経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

衰退途上国・日本の現実を認めない人達

2020年04月19日 | 経済
 経済のみならず、行政においても、韓国や台湾が日本の上を行く部分があると感じるようになって、随分と経つ。しかし、感染症対策で「韓国や台湾ができるのに、なぜ、日本はできない」と叫ぶ人を見ると、「すべてにおいて、日本は上のはず」という驕った前提を、未だに改められず、20年続けた緊縮のために、日本は、経済も行政も、隣国に置いて行かれているという情けない現実を認められないのだと思う。

………
 もし、給付つき税額控除の仕組みがあって、日常的に国民に還付する状況であったなら、コロナ禍で10万円を給付することは、すぐにもできただろう。税・社会保険料と結びついているから、一定の所得以下の人に限ることも簡単だ。緊縮と産業政策ばかりで、まじめに再分配に取り組まず、社会インフラとしての行政を疲弊させてきたから、他国ができることもできない。衰退途上の遅くれた国なのだから、できないのは当たり前である。

 遅行国の現実を認められず、過去の栄光で旧植民地を下に見るから、痩せ馬の尻を叩くがごとく行政を責めることになる。PCR検査ができないのは、できるのにやらないのではなく、やる能力がないだけに過ぎず、それに合わせて感染症対策を打たざるを得ない。収容施設を満足に用意できなかった検疫の弱体ぶりは、安上りの政府を喜んでいたのなら、甘受せざるを得ない報いだろう。批判される中で奮闘する現場は過酷である。

 いきなりの方針変更の上、1億2600万人へ10万円を給付するとなれば、市町村の現場は混乱が避けられそうにない。もう少し、既存のインフラが使える方法が取れなかったのかと思う。例えば、日本は「天引きの国」なので、国が厚生年金保険料の還付を宣言し、会社は特別手当の形で従業員に支給し、後で、その分を差し引いた保険料の納付をする方法が考えられる。資金が乏しければ、企業の依頼により、銀行が代わって振り込み、国に請求する。国民年金加入者の場合は、10万円分の納付の免除をする。

 これで、ほとんどの人へ実質的に10万円の給付が行える。市町村は、年金保険料を納めていない人だけを相手にすれば良いから、事務負担が大幅に減らせ、スピーディに対応できる。この際、年間10万円の保険料減額を恒久化し、パートも厚生年金に全面的に加入させるようにすれば良い。これは、年収109万円まで厚生年金保険料の従業員負担がかからなくなることを意味する。保険料の軽減によって適用拡大の道が開かれるわけだ。

………
 実際には、1人10万円という究極のバラマキになった。穏当な再分配のルートがないために、子供や年金生活者のような、働いておらず、コロナ禍でも収入に変化のない人も対象にする極端へと振れた。むろん、二度三度と繰り返せるような策でもない。これに要する12.6兆円を使えば、70万件の飲食店数で割れば、1800万円にもなる大きさだから、休業期間の店舗賃料の1/2を補助するといった補償も十分可能だったろう。

 東京の日々の感染確認数は、高水準ながら、横バイとなった。今週は、4/7の緊急事態宣言以降の強い自粛の効果が表れることが期待される。5月の連休までに収束に向い、飲食はともかく、物販は再開されればと思う。


(今日までの日経)
 緊急対策実現に2カ月 熟議の理念も足かせ。外出抑制へ企業動く 緊急事態拡大で 、ゼネコン、工事中断全国で。全国に緊急事態宣言。揺らぐ政権 補正組み替え。国民一律10万円給付へ 財源12兆円に。

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2 コメント

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Unknown (うに)
2020-04-21 17:22:51
愚かな予言の自己実現がこの国の20年の歴史でした。
人間がその人生において合理性のみで生きる事は無理ですが、各地位にいる政策担当者が安全より安心を求める施策を取り続けた結果でもありますね。
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Unknown (Unknown)
2020-09-15 09:05:30
遂に一人当たりGDPで抜かされた。。。韓国に。。。
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