経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期GDP1次・帰らざる豊かなりし日本

2022年02月20日 | 経済
 消費増税をすると、家計消費(除く帰属家賃)の水準が下がって、増加速度が遅くなる。それは下図を見れば明らかだ。足下では、消費が最も高かった2013年7-9月期との差が14兆円あり、収束後にコロナ直前の水準まで戻しても、まだ10兆円ある。アベノミクス期の消費の増加速度は年率0.3%だったから、このペースを10%増税後にも維持できているとしても、回復には10年以上かかる。おそらく、二度と帰らざる豊かさとなろう。

………
 消費増税によって水準と速度が落ちることは、2014年に8%増税をする以前から分かっていた。1997年の消費増税後、バブル崩壊後も年率2.0%で伸びていた消費が、水準を3兆円下げたうえ、年率0.8%に鈍化していたからだ。しかし、どうしても認めたくない人達がいて、日本経済の自殺計画は実行に移される。8%増税後、水準は6兆円落ち、増加速度は年率0.3%へと半減して、5年経った2019年に至っても復旧できなかった。

 死んだ子の歳を数えるようなものだが、もし、何もしていなかったら、今頃、消費は265兆円になっていた。5%分の13兆円の税収のために、2倍の27兆円の消費を失った計算になる。さらに、2019年に10%消費増税を行い、水準が一気に8兆円も低下し、238兆円になったところでコロナ禍を迎え、増加速度の低下は観測不能となった。足下の2021年10-12月期は、前期より戻したとは言え、コロナ禍の直前に3.5兆円及ばない235兆円にとどまる。

 おそらく、コロナ禍の直前の水準までは、収束とともに急速に回復するだろう。過去にも、リーマン・ショックや東日本大震災で打撃を受けた後は、ペースを上げてトレンドヘ回帰しているからだ。次の2022年1-3月期は、年明けからのオミクロン株の蔓延で、消費は後退せざるを得ないが、幸い峠は越えたようなので、3月以降、再び戻り、7-9月期にはコロナ禍の直前の水準を回復するといったところか。

 問題はそこからで、コロナ対策の剥落と、税・保険料の自然増収によるデフレ圧力が加わって勢いが頓挫し、8%税率時代の年率0.3%を下回る超スローペースに陥り、2度の消費増税で生じた落差を埋められないまま、豊かさへの復旧は次第に望めなくなるだろう。こうして2013年が日本の豊かさの頂点になるとは、誰も思っていないだろうが、栄光は失われてから分かるものである。

(図)


………
 投資部門も見ておこう。10-12月期の設備投資は、前期比+0.4%になったが、前期の-2.4%の後であることを思うと物足りない。実際、1年前とほとんど同じ水準である。こうなるのは、消費を抑圧する日本では、輸出だけが成長をもたらしていて、それが頭打ちになっているからである。中国経済の減速を踏まえれば、1-3月期の機械受注の見通しに一服感が見られるように、設備投資が進展する状況にはないと思う。

 他方、住宅については、消費増税の後遺症から脱し、ようやく上向いたところだが、資材の高騰が響き、実質では10-12月期の前期比が-0.9%と2期連続のマイナスとなった。また、公共も、前期比-3.3%と4期連続の減少で、26兆円台は6年ぶりの低水準だ。感染対策に気を取られ、感染状況に左右されずに執行できるにもかかわらず、不況下の経済対策としては、まったくの手抜かりになっている。

 今後、流されるがままの緊縮を甘受せず、再分配により非正規を中心に還元していけば、消費を失速させずに、過去最高への復旧を果たす可能性はあるものの、政策を巡る状況を踏まえると、ありそうにない。せいぜい、従来型の補正予算による産業政策のバラマキが繰り返されるくらいだろう。日本は、人口の急減とともに衰退して、地球環境の負荷軽減に貢献する道を歩むとしておく。モノは言いようで、財政赤字を気に病み、緊縮で少子化のままに滅亡とするのは悲しいのでね。


(今日までの日経)
 米LNG能力、年内2割増。独金利上昇 円債に売り、円安圧力。貿易赤字、原油高で定着も。企業の資金、日本離れ加速 円の実力50年ぶり低水準。中国、企業の手元資金減少 消費低迷が直撃。コロナ下回復、米欧に日本見劣り。経済教室・賃上げへの課題、分配強化へ開示改革こそ スズキ・トモ。

※スズキ先生の提言は、分析が的確だし、アイデアも優れていて、感服したよ。


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