経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

経済対策は何をするものなのか

2022年11月13日 | 経済
 第2次補正予算が閣議決定された。予備費分を除いた国債の増額は18.1兆円であり、名目GDP比で3.3%にもなるので、全部が直ちに需要に上乗せされたら、日本経済が暴走しかねない規模である。しかし、いつものごとく、誰も、そんなことは心配しない。安心できると言うか、甲斐性がないと言うか、効きの悪い経済対策は何のためにしているのかなと、毎度、考えさせられるのである。

………
 経済対策の効きの悪さは、理由の一つは所得移転の多さだ。電気・ガス、燃料油の値上がり分の一部を補填するのに6.1兆円が充てられる。値上がりで実質所得が削られるのを軽減し、現状の低所得層の消費や高所得層の貯蓄を減らさないようにするだけだから、効いてはいるけど、見えにくい。これが国債増額分の1/3を占めており、需要の上乗せでなく、維持なので、成長が加速されるものではない。

 次に目立つのは、投資の促進で、6兆円ある。直近のGDPの民間企業設備は89.9兆円になっているから、その6.6%にあたる。政府経済見通しの7月の年央試算では、2022年度は、民間企業設備は、実質で前年度比+2.2%となっている。これに、今回の経済対策が設備投資にそのまま上乗せになったら、異様な高水準の投資になる。経済対策の効果が2か年に分散するとしても、スゴイ高さだ。

 しかも、去年の補正予算だって、マイナポイントを除いても、成長戦略に4.4兆円を投入している。それでも、誰も急成長が起こるとは思わない。熊本のTSMCに最大4760億円の補助金を出し、8000億円の設備投資を実現したりしてはいるが、巨額の予算を投入しても、全体的な設備投資は、下支えされるくらいだろう。成長戦略の予算は、ワイズスペンディングに分類されるようだが、こうしてみると虚しく感じる。

 他方、少子化は、過去最低の出生率に落ちる危機的な状況だが、今回の補正予算では1600億円が措置されるだけである。物的投資には、効きが悪くても、巨額の予算が投入されるにもかかわらず、人的投資には、それが福祉と位置づけられ、ワイズじゃないと思われるせいか、わずかに配分されるだけである。少子化が克服されれば、年金の国庫負担が10兆円も不要になるという、大きなリターンが見込まれるにもかかわらず。

………
 10月の景気ウォッチャーは、「現状の水準」が前月比+1.8の47.0と順調に回復してきている。ただし、飲食・サービスの上昇に引っ張られてのもので、企業動向は停滞し、雇用は5か月連続の低下で50を割る寸前だ。「先行きの方向性」が前月比-2.8と大きく下げているように、景気は弱まっている。経済対策が必要とされる状況ではあるが、2021,22年度に税収が6.2、3.1兆円と伸びているのだから、どう還元するかも考えるべきだろう。

(図)



(今日までの日経)
 アジア、膨らむ小麦リスク。世界の企業、減益 金融・ITが急減速。円急伸、138円台 一日で7円上昇。年金・健保の適用拡大 全世代会議。奨学金出世払い「年収300万円」軸。次世代半導体を国産化。尾身氏、コロナ「第8波に」。工作機械受注、2年ぶり減少。防衛費財源、増税論が大勢。5兆円差益、企業どうする。


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