く~にゃん雑記帳

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<近大農学部> 里山学講座「土の中の生き物たち」

2015年09月28日 | メモ

【ミミズのはたらき、シロアリの役割】

 近畿大学農学部(奈良市)で27日、「土の中の生き物たち」をテーマに里山学公開講座が開かれた。京都大学名誉教授の渡辺弘之さん(写真㊧)が「土づくりへのミミズのはたらき」をテーマに講演、続いて近畿大学農学部環境管理学科講師の阿部進さん(㊨)が「熱帯生態系におけるシロアリの役割―土壌生成論からの解釈」と題して講演した。

 

 『種の起源』で進化論を唱えたチャールズ・ダーウィン(1809~82)はミミズの研究にも生涯をかけ、最晩年の最後の著作もミミズに関するものだった。その中でダーウィンはミミズが土の耕転・改良に大きな役割を果たしていることを実証した。その著作を日本語訳し『ミミズと土』として出版したのがこの日の講演者の渡辺さん。世界各地のミミズの研究に長年取り組んできた〝ミミズ学〟の第一人者だ。

 ダーウィンは1842年、牧草地に白亜の破片を撒き、29年後に掘ってみた。すると白亜は深さ18cmの所に埋まっていた。ミミズが糞塊を少しずつ積み上げた結果だった。渡辺さんも若い頃、京都の草地でクソミミズによる土壌耕転量を調べるため、ピンセットで糞を回収し続けたという。その結果、1年間の糞塊生成量は1㎡当たり3.8kgに達した。これは土壌3.1ℓに、厚さでは3.1mmに相当する。しかも糞塊が乾燥や雨で崩れて回収できなかったものあり、地中のトンネル内にも大量にあることから「実際にはこの5~10倍の土を動かしているのではないか」とみる。

 渡辺さんはタイ東北部でも巨大な糞塔をつくるミミズを2カ所で調査した。ここでは1年間に出された糞塊が1㎡当たり13.3kgと22.5kgだった。これも表土8.8~11.5ℓに相当し、厚さ0.9~1.5cmの新しい土の層をつくったことになる。「人類が出現するはるか以前から土地はミミズによってきちんと耕され、現在でも耕され続けている。食物や作物が育っている土は何度もミミズの消化管を通ってきた」というのはダーウィンの記述だが、渡辺さんも改めて土を耕すミミズの働きを立証してみせた。

 日本には不可能なこととして「蚯蚓(ミミズ)の木登り」「蚯蚓が土を食い尽くす」という諺があるそうだ。「蚯蚓の案じ事」は大地の土を食べ尽くした後、何を食べようかと心配することで、無用なことを意味する。「しかし」と渡辺さん。「ミミズは土を食べ尽くしている。問題なのはそのミミズが少なくなっていること」。

 阿部さんは〝土壌生態系改変者〟としてミミズ、シロアリ、ヤスデを挙げ、事例研究としてアフリカ・ナイジェリアのサバンナでのシロアリ塚について紹介した。塚は高さが2~3mあり、粘土とシルト(砂より小さく粘土より粗い沈泥)でできているという。シロアリは粘土を下層から持ち上げることで土壌を循環させており、サバンナの生態系にも大きな影響を与えていると指摘した。シロアリの活動によって直径5~10mほどの窪地も無数にできているという。2年草に囲まれており、雨季になると円の中に水が貯えられる。その窪地は「フェアリー・サークル(妖精の円)」と呼ばれているそうだ。

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