経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

ウォッチャーに見る景気の波及

2017年06月11日 | 経済
 「景気は何を見たらいいですか?」と聞かれれば、景気ウォッチャー調査を勧めることにしている。主観を対象にしたソフトデータであるものの、発表が早いし、先行性もあり、コメントが親しみやすく、納得感があるためだ。調査機関でも、第一生命研の齋藤麻菜さんとか、ニッセイ研の白波瀨康雄さんとか、若手が担当していて、経済を深める恰好の材料になっていると思う。お二人のレポートは、良く書けていて、いつも読ませてもらってますよ。

………
 6/8公表の1-3月期GDP二次速報は、2.2%から1.0%成長に大きく下方修正され、ちょっとガッカリだった。在庫の違いに過ぎず、最終需要はほぼ同じだから、景気の評価に変わりはないのだが、一次速報の2%超の数字は、昨秋からの急速な景気回復を象徴していたからである。反動で4-6月期が高まるとしても、タイミングがズレた感じになる。そこで、今を表しているデータということで、5月分が出た景気ウォッチャー調査を取り上げよう。

 ウォッチャーの長所は敏感な反応だが、激しくて局面がつかみにくいところがある。例えば、季節調整値で見ると、昨秋に回復し、今は後退しているようにも見える。そこで、原始的手法だが、12か月移動平均を取り、原数値と重ね合わせたのが下図である。昨年前半が景気の底だったこともあって、今が緩やかな上昇局面にあることが分かるだろう。そして、原数値が移動平均を上回っていることが加速を示している。

 興味深いのは、移動平均で見ると、景気が波及する前後関係が分かることだ。底離れの月を見ると、企業動向関連が9月、雇用関連が10月、家計動向関連が11月となる。輸出などの追加的需要で、企業活動が上向き、所得が増して、消費が伸びるという順番だ。経済がどのように動くものなのかを、端的に示している。順番からすると、消費はようやく、物価はこれからという局面だろう。

(図1)



………
 さらに、ウォッチャーを分解していくと、景気の特徴が手に取るように分かる。次の図は、家計と企業関連の中分類だ。住宅は、消費増税の駆け込みで早くから盛り上がり、大きく下降して、景気を振り回した。そして、足下では、伸び切り感が強い。家計では、小売りに増税前の駆け込みが見られるのは当然だが、飲食やサービスにも高揚感があった。足下では、飲食やサービスに小売り以上の勢いがあり、賃金や物価への波及が期待される。

 また、企業関連を製造業、非製造業の別で見ると、円安基調が長ったにも拘わらず、輸出を担う製造業より非製造業の方が総じて景況観が良い。さすがに、昨秋からの輸出増の局面では、製造業が加速したが、足下では一服し、非製造業が追い越すように高まっている。輸出からの消費への波及がうかがわれるし、非製造業には、インバウンドや底堅い通信が含まれていることもあろう。

 更に分解して小売りの小分類を見ると、家電や自動車は、昨年半ばの比較的早い時期に回復していたことが分かる。通信もそうで、思い返せば、このあたりから景気回復の兆しが出ていたわけだ。他方、百貨店の底入れは、円安になった秋からで、その代わり回復は急だ。衣料も秋以降で、足元で緩やかな回復を見せる。そして、純全たる内需を示すスーパーは、物価高もあってか、底入れを果たしただけで動きは鈍い。

(図2)


(図3)



………
 1-3月期GDPは1.0%成長に終わったが、6/7公表の4月消費活動指数は意外に高く、前月比+1.3、前期比+1.1と、4-6月期の高成長を期待させる結果だった。同日の総雇用者所得も、前月比+0.6、前期比+0.5と好調である。そして、5月の消費者態度指数は前月比+0.8であり、揺れつつも着実に水準を上げている。むろん、5月景気ウォッチャーも前月比0.8と着実な回復ぶりだ。

 景気ウォッチャー調査は、21世紀の統計だから歴史も浅く、分析についても、季節調整値が発表のメインになったのが昨秋からと、いろいろ工夫や開発の余地があって、おもしろい知見も、まだまだ引き出せるように思う。その意味で、若手の挑戦と活躍を期待したい。なにしろ、筆者も歳でね。今回のコラムには十数枚のグラフを要し、さすがに体がきつい。誰かやってくれないかなというのが正直な心境だ。


(今日までの日経)
 国の税収、7年ぶり減。法人税、好業績でも伸びず。米景気・車前年割れ、不動産過熱。骨太決定、社会保障・財政落第。GDP下方修正、原油在庫減、かく乱。街角景気、5月も改善。親切コストの見える化・中島隆信。一致指数 増税前超え。JDI誤算の連鎖。5G通信5兆円投資。内定率早くも63%。採用増したい 首位秋田大。佐川が週休3日制。企業主導型保育所、開設急ピッチ。ソフトバンク、定休日導入。

※財政が落第とは、驚くべき認識だ。財政収支は増税見送りの年にも大幅に改善している。エコノミストは数字で評価すべき。

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