【東日本大震災復興支援歌「まけないタオル」など7曲披露】
奈良県高取町にある浄土真宗本願寺派「教恩寺」の第6世住職で、シンガー・ソングライターのやなせななさん(38)の「コンサート&トーク~心から心へと伝えられるあいのうた」が31日、生駒市コミュニティセンター内の文化ホールで開かれた。生駒市人権教育推進協議会の主催。会場を埋め尽くした300人近い観客は透明感あふれた歌声や、ご自身の病気や東日本大震災のボランティア活動などを踏まえた優しい語り口の〝お説教〟に聞き入った。
やなせさんが歌手デビューしたのは約10年前の2004年。だがCDは全く売れなかった。厳しい現実に直面していたとき、追い討ちをかけるように子宮体がんを発症、子宮と卵巣の摘出手術を受けた。術後の経過は良好だったが、今度は所属していた音楽事務所が倒産。「体の痛みは我慢できるが、心の痛みはなかなか踏ん張るのが難しい」。
そんなやなせさんの前に「2人の仏様が現れた」。1人は「何さぼってんねん。(がんは)言い訳にはならない」と叱咤してくれたピアニストの男性。もう1人は初めてのお寺でのトーク&ライブの終了後「私も同じ病気だから(悲しみ・痛みが)分かる。あなたは1人ではないよ」と背中を優しくさすってくれた中年の女性。「私はがんに甘えていた。誰でもみんな苦しいこと、つらいことがある。その痛みは誰も代わってやれない。だからこそ支え合うことが大切だと気づかされた」。
そんなトークを交えながら、やなせさんは自作曲を中心に7曲披露した。「はじまりの日~あいのうた」に続いて「夕焼け小焼け」、「人魚」、「おやすみ」、そして東北支援活動中に知り合った宮城県山元町にある徳本寺の住職早坂文明さんが作詞し、やなせさんが作曲した「ひとつの心」と「まけないタオル」。最後は自作の「Magical Drops(マジカル・ドロップス)」で締めくくった。
やなせさんのコンサートを聴くのは昨年2月8日以来ほぼ1年ぶり。相変わらずの透明感あふれた伸びやかな歌声。中でも復興支援歌「まけないタオル」は聴くたびに元気がもらえる。長さが50cmで首にも頭にも、そして震災にも「まけないタオル」。このプロジェクトは1口1000円以上で協力者にタオル1本を渡し、被災地に義援金とタオル1本を送る。これまでに7万本以上が出て、いま泉州のタオルメーカー(やなせさんの親戚とか)で増産中という。「まけないタオル」の歌と運動がもっと全国に広がることをただ願うばかり。
この日のコンサートの後、久しぶりにやなせさんのHPを覗いたら「お寺コンサートの受付停止」というお知らせが目に飛び込んだ。なぜ? 「ここ数年あまりの多忙さ故、体調不良が増えた」ことと「楽曲の制作等の活動がままならない」ことを理由に挙げていた。そう言えば、この日もお寺とその他の会場を合わせたコンサートが「多い月には27回も」と確か話していたなあ。