【けがから復帰のライバル・サラは五輪が〝ぶっつけ本番〟】
ノルディックスキー・女子ジャンプの日本のエース、17歳の高梨沙羅はオーストリアのヒンツェンバッハで1~2日行われたワールドカップ第12戦、第13戦に連勝、今季の通算成績を13戦10勝に伸ばした。高梨はこの圧倒的な戦績を引っ下げ、女子ジャンプの五輪初代女王を目指してソチに乗り込む。注目の一戦は日本時間12日未明に行われる。(写真は高梨が逆転で今季W杯10勝目を上げた第13戦の表彰台)
2013/14シーズンW杯第13戦までの戦績
獲得ポイント 1位 2位 3位
①高梨沙羅(クラレ) 1220 10 2 1
②カリーナ・フォクト(ドイツ) 761 0 4 4
③ダニエラ・イラシュコ(オーストリア) 682 2 4 0
④イリーナ・アバクモア(ロシア) 561 1 1 4
⑤伊藤有希(土屋ホーム) 439 0 1 0
⑥マーヤ・ブティッチ(スロベニア) 376 0 0 1
⑦コリーヌ・マテル(フランス) 343 0 1 0
(順位は1~3位の回数、ポイントは1位100、2位80…の合計)
高梨は今季W杯を開幕4連勝でスタート。第5戦は3位に終わったものの、札幌、蔵王での日本4連戦を全勝した。ただ、その後のスロベニアでの2連戦では踏み切りのタイミングに微妙な狂いが生じて飛距離が伸びずダニエラ・イラシュコ(オーストリア)に負けて連続2位。五輪前最後の試合となったヒンツェンバッハでの2戦も、そのイラシュコに1本目で先行されたが、高梨がいずれも2本目で逆転した。
高梨は1月26日から2日までイタリアでの世界ジュニア選手権を挟んで9日間に6戦という強行日程をこなした。世界ジュニアでは個人戦で2本とも最長不倒を記録しジュニア史上初の3連覇を達成。さらに同選手権の女子団体でもHS(ヒルサイズ)に近い大ジャンプで日本チームの2大会ぶり2回目の優勝に大きく貢献した。そして今回のW杯連勝。
高梨は助走路が緩やかなソチ型ジャンプ台への対応が課題といわれてきた。今季W杯で優勝を逃した3戦はいずれもソチ型。だがW杯でも蔵王を含めソチ型でも優勝を重ねており、昨秋にはソチでも個人練習を積んできた。高梨の持ち味は抵抗が少ない助走姿勢と鋭い踏み切り、そして素早い空中姿勢への移行。課題とされてきた着地のテレマークも決まるようになってきた。高梨に死角はない。
五輪でのライバルは直近のW杯4戦で1位、1位、2位、2位と調子を上げている30歳のベテラン、イラシュコと、2011/12シーズンの初代W杯女王サラ・ヘンドリクソン(米国)だろう。サラは高梨より2つ年上の19歳。昨年8月、練習中の転倒で左膝の靱帯を損傷し、手術してリハビリを続けていた。この1月中旬にようやく練習を再開したばかり。その後のW杯参戦も回避しており、五輪がぶっつけ本番の復帰戦となる。回復具合は未知数だが、2012年にも左膝を痛めながら5カ月後の世界選手権で高梨を抑え優勝しているだけに決して侮れない。
日本選手の中では19歳の伊藤有希にも期待がかかる。伊藤は男子ジャンプで最年長メダルの期待がかかる41歳の葛西紀明と同じ土屋ホームに所属。W杯での表彰台は蔵王で2位になった1回だけだが、それ以降7位、5位、4位、5位、6位と安定した成績を残している。ランキングも全選手中5位まで上げてきた。五輪での表彰台も決して夢ではない。一番高い所に高梨が、2番目には高梨が尊敬し互いにライバルとして競い合ってきたサラが、そして3番目には伊藤が――。こんな表彰式を見たいものだ。