晴れてほしいと思っているとき、雲間に光が差してくると、喜び勇んで出発してしまうが、やはり、悪天に変わりなく、急な雨に見舞われたりする。山や海での判断は、幅広く見ることが大切であり、景気の把握も、また同じだ。5月の鉱工業生産は予想外の上昇で、これらを基にする景気動向指数も「下げ止まり」になりそうである。しかし、在庫が積み上がる中での高生産とは不自然だし、5月の輸出も、景気ウォッチャーも、大きく低下しているのでは、疑うには十分であろう。
………
5月の鉱工業生産は、季節調整値の前月比は+2.4と、市場の事前予測を大きく上回るサプライズとなった。ただし、今月は、改元に伴う10連休で、季節調整が難しくなっているため、普段は見ることの少ない原指数もチェックすると、下図のとおり、前年同月比が-1.8と、4月の-1.1より低下幅が拡大している。さらに、6月の予測指数も-2.3という状況だ。これでは、「下げ止まり」どころか、天候の悪化が続いていると考えざるを得ない。こちらが他の経済指標とも整合的であり、登頂や出港は控えるべきであろう。
同様に、資本財(除く輸送機械)の前年同月比で、設備投資の動向を探ると、4月は-6.4、5月は-4.3と、引き続き低調である。2019年の水準は、2年前の2017年に重なる有様で、好調だった2018年から、すっかり逆戻りである。季節調整値で見れば、4,5月平均の前期比が+2.5となり、回復をうかがわせるものの、それですら、1-3月期の-6.8の半分も埋められない。やはり、原指数が2年前と同じ水準にとどまるのでは、復調の実感がまったく伴わないのも、当然と言える。
今後については、生産予測の原指数を見ると、7月は、製造工業の前年同月比が+2.0となるの中で、鉱工業用生産財が-0.3、非耐久消費財が-0.5と低迷するのに対し、建設財が+5.4、耐久消費財が+10.6と分かれる形になっている。もはや、消費増税の3か月前となり、駆け込み需要への対応が始まると思われる。したがって、この点でも、夏に晴れ間があるように思えて、実のところ、基調は厳しいままと考えられる。むろん、増税後には、駆け込みの反動まで加わることになる。
(図)

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「下げ止まり」に反するような数字は、雇用にも表れている。5月の労働力調査では、失業率は2.4%と横バイであるものの、就業者数の前月比は2か月連続の減少となった。特に、女性は、これまで順調に増加してきたものが、伸びを失い、就業者、雇用者とも、2月の水準を超えない程度でしかない。また、新規求人倍率は、2.43倍と前月比-0.05と大きめの減少である。とりわけ、「除くパート」の2.18倍は、昨年12月以来の低さだ。景気ウォッチャーで、5月の雇用関連が大幅に低下したことがうなづける内容である。
新規求人の前年同月比の増加数も、除くパートでの低下が著しい。全体では、3か月連続となる20,300人減で、そのうち製造業が5,800人を占める。これで5月に大幅な増産がされていたとは思いがたい。全体の増加数の3か月移動平均がマイナスに突っ込んだことは、消費増税後にも見られたが、今回は、それを突き破るような低下になっており、底入れどころか、悪化が加速している。建設業と医療福祉は別として、マイナスは非製造業にも広がっており、非製造業とて安泰ではない状況にある。
他方、5月の住宅着工は90.0万戸で、前月比-3.1万戸となった。2014年の消費増税の際は、3か月前まで増加が見られたが、半年前の4月の時点で減少に転じている。こちらも、鉱工業の建設財生産を押し上げるような状況になく、一進一退の状態である。そして、5月の実質輸出は、既報のとおり、前月比-4.9もの大幅減になっており、続く6月上旬分の輸出総額の前年同月比も、5月の-7.8と同水準の-8.0にとどまる。いずれも、景気ウォッチャーの住宅関連や企業動向関連の5月の落ち込みぶりを裏書きするものだ。
………
週明け月曜日には、6月短観が公表される。市場予測は多少の減で済むとの見方だが、景気ウォッチャーのような大きな低下にならないか心配である。消費増税が本決まりになってから、崖が見えるという皮肉な展開になりかねない。報道によれば、1-3月期GDPが輸入減による形だけのものにもかかわらず、2%成長の「晴れ間」に見えたことが、消費増税を決行する判断に結びついたらしい。反対に、4-6月期GDPは、輸入増でマイナス成長が避けられないが、公表は8月だから、どんな結果にせよ、消費増税をやめられるような時期ではない。崖だろうと飛び込むしかないところまで、既に来ているのである。
(今日までの日経)
景気判断「下げ止まり」も 5月、鉱工業生産上昇受け。国民年金免除・猶予が4割 高齢者の貧困拡大懸念。税収、最高の60.5兆円弱。
