経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

将来を構想し過去に学ぶ

2011年12月18日 | 経済
 昨日の「死に至る病」は、いかがだったかな。簡単なモデルではあるが、経済や財政のスタビライザーとして、利子課税と法人税が意外なほど重要な役割を持つことが理解できると思う。これに着目すれば、次世代の経済運営の技法がどのようなものになるかを予想することも可能だろう。

 スタビライザーが有効なのは、国債消化が国内である場合に限られる。課税である以上、外国人に徴税権力は及ばないからだ。その意味で、欧州危機の対応策として、そのまま使うことはできない。ただし、国際協調ができれば別である。例えば、ドイツやフランスの金融資産に課税して、ギリシャの救済資金にするというスキームだ。

 ギリシャの危機は、バブル的な好況のときに、独仏の銀行が貸し込んだ側面がある。それで儲けたわけだし、貸した金で輸入もしてもらった恩恵もあった。ギリシャ危機の処理は、独仏の銀行を守り、預金を保護する意味もある。ならば、金融資産の利子を財源に、ギリシャ支援のための「新世紀マーシャルプラン」を作れば良い。

 もし、そうしたスキームができれば、マーシャルプランがOECDに発展し、IMFなどと並ぶ戦後の世界経済の枠組が作られたように、欧州危機に始まる新たな「戦後」の枠組になるかもしれない。新たな「戦後」には、利子課税と法人課税を強化して、金融の暴走を防ごうというコンセプトが成立するわけで、裏返せば、金融取引の自由化を進め、課税を軽減してきたことへの反省がなされることも意味する。

 まあ、敗戦を迎えてもいないのに、「戦後」の枠組を考えようなんて、先走りすぎと思われるかもしれないが、戦争中から、ケインズとホワイトは、後のIMFについて、ブレトンウッズで議論を交わしていた。最近、山本五十六がブームらしいが、勝ってから戦後を考えようというのは、日本人だけだろう。日本人は、過去の経験に学んでいるのかね。

 さて、その日本だが、今日の日経の「消費増税 景気・行革が前提」は、良い編集の記事だった。光るのは、1997年の経験を引き、なおかつ、「消費税は景気後退の主因ではない」という政府報告書に惑わされず、「消費下押しの要因になった可能性は高い」としていることだ。さらに、増税直前の2013年度は1%台の成長に減速するという指摘もしている。

 お役所用語の「主因ではない」は、要因の一つとして認めざるを得ないという意味であり、日経は、きちんと読み取っている。また、1%台半ばの成長率では、マクロ経済と整合を考えれば、消費増税は1%アップが限界であり、あるいは、2%上げて1%分を歳出や社会保険で還元するほかない。政治的に決めてよい問題ではないし、行革による歳出削減となると、障害にすらなりかねない。

 日本では、消費増税が国政の最大の争点のような感があるが、財政当局の経済運営能力があまりに乏しく、政治主義に偏っているために過ぎない。本来、消費増税は、極めて技術的な問題である。最初から、2014年4月の消費増税は1%とし、1997年の反省も踏まえ、駆け込みと反動の打撃を避けるため、住宅へのエコポイント付与といった緩和措置を取り、社会保障の充実も図るとすれば、一体、誰が反対するというのだろう。それで経済状況を見て、2016年の再引上げを目指すことにすれば良い。

 それを、財政破綻の自己暗示にかかり、経済界との取り引きで法人減税を出す以上、一気の3%引き上げしかないと焦るから、揉めにもめるのである。震災対応の際も、復興増税2兆円という野心を出したがために、被災者を雪が降るまで待たせる愚を犯した。本コラムが示した代案のように、最初から、復興債の金利と定率償還分に当たる3000億円程度の増税という案なら、政治の迷走はなかっただろう。経験に学ばずして何とする。 

 正直に言って、日本の経済運営はレベルが低すぎて、話にならないのである。だから、若い研究者には、あまり深入りしてほしくない。例えば、消費増税が景気に影響するかについて、精緻な計量分析をしたところで、小刻みの税率引き上げしか、政策的に考えられないとしたら、使いどころがない。そんなものより、大きな構想で世界経済をリードするような政策を考えてもらいたいと思う。

(今日の日経)
 新興国の通貨・株下落、欧州不安波及、資金はドル、円横ばい。不動産下落がアジアに拡大。WTO合意を断念。中国はユーロのつれない救世主。風見鶏・逃げているのは。消費税・10か月前に閣議決定。基礎年金に交付国債。カンボジアが外資誘致分散。タンガロイ福島のコストは中国下回る。小売実力企業は物流とシステム。産油国はカネと油で批判封じ。読書・ブレア回顧録、

※欧州危機は世界に波及し、WTO体制は過去のものに。※財政当局は年金債に拘らないのか。※日経ビジネスに東電改革の小さな記事。本紙が書けない分をカバーしてほしい。読売には火力入札の記事。※そうそう、KItaAlpsさん、回答の投稿ありがとう。

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