「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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中央区における「子どもアドボカシー」の今後の展開について、現時点で考える方向性

2023-02-26 09:38:10 | こども達へのメッセージ

 子どもアドボカシーセンター北九州主催の子どもアドボカシー実践講座を受講し、感じたことを、中央区における子どもアドボカシーの今後の展開についてを視野に入れながら、書きます。

 今回の講座は、日本子ども虐待防止学会第28回学術集会ふくおか大会のシンポジウムで、偶然知ることができ、このような貴重な勉強の機会を得られたことに感謝申し上げます。

第1、私自身の今後の取組の方向性

 アドボカシーという言葉を10年以上前に知り、町医者開業医の小児科医として自分なりに子どもの声の代弁者の一人たらんと、努力をしてきたつもりであった。

 本講座により、自身がやってきたアドボカシーは、「専門アドボカシー」であり、「個別アドボカシー」としては、子どもの気持ち・考えを理解しながらも、小児科医師としての専門的な知識を入れて子どもの最善の利益に向けた解釈及び対応をしてきた。また、個々のケースを参考に、「システムアドボカシー」として、子育て支援施策、教育施策への制度や行政の対応のありかたの改善に向けた取組をしてきたことを再認識した。

 大きな発見であったのは、「市民アドボカシー」の重要性である。
 あくまでも、子どものマイクとなる活動であり、マイクが勝手にしゃべりだすことはない。私の「専門アドボカシー」は、マイクが勝手にしゃべるしくみも入っており、子どもの最善の利益のためにしゃべりだすことは必要であるものの異質の存在であった。

 本講座を受けて、今後の活動の方向性として、多くの課題があるが、その課題解決に向け取り組み方も具体的に見えてきたような気がする。

 まずは、①日々の診療において、子どもの気持ち・意見をさらに丁寧に聞いて行こうと思う。今までは、主として親御さんの問診で、病態把握をし、治療の方向性を決してきたが、小さな点においても子どもの気持ち・意見も聞く機会をきちんと確保しながら、意見表明の場を作っていきたいと考える(当然、いままでも問診で子ども自身の聞く機会はあったのであるが、意見表明の場と言う意識を持ちながら子ども達への問診していきたい)。この意見表明の場が、ご家庭や学校、地域での意見表明をしてもいいのだという気持ちへとつながっていけばよいと考える次第である。

 次に、私も診察室を出れば、一市民であり、②「市民アドボカシー」としての知識・技術の習得をしながら、一時保護所や児童養護施設など社会的養護の場、障害者グループホームや入所施設などにおいて、子ども達のアドボケイトになっていければと考える。
 そのアドボケイトになるための大事な点については、第9講で当事者であった講師川瀬信一氏(子どもの声からはじめよう)からご講義を拝聴し、大変参考になりました。たいへん感謝申し上げる次第であり、自身が学んだ大切な点は第3で述べます。
 また、③「市民アドボカシー」の認知の拡大や、④「市民アドボカシー」の大事な活躍の場としてのFGC(ファミリーグループカンファレンス)が普通に日本の社会で装備されるようにしていかねばならないと考える(第2詳述)。FGCの広がりに向け、知恵を絞りたい。

 三つ目に、「システムアドボカシー」の実践である。
 ⑤子ども達の声を集約し、まちづくり、環境、防災などに具体的に活かせるようにしていきたい。そのための子どもの意見の表明できる場、例えば、「子ども議会」やを実際に、設けていきたい。
 また、⑥子ども達への、包括的な健康教育(包括的性教育、感染症予防、生活習慣病予防、ストレス対処、ソーシャルインクルージョンなど含めた健康教育)の一環として、自分たちの意見を述べていいんんだということを、その都度伝えて行きたいと考える。⑦小児科医らも、日本外来小児科学会などアドボカシーに関心の高い医師が集う学術集会もあり、小児科医の間でもアドボケイトの広がりについて議論していきたい。

