波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「ウラジオストックの空に夢を」③

2020-06-06 21:10:32 | Weblog
今では釜山は韓国の有数な港として知られた観光都市だが明治時代に日本が統治していた時期があったらしい。私も30年ほど前に音連れたことがあるが、
如何にも港町という雰囲気を漂わせていたところで会った記憶がある。義男はまだ小学校を終えたばかりで初めて岡山の田舎から出て、いきなり外国の土地へ一人で行くことになった。心細く寂しい思いであり、頼る人もない。ただひげを生やした怖い叔父さんがいるだけで、言われたことをするだけで甘えることもできない状況であった・ただ母からの手紙を読んだのであろうか、学校への手続きはしてくれてあった。義男はそこで日本人学校の商業学校へ入学し、勉強をすることが出来た。それは彼にとってどれほどうれしかったことか、そしてそこで学んだことが、そのあとの彼の生涯を左右する大きな力になったことを彼はその時知る由もなかったのである。ただ無我夢中で毎日の学びをうれしく真剣に取り組んでいたのである。
そんなある日学校へ通う途中で聞いたことのない音楽が耳に入ってきた。全く聞いたことのない歌声とオルガンの音は彼の耳に心地よく入ってきた。はじめてゃ何事もなく通り過ぎていたが、毎日その音を聞いているうちに何となく気になり、学校の帰りに立ち寄ったのである。すると音楽もさることながら、聞いたことのない言葉も聞こえる。日本語ではない。外国語だった。「ああ、、ここは釜山だから言葉が違うのか」と思いつつよく聞いているとこの国の言葉でもない。
ぼんやりと戸口に寄りかかって聞いていると、一人の見たことない服を着た人が声をかけてきた。「良かったら、中へお入りください。」その言葉につられて
義男は何となく初めてその街道へ足を踏み入れていた。そこはキリスト教の教会であった。義男には新しいこと、初めてのこと、それは一番心を惹かれるものであった。そして彼の人生を決めるきっかけともなるのである。

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