05日 23時34分41秒 |  〃 (冤罪・死刑)
 今日ももう一つ投稿。テーマごとに小さく区切って書く方が後々わかりやすいかな、と。

 で、映画を見たあと、文京区のシビックセンターで名張毒ぶどう酒事件の集会に行きました。
 交通費もかかるし、夜だと夕食代もかかる。集会参加費もあるのだけれど、冤罪関係の集会にはできるだけ顔を出したいと思っています。

 1961年に起きた名張毒ぶどう酒事件も、もう50年。犯人とされ、1審無罪、2審で逆転死刑判決、1972年に最高裁で確定してからも40年近くなります。奥西勝さんももう85歳
 2005年に名古屋高裁で第7次再審請求が認められたが、検察の異議申し立てが通り、最高裁で差し戻し、と高齢の奥西さんをもてあそぶ様な司法の横暴が続いています。事件内容の詳しいことは上記リンク先を見てください。

 昔、1970年代に「無実を叫ぶ死刑囚たち」という本がありました。その本に出ていた、免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件では、80年代に再審が認められ、奇跡的に「死刑台からの生還」を果たしました。一方、帝銀事件の平沢定通さん、牟礼事件の佐藤誠さん、波崎事件の富山常喜さんは、再審開始を迎えることなく獄中死しました。

 名張事件、袴田事件などは何としても再審開始が待ち遠しい。一刻も早い開始決定が待たれます。
 職業裁判官の理解しがたい棄却決定を見ると、再審請求の可否も裁判員制度で決めた方がいいんじゃないかと思います。

 5月24日に判決日が延びた布川事件の杉山さん、桜井さんも来ていました。
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ブンミおじさんの森

2011年04月05日 23時00分41秒 |  〃  (新作外国映画)
 年金の手続きとか、学校に残した仕事とかの後で、渋谷に出て「ブンミおじさんの森」を見る。

 去年のカンヌ映画祭パルムドール(黄金の椰子賞=最高賞)受賞作。
 初めてタイ映画の受賞である。アピチャッポン・ウィーラセータクン監督。僕は監督の名前がそらで言える数少ない日本人の一人である。彼の映画は初めてではない。しかし、今までに見た映画はよくわからなかった。

 これは傑作だった。今までに見たことのないような映像。
 イサーン(東北タイ)の森に生きる人々の、アニミズム的な世界観をあまりにも美しい映像で描いた。そこでは、死者が生者と共生し、動物の精霊が人間と相互に交流する。森の深い漆黒の中で、人は霊とともに生きているのである。
 
 ヨーロッパの映画なら、カール・ドライヤーの大傑作「奇跡」で人はよみがえり、フランソワ・オゾンの「まぼろし」では妻が死んだ夫を見る。しかし、どうもタイの、あるいはモンスーンアジアの多神教的な感覚は微妙に違う感じがした。どっちかというと、「平成狸合戦ぽんぽこ」とか「崖の上のポニョ」。(ただし、コメディ的要素は全くないが。)

 それより、「遠野物語」の世界だ。言葉ならいろいろ書けるが、生の舞台では演じにくい。(井上ひさしの「頭痛肩こり樋口一葉」の新橋耐子の演技は近いかも。)そういう部分を、この映画は最新の映像技術を駆使して、不思議な世界を作り上げている。

 いや、テンポは超スローなので、タルコフスキー映画のように自然に睡魔に襲われるであろうが、それも含めて、紛れもなく新しい映像体験である。
 
 いわゆる映画ファンというより、民族学、宗教学、神話学、あるいは東南アジア文化論などに関心がある人が見る映画かもしれない。それでも、まさに今見るべき映画だと思った。
コメント (1)
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