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経済政策と社会保障を考えるコラム


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4-6月期GDP1次・内需高成長のあだ花

2019年08月11日 | 経済
 4-6月期のGDP1次速報は、驚きの高成長であった。輸入増に伴う-0.3をもの外需の寄与度を跳ね除け、実質年率1.8%を達成したのだから、立派なものである。ただし、それは、ひと時の盛りで、過ぎた春のことでしかない。月次の経済指標で分かるように、その後、景気は急速に悪化しており、そのまま、消費増税へと突入することになろう。外需なき中で、消費を圧殺し、何を伸ばして成長するつもりなのだろう。

………
 4-6月期GDPの最大の特徴は、消費の大幅な伸びである。家計消費(除く帰属家賃)は前期比+0.7に及ぶ。2018年各期の平均が+0.14しかないことを踏まえれば、5倍の伸びだ。こうした行き過ぎからトレンドへ戻るとすると、次の7-9月期は-0.3にならないといけない。それを超える部分は、駆け込み需要ということになり、大して駆け込みがないように見えたとしても、実は10-12月期の反動減の落差がつく予兆になる。

 GDPに準拠する月次の消費総合指数を見ると、4月に前月比+1.8と跳ね上がり、5月が-0.8、6月は-0.6と急低下している。いわば、4月だけの稼ぎで、4-6月期の前期比が+0.8になるという高成長なのだ。水準は、既に6月時点で1-3月期並みに戻っており、消費者態度指数、景気ウォッチャーともに、7月も続落だから、推して知るべしだ。さすがに9月は駆け込みで高まるにしても、基調は極めて弱く、増税後は更に鈍ると考えなければならない。

 高成長のもう一つの要因である設備投資については、鉱工業指数の資本財(除く輸送機械)の出荷を見ると、4-6月期は伸びているものの、1-3月期に落とした分を取り戻せていない。建設財もまた然りである。資本財の輸送用に限っては、前期の減を超える伸びだが、6月の生産は急落している。結局、設備投資は、伸びたとは言え、前期の停滞を踏まえれば、むしろ、鈍り始めているように見えるのである。

 そもそも、製造業の設備投資を先導する輸出は、1-3月期に急低下した後、4-6月期もわずかながらマイナスとなった。製造業の機械受注は既に低下傾向にあり、輸出の失速が明らかに波及している。非製造業についても、建設業活動指数の民間企業設備は5,6月は好調だったが、6月の建設財の動向からして、持続的とは思われない。設備投資の伸びには、増税前の駆け込みも含まれると思われるのでなおさらである。

(図)


………
 外需は不穏な状況にあり、政府・日銀ともに、リスクには「躊躇なく」対応すると表明しているところだ。しかし、財政出動や金融緩和には虚しさが募る。まず、金融緩和というのは、設備投資を直接に増やしたりはせず、住宅投資や円安による輸出による需要の追加を通じて初めて効く。したがって、住宅や輸出が増える経路が塞がっている現在では、気休め程度にしかならない。金融緩和が効かないとは、こういう意味である。

 他方、財政出動で公共事業の拡大したとしても、2018年に削減したものを戻しているだけなので、それで設備を増やそうとはならず、所得増で消費を促す間接的なものになる。ところが、その消費へ増税して慄かせているから、どうしても鈍くなる。結局、虚しい対策が「躊躇なく」取られるに過ぎない。消費増税は、企業や個人が積み上げた成長のための努力を、一挙に巻き上げて無に帰してしまう。戦略の誤りとは、いつも、そうしたものだ。

 実は、GDPに占める設備投資の割合は16.5%となり、過去25年間の最高を更新した。既に輸出が盛んだったリーマン前を超えている。金融緩和や成長戦略で、これ以上、設備投資を伸ばすのには無理がある。足りないのは消費で、未だ2014年増税前水準を回復できていない。それでも、消費増税が国政の最重要課題であり続け、景気の悪化がリーマンショック並みではないからと断行される。デフレと停滞から脱せないのも当然だ。米国のMMT学者よりも、自分たちがしていることを分かっていないのである。


(今日までの日経)
 堅調内需、GDP下支え 民間予測7~9月もプラス 外需回復は望み薄。10月の増税、関門に 10~12月はマイナス予測。最低賃金 19県が「目安」超え 引き上げ幅、東京並み。

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