く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「天皇家と生物学」

2015年09月20日 | BOOK

【毛利秀雄著、朝日新聞出版発行】

 生物学に携わる世界の優れた研究者に与えられる賞に「国際生物学賞」がある。30年前の1985年(昭和60年)、昭和天皇の在位60年と長年にわたる生物学の研究を記念するとともに生物学の奨励を図る目的で創設された。内外のメンバーで構成する審査委員会で選ばれた受賞者(毎年1人)には今上天皇・美智子皇后ご臨席の中でメダルと賞金1000万円が与えられる。

            

 本書は昭和天皇、今上天皇、秋篠宮さまを中心に天皇家の方々と生物学の関わりに焦点を当て、その背景や研究内容、内外での評価などについて詳しく紹介する。著者毛利氏(1930年生まれ)は元日本動物学会会長、理学博士。東京大学教養学部学部長の後、放送大学副学長や国立基礎生物学研究所長、岡崎国立共同研究機構長を務めた。著書に『日本の動物学の歴史』(共編著)、『生物学の夢を追い求めて』など。

 序章「君主と学問」に続いて第1章「初代 昭和天皇」、第2章「第二代 今上(明仁)天皇と常陸宮」、第3章「第三代 秋篠宮と黒田清子さん」、第4章「国際生物学賞について」で構成。昭和天皇の主な研究テーマは海産無脊椎生物ヒドロゾア類と変形菌だった。この2分野で多くの新種を発見しており、「国際生物学賞」で授与されるメダルも新発見のキセルカゴメウミヒドラの群体が図案化されている。カニやウミウシ、ヒトデなどでも多くの新種を発見している。ハタグモガニ、ヒノマルクラゲ、コトクラゲ、エノコロフサカツギ……。

 昭和天皇が「雑草という名の植物はないよ」とお側の者をたしなめられたという逸話は有名。皇居の吹上御苑では草刈りなどを中止させ、自然に近い野草園とした。植物に関する最後の著書『皇居の植物』には1470種もの植物について記されている。和歌山・田辺湾の神島で1929年、博物学者で変形菌研究者の南方熊楠からキャラメルの箱に入った標本の献上があった。「筆者のような戦中派にとっては当時の感覚として、きわめて不忠・不敬なことであったと映る」とは筆者の感想。その箱は今でも昭和記念公園の昭和天皇記念館で見ることができるそうだ。

 今上天皇の主要研究分野はハゼの分類学。クロオビハゼ、コンジキハゼなど日本産の6新種を発見し、日本での新記録種や新たに和名を付けたものも20種近い。新たな和名のうちアケボノハゼとギンガハゼは美智子さまが、シマオリハゼは紀宮さま(黒田清子さん)が名付けられたそうだ。ハゼの研究は海外でも高く評価され、リンネ協会の外国会員に選ばれている。生物学分野の研究は秋篠宮さまにも引き継がれ、主にナマズやニワトリに関する論文を発表されている。悠仁さまも昆虫など生き物への関心が高いという。いずれ生物の研究に携わることになるのだろうか。

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