チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 164

2019年06月03日 10時03分10秒 | 日記
今日は新月新しい足袋を下ろす
夏物の用意も始まる
今月6日は芒種稲、稲などの葉が伸ばし夏野菜が元気になる
特にトマトスルメイカが美味しい「そうだ!」ホタルが飛び交い始める

新潟地震の起きる5年前「平家蛍」が群生する場所に案内された
清らかな水が流れているところで大きな樹にホタルの軍団が飛び交っていた
源氏ホタルのように横にゆらゆら飛ぶのではなく
木の上から飛び込んでくる感じで勢いが良い
案内してくださった方は十日町の染色家滝沢晃さん
「この様子着物に描いてください」
「エッこの様子を?」
「はい!」
「いやーいつも無理難題なんだから」と言いながらも顔は笑っている
「やったー」

そしてせっかくだから良い糸にしたくて蚕を「長久」という在来種に決めS氏に養蚕 整糸、織まで依頼さらに「絽にしてくださいね」
「絽?織ったことないですよ」
「大丈夫できます手織りの絽は貴重です」(自分がやれないのにこの人は絶対できるという自信だけはある)

春蚕にしてください
桑も改良をされていないのに
セリシンはつけたまま
私からのお願いはそれだけです(何がそれだけ?最も難しいことぉいってる)

一年後立派な絽が織り上がりS氏も自信満々(その後手織りの紗とかいろいろ挑戦している)

早速滝沢氏に持っていって渡す
「へーセリシン付きですか」
「はいよろしく」
その時もう素晴らしい構図を見せていただく
「きゃーすごいですね、うわ~楽しみ、さすがですね!大胆で品がある」
小躍りして喜ぶチャコちゃん先生

更に半年かかってできました
「セリシンがついてて染めにくかったですか?」
「いやー却って染料の染み込みがよく色に奥行きが出ましたよ手描樹には楽な生地でしたよ、ありがとうこんないい生地に染色できていい味出せましたよ」
「ほんといい味出ていますよね」
「着たところ見せてくださいよ」
「もちろん!」

仕立て上がったらすぐに滝沢さんのところに見せに行き喜んでいただき、そしてまたS氏にも見せに行く、お二人に満足していただきその喜びが伝わって私自身も大満足

そうしたらあの新潟中越地震があり
モデルになっていた小川と大きな木ヘイケボタルの里は全滅
もう二度と見ることはできなくなった
跡地を滝沢さんと訪れて二人で呆然と佇んだもちろんお悔やみにホタルの着物を着ていった

その次の日三田佳子さんから電話があり「相棒に出ることになり着物のチョイスをお願い」
直ちに送られてきた台本を読むとすべて夏の話ししかも最後は自殺のシーン
「これだ!ここにホタルを登場させよう!」
撮影にも立会いホタルの着物が美しい三田佳子さに羽織られて更に着物の存在感が増していた

自然界では見られなくなったが
着物の中でヘイケボタルは今も生きている

#平家ホタル #三田佳子さん #滝沢晃さん #中谷比佐子 #絽の着物 #セリシン付き

コメント (2)
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