く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「なぜ、日本人は横綱になれないのか」

2015年09月27日 | BOOK

【舞の海秀平著、ワック発行「WAC BUNKO」】 

 日馬富士に続き白鵬の序盤休場で、悲願の日本出身力士の優勝が期待された大相撲9月場所。だが、終わってみれば賜杯を手にしたのは1人横綱の鶴竜。大関照ノ富士は右膝靱帯損傷にもかかわらず本割で鶴竜を下し決定戦まで持ち込んだのはさすが。次期横綱候補の最右翼が照ノ富士であることは間違いない。〝モンゴル4人横綱時代〟の到来がいよいよ現実味を帯びてきた。

       

 「なぜ、日本人は横綱になれないのか」。日本人なら相撲ファンならずとも忸怩たる思いを抱いていることだろう。日本人横綱の誕生は1998年の3代目若乃花が最後。2003年に弟の貴乃花(現貴乃花親方)が引退してからは日本人横綱不在が10年以上も続く。日本出身力士の優勝は2006年初場所の大関栃東(現玉ノ井親方)が最後で、以来9年余にわたって優勝なし。これじゃ〝国技〟の名も廃るというものだろう。

 著者舞の海は現役時代〝平成の牛若丸〟の異名を執り、今はNHK解説者やテレビCM、タレントなどとして活躍中。日本人横綱が出ない背景について「相撲界だけの問題ではなく、日本人全体の問題もあるのではないか」とし指摘する。まず教育や躾の問題。小見出しを拾うと「権利だけを主張する最近の親が教育を悪くしている」「子どもには勝ち負けや順位が励みになる」「『ハングリー精神って何ですか?』」「言葉で傷つく、ひ弱な若者が多くなっている」……。

 加えて収入の問題。プロ野球は1億円以上のプレーヤーが70人近くいるのに大相撲は白鵬1人だけ。夢=金という風潮が強い中で、「日本人の若者が力士になりたいという夢は持ちにくい」。一方、同じ収入でもモンゴル人にとっては生活レベルから10倍の価値がある。ハングリー精神があり、モンゴル相撲の伝統から大相撲にも馴染みやすい。最後に「日本相撲協会は短期的な相撲人気に左右されずに、大相撲のこれからを見据えて、長い目で相撲文化の継承・普及に取り組んでもらいたい」と注文する。

 舞の海のテレビ解説は歯切れがよくなかなか好評のようだ。ただ今年7月場所では「白鵬の力は落ちている」とずばり発言し、これに対し白鵬が優勝後のインタビューで「もう少し温かい言葉を頂ければうれしい」と話す場面も。その伏線と思われるエピソードが本書(5月発行)の中にあった。

 舞の海が引退後、春日野部屋に稽古を見て行ったときのこと。宮城野親方(白鵬の師匠)が来ていて「白鵬が稽古に来る」というので待っていたが、一向に姿を現さない。そのうち白鵬の付け人がやって来て親方に「今日はこちらには来ませんよ」と。舞の海はその1件について「自分の部屋の力士の行動も知らないのです。そんなことでは親方は笑いものになってしまいますが、師匠の指導が問題なのです」と手厳しい。

 さらに白鵬の取り口についても「品格のない面もある」と指弾する。「(肘を相手の顔にぶつけるような)威嚇行為をすること自体、余裕がなくなっていることを示し……」「横綱にもかかわらずしばしば張り手をします。白鵬が尊敬する大鵬は、横綱になってから張り手はしたことがないと思います」。白鵬は本書でのこうした親方批判や取り口批判にもカチンと来ていたのではないだろうか。

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