 以上、①ないし⑦について、今後、取り組んで参りたいと考えるところです。

第2,FGCの日本での広がりについて

 子どもぬきで、こどものことをきめない。子どもが意思決定の場に参画をすることをどのように実現をしていくか。そのための仕組みとして、FGCがある。
 日本にも、要保護児童対策協議会があり、その下部の仕組みとして、各ケース会議がある。守秘義務を守られる機関が、例えば、かかりつけの医師、学校の担任・養護・管理職、子ども家庭支援センター、児童相談所らが集まる。
 その会議では、どのような方向性を築いていくかを共通認識を持ち、役割分担を行う。
 しかし、具体的な環境整備は、その子どもに関わる人なしにはできないのであって、各ケース会議だけでは足りず、各ケース会議での方向性の実現のためには、FGCが欠かせいないこととなる。高知からの参加者が、「保護者や子どもが参加しての会議は高知でもあるが、FCGのように真に子どもを中心として、子どもが言いたいことを言えて、子どもの人権を考えたものになっているかというとどうかは課題である。参加者がみんな子どもを中心とした気持ち、共通認識なのかということにも差がある」という趣旨のコメントをされていた。実施にとりくんでいる地域があることに勇気づけられるとともに、FGCの広がりに期待したいところである。
 FGCの制度化、特に、関係するひとを集めるコーディネーターの存在が、アドボケイトとともに重要であると認識をした。
 民生児童委員や、社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターらが、FGC開催に向けたコーディネーターとして機能すれば、中央区でもFGCの実施は可能であると考える。

*FGC(Family Group Conference)の概要は、ネットで見れます。

 ➨ https://www.youtube.com/watch?v=P8Zc8QiJV7Y


第3,アドボケイトが子どもの声を聞く際の注意点について

 自分の価値観が、子どもの声を聞くとしても、その結論を誘導してしまうことがある。自身の価値観が、子どもの声を素直にきくことの邪魔をしてしまう。よって、子どもの声を聞く前の準備として、まずは、過去の経験を見直し、自分の価値観を見直すことが大切である。

 子どもの意見を聞くことの重要性は、自分の意見が聞かれないまま進んでいくと、自分の意に反して施設や里親家庭での生活を強いられたということとなり、もし、何か、施設や里親家庭で問題が生じても、自分が選んだことではないのだからとそのあとの本人の受け入れは苦労が伴う、一方、本人が選んでいるなら、自分が選んだことだからと、その後の対応も納得しながら進むことがより容易く進むであろう。また、相談したけれど何も変わらなかったということが積み重なると、「助けて」が言えないくなり、自分の人生なのに自分で決められないという無力化を生じることへとつながってしまうリスクが高い。

 子どもは、どうして、意見を述べられないのか。知る権利の保障、情報提供が子どもになされていない。言ったことの守秘がなされるかの不安、言っても何も変わらなかった過去の経験、遠慮などから子どもが意見を言わなくなる。

 どのような状況で、子どもの意見が述べられるか。
 子どもアドボカシーの「6原則」を大切にしなければならない。エンパワメント(子どものアドボカシーの原則1)、すなわち、抑圧を取り除いていくことで、子どもは意見を述べることができる。また、子ども主導(原則2)で意見を述べるのであって、その子ども自身の意見の表明を待つ。聞く人は、独立性をもち(原則3)、守秘を守り(原則4)、機会の平等をもち(原則5)、聞かれる側の障がい、年齢に応じて配慮をし、そして、子ども自身に参加(原則6)してもらうことを促していく。FGC開催は、個別アドボケイトでは欠かせないであろう。

 最後に、アドボケイトの姿勢として、聞いて子どもの言いたいことを理解したというところで終わらず、どこかで、聞いても分かれないことがあるかもしれないということを残しておくことが、傾聴のポイントである。

 以上、たいへん有意義な講座でした。

 今後とも、できれば、貴団体とも連携を取りながら、また、関東近辺の同趣旨の団体ともつながりを見つけ、勉強を続けていければ幸いです。

 ありがとうございました。

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