チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

東北のとある呉服屋さんから

2011年04月26日 14時16分20秒 | 日記
少しずつ落ち着いたのでという連絡を受け
この方は店は高台だから助かったが
家は綺麗さっぱり波に持っていかれたのだ

早速四谷の坂本屋のカステラを送った
昔懐かしい粗目がいっぱいのカステラ
我が秋櫻舎では何かといえばこのカステラをお人に送る
お母さんの温かい味がするのだ

その昔と言っても昭和だが
あの有名なフイクサー児玉誉士夫さんが
このカステラを気に入り更にゴチャゴチャと意見を言って
練り上げたものだという
あの顔にこのカステラ
ミスマッチが非常に面白い

というわけでカステラを送った
お礼の電話があり
「お仕事は続けられていますか?」
「ええもう大変忙しいです」
泥にまみれた、水に浸かった着物や帯を持っていらして
「元通り着られるようにしてください」
まだ体育館などに収容されている方たちが
それぞれ家を片付けていて
「きものだけは捨てられないんです」
とおっしゃってもってくるのだそうだ

また桐の箪笥が2キロも流されていたけど
その中のきものは一切無傷
「改めて昔の人の知恵に頭が下がります」

桐は湿気があると膨張し
乾燥すると木が細くなる
そのため絹を保管するには最高の素材だ

新潟の大火事のときも
学校の下級生のお母様が桐箪笥に水をかけて
中の衣類を守ったと泊りに行ったときお話ししてくれた

東北は岩谷箪笥や仙台箪笥など桐の上に更に塗りや金具をつけて
頑丈に作っている箪笥が多い
「昔から津波が来ていたので箪笥だけは上等を」
という土地柄でもあるのだという

それにしても
泥まみれになっても
きものだけはもとどうりにしたいという気持ち
聞いたときは嬉しかったが
時間がたつと切ない

東京などの都会では
そのきものを箪笥一棹桐だと5000円その他は500円
という値段で売っている人がわんさと居るのだ
親からの桐箪笥を汚いからとバンバン壊して捨てる人もいる

桐箪笥は50年に1回削ると新品同様になる
3回は削ることが出来るというから150年以上は使える
昔は女の子が生まれたら桐の木を植えたものだと長老に聞いたことがある

さすが東北の人は日本人の魂を持ち続けている
こういう人にこそ穏やかで平和な日々が早くやってきて欲しい
東北の人に着てもらうきものも幸せ

ヤハリ東北から変化が始まっている
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする