波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

    音楽スタジオウーソーズ    第11回

2014-08-18 09:50:15 | Weblog

本社進出計画の第一号店は成功したと言える。外処は本社へ呼ばれて報告をした。そしてその成果を確認できたのである。二年足らずのうちにこれだけの実績が上がるとは予測できていなかったが、役員は「5年ほどしっかり足固めをしてほしい。その間に後任を決めて君を役員として迎えたいと思っている。」と言われた。外様ではないが役員として迎えられると言う言葉は彼にとっては重い言葉であった。サラリーマンとはいえ単なる管理職で終わるか、役員になるかでは大きく変わる。公にはならないが学閥もあれば人間関係もある。学卒ではない彼にとってはそれが気がかりだった。
仕事が順調になり、大宮の自宅にも毎週帰宅できるようになり、休みもゆっくり取れるようになった。元々音楽好きであり、機械いじりの好きな彼にとっては格好な時間である。余暇を利用して秋葉原へ出かける。ここで好きな部品を買い集め自分で組み立てて考えているものを作るのである。彼はそのころにはまだ普及して痛かったカラオケのようなものを考えていた。オリジナルでそんなものがあれば一人で楽しめると言うのが動機であり、発想だった。時間はかかったが、何となくそれらしいものが出来た。するとそれを試してみたいと言う思いと見てもらいたいという気持ちが出てきた。むすこでも良かったのだが、不思議なものでそれには抵抗があった。駅前をぶらぶらしていると、そのころにはまだ珍しいカラオケ喫茶のような店が見つかった。一人入るには少しためらいと抵抗があったが、好奇心が強かった。中は小部屋に分かれていて案内される。
しかし、これだけでは何となく物足りなかった。店を出て少し歩いていると「音楽スタジオ」と書いた看板が目に付いた。そこはがらんとした店にテーブルが置かれていて奥にステージがある。その横にはピアノがおいてあり、飲み物をもらって休んでいるとピアニストが来て弾き始めた。夜はプログラムに従ってその日その日のゲストが個々に演奏を聞かせてくれるらしい。
その他にも「曜日指定」でみんなで歌うコーラスタイムもあると聞いた。外処はそれを聞いてここなら一人出来ても楽しめるし、仕事を忘れて癒されるなとほくそ笑んでいた。
そしてある日、曜日指定のコーラスの日にその店をのぞくことにした。

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