経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

日経CSIS提言を読んで

2012年06月09日 | 経済
 日本人のダメなところは、「戦略がないから、戦略を作る組織を作りましょう」で満足してしまうことである。国家安全保障会議(NSC)を作ったところで、メンバーの首相が1年も持たず、閣僚は半年で変わる国では、機能しない。原子力戦略にしても、規制機関、大学校、廃炉機関を設置するくらいの知恵しかないのかね。

 今回、日経は、CSISの協力を仰いだわけだが、米国的な組織を日本に作るというだけに終わっている。まあ、何もないのだから、そこから始めるので仕方ないにしても、本来、日本と米国では戦略が違うわけで、似たような組織を作れば上手く行くと思わないほうがよい。

 例えば、核や中距離ミサイルによる脅迫を受けた場合、どのような軍事的、外交的な対抗措置を準備しておくべきかといったことは、タブーが多すぎて、とても日本の官僚組織の中では検討できないだろう。筆者であれば、有力私大に資金を出し、官民内外から人を集めた大規模な研究機関を作らせる。ポイントは、オーダーを考えて、組織を作るということだ。

 また、今回の震災で危機管理は機能しなかったし、北朝鮮の「衛星」発射には速報すら出せなかった。災害も、事故も、軍事も、テロも、まとめて対応する今の組織では無理があるのではないか。北岡先生は、「統合性」を重視したようだが、統合すべき対策の専門性すら確立されておらず、各省からの情報集めの機関に過ぎないように見える。

 原子力戦略も、米国では、スリーマイル事故以来、新設ができなくなったが、同質性の高い日本社会において、規制機関と称しても、こうした自己否定のようなことができるのか。独立性を持たせれば、それが可能になるというものでもあるまい。戦略を考えているつもりで、暗黙のうちに現行戦略の維持を前提に、組織の手直しになっている。

 廃炉機関の設置は有用と思うが、東電の負担軽減策とはしないことだ。また、将来や海外に活きるノウハウは、事故原子炉のような危険で特殊なものではなく、通常の廃炉であるはずだ。日本における原子炉の寿命の戦略も持たずに機関を作っても、先々仕事の展望が持てなければ、有用な人材は集まらないだろう。戦略と組織は同時並行なのである。

 民間で自由に戦略を提言できるはずなのに、なぜか既存路線をなぞるだけになっている。別の戦略がなければ、既存路線の価値さえも分からない。戦略を作るには、多様性も、創造性も、鳥瞰性も必要だ。改めて、日本人には縁遠いと思ったよ。

(今日の日経)
 首相会見・原発なしで立ち行かず。日本版のNSCを。利下げでも不安先行、中国株も下落。法科大学院の撤退ドミノ。街角景気5月も悪化。原発比率15%軸。スペイン・銀行救済をEU協議へ。牛丼苦戦、値下げに陰り。増える配当・ソフトバンクも。EVの排出枠で充電設備。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本の新常識という喜劇 | トップ | 6/10の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事