経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

金融政策とはバブル潰しなのか

2023年05月14日 | 経済
 5/3のFRBの0.25%の利上げで、政策金利は5.25%となって、インフレへの対応も打ち止めのところまできた。確かに、物価上昇は収まってきているが、副作用の金融機関の破綻も相次いでいる。果たして、ここまで上げる必要はあったのか、そもそも、利上げには、意味があったのだろうか。主作用が乏しいのなら、副作用だけの金融政策とは、何のために行われるものなのだろう。

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 日銀の異次元緩和は、いくら金融緩和をしても、物価を上げられないことを証明した。それでは、逆はどうか。金融政策は、緩和も、引締めも、資産には効いても、生産には効かないのが経験則である。2022年の米国経済の動きを、ISM製造業指数で見ると、FRBの利上げと並行して、生産が低下しているが、低下は前年の半ばから始まっており、既に在庫も上昇していたから、利上げが効いたというより、自然に崩れたと見るべきだろう。

 他方、利上げの後、米国の住宅建設は大きく低下したし、ドルの実質実効レートも2022年の半ばまでは高まったので、通貨を含め、資産には効くというのも、経験則どおりだったと言える。もっとも、資産の上昇の勢いが強いと、資産に対してすら、引締めの効果がなかなか表れなかったりする。遥か昔だが、バブルの日本が経験したことだ。金融政策は、教科書どうりには、経済を調整できないものなのだ。

 米国で相次ぐ地銀の金融破綻は、低金利をあてにした長期投資への偏りが理由であり、取りも直さず、金融政策が資産には効くことの一面である。地銀に対して、リスクを取り過ぎという批判はあろうが、程度の問題であり、これほど急にインフレになり、慌てて引締めをするはめになろうとは、FRBだって予想していなかった展開だ。その意味で、やむを得ない犠牲とも言える。

 今回の金融引締めでは、住宅建設は早々に崩れたので、2022年の半ば以降、3%を超えて政策金利を上げ続けたことに、どれほど意味があったのかと思う。潜在成長率は2%弱なので、コロナ禍での金融緩和を改め、3%程度まで持っていくのは良いとしても、それを超えれば、資産投資に強い負荷がかかる。どのみち、生産には効かないとすれば、犠牲を出すだけだったわけである。

(図)


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 金融政策では、効き目がない以上、やってる感が大事になる。日銀で言えば、ほとんど効果がないのに、ちょっと上げたところで、たまたま景気が悪くなり、責められたりしても、かなわない。その点、4月の景気ウォッチャーは好調なので、チャンスは、巡って来ているように思える。金融緩和を続けていると、必然的にバブルになっている部分があるから、副作用を上手くこなせるよう、早いうちから、少しずつ正常化を進めて、急速に上がるという予想が立たないようにすることが大切であろう。


(今日までの日経)
 金融不安「適切に行動」 G7財務相共同声明。賃上げ31年ぶり高水準 3.89%、ベア実施9割。高度外国人材、滋賀で急増。円、揺らぐ「安全通貨」。異例な金利上昇にも備えを 門間一夫。「メガ盛り」は廃れない。


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