一昨日の話
懇意にしている悉皆屋さんが洗い張りの出来上がった着物を持ってきていつもは「ちわー」「じゃー」と言ってすぐ引き上げるのにその日に限って腰を落ち着ける
差し出したお茶をすすりながら
「嫌になっちゃうよここに来たらいい話聞けると思ってるんだ」身近な同業者が次々に辞めてさらに周りの職人たちももう来年はやめると宣言していると嘆く
着物にとっていちばん大事な洗い張り
着物のことを一番理解している悉皆屋
着る人の職業や日常の生活を着物を通して着物と人を一番見ている人
シミの付き方でその人の癖がわかり職業も理解る
面倒だといって最近は着物をドライで洗っている人も多いが
手仕事でできた着物はやはり目を凝らし心をこめた職人の腕で綺麗にしたい
色が焼ければ周囲の染職人と相談して色のせをしてくれる
地色が派手だと思えば柄を全て糊伏せして地色を変えてくれる
刺繍の糸が切れれば刺しゅう職人のところで修理復活
悉皆屋さんを中心に職人集団が団結して一枚の着物を生き返らせてくれる
そういう仲間が新宿にいてチャコちゃん先生時々顔を出して話し込む
しかしながらその仲間たちが一人欠け二人欠け
「この柄派手になったので潰してもらえる?」
「もうできねーよやめちまったんだ」
「そんなーー」
「着物繕って着る人もういねーよ」
「ここにいるじゃあないの困るわ」
「ひどいよみんな着物丸めてクリーニングだよ」
そして今日はいつもお願いしている帯の仕立て屋さん
「着物の値段が安くなりすぎたね、1000円なんかで職人の作った着物や帯を売るってどんな考えしてるんだろう」
「頑張って続けてね」
「だけど帯の仕立て代がネットで買う着物の何倍もすれば買う人いなくなるね」
暗澹たる気持ちの今日ーー
#着物 #帯の仕立て #悉皆屋 #洗い張り #色抜き #修理 #チャコちゃん先生 #秋櫻舎 #中谷比佐子 #個人着付け #出張着付け #着物の洗濯