※年金の「不足」が何かと話題になっているが、現実的な対応策は、より長く働くしかない。これに関して、ニッセイ研の斎藤太郎さんの「平均退職年齢はすでに70歳」(6/25)は、見慣れた数字から新たな認識を引き出す、大変、優れたレポートだ。希望のある内容だしね。
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5月の鉱工業生産は、季節調整値の前月比は+2.4と、市場の事前予測を大きく上回るサプライズとなった。ただし、今月は、改元に伴う10連休で、季節調整が難しくなっているため、普段は見ることの少ない原指数もチェックすると、下図のとおり、前年同月比が-1.8と、4月の-1.1より低下幅が拡大している。さらに、6月の予測指数も-2.3という状況だ。これでは、「下げ止まり」どころか、天候の悪化が続いていると考えざるを得ない。こちらが他の経済指標とも整合的であり、登頂や出港は控えるべきであろう。
同様に、資本財(除く輸送機械)の前年同月比で、設備投資の動向を探ると、4月は-6.4、5月は-4.3と、引き続き低調である。2019年の水準は、2年前の2017年に重なる有様で、好調だった2018年から、すっかり逆戻りである。季節調整値で見れば、4,5月平均の前期比が+2.5となり、回復をうかがわせるものの、それですら、1-3月期の-6.8の半分も埋められない。やはり、原指数が2年前と同じ水準にとどまるのでは、復調の実感がまったく伴わないのも、当然と言える。
今後については、生産予測の原指数を見ると、7月は、製造工業の前年同月比が+2.0となるの中で、鉱工業用生産財が-0.3、非耐久消費財が-0.5と低迷するのに対し、建設財が+5.4、耐久消費財が+10.6と分かれる形になっている。もはや、消費増税の3か月前となり、駆け込み需要への対応が始まると思われる。したがって、この点でも、夏に晴れ間があるように思えて、実のところ、基調は厳しいままと考えられる。むろん、増税後には、駆け込みの反動まで加わることになる。
(図)

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「下げ止まり」に反するような数字は、雇用にも表れている。5月の労働力調査では、失業率は2.4%と横バイであるものの、就業者数の前月比は2か月連続の減少となった。特に、女性は、これまで順調に増加してきたものが、伸びを失い、就業者、雇用者とも、2月の水準を超えない程度でしかない。また、新規求人倍率は、2.43倍と前月比-0.05と大きめの減少である。とりわけ、「除くパート」の2.18倍は、昨年12月以来の低さだ。景気ウォッチャーで、5月の雇用関連が大幅に低下したことがうなづける内容である。
新規求人の前年同月比の増加数も、除くパートでの低下が著しい。全体では、3か月連続となる20,300人減で、そのうち製造業が5,800人を占める。これで5月に大幅な増産がされていたとは思いがたい。全体の増加数の3か月移動平均がマイナスに突っ込んだことは、消費増税後にも見られたが、今回は、それを突き破るような低下になっており、底入れどころか、悪化が加速している。建設業と医療福祉は別として、マイナスは非製造業にも広がっており、非製造業とて安泰ではない状況にある。
他方、5月の住宅着工は90.0万戸で、前月比-3.1万戸となった。2014年の消費増税の際は、3か月前まで増加が見られたが、半年前の4月の時点で減少に転じている。こちらも、鉱工業の建設財生産を押し上げるような状況になく、一進一退の状態である。そして、5月の実質輸出は、既報のとおり、前月比-4.9もの大幅減になっており、続く6月上旬分の輸出総額の前年同月比も、5月の-7.8と同水準の-8.0にとどまる。いずれも、景気ウォッチャーの住宅関連や企業動向関連の5月の落ち込みぶりを裏書きするものだ。
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週明け月曜日には、6月短観が公表される。市場予測は多少の減で済むとの見方だが、景気ウォッチャーのような大きな低下にならないか心配である。消費増税が本決まりになってから、崖が見えるという皮肉な展開になりかねない。報道によれば、1-3月期GDPが輸入減による形だけのものにもかかわらず、2%成長の「晴れ間」に見えたことが、消費増税を決行する判断に結びついたらしい。反対に、4-6月期GDPは、輸入増でマイナス成長が避けられないが、公表は8月だから、どんな結果にせよ、消費増税をやめられるような時期ではない。崖だろうと飛び込むしかないところまで、既に来ているのである。
(今日までの日経)
景気判断「下げ止まり」も 5月、鉱工業生産上昇受け。国民年金免除・猶予が4割 高齢者の貧困拡大懸念。税収、最高の60.5兆円弱。
※年金の「不足」が何かと話題になっているが、現実的な対応策は、より長く働くしかない。これに関して、ニッセイ研の斎藤太郎さんの「平均退職年齢はすでに70歳」(6/25)は、見慣れた数字から新たな認識を引き出す、大変、優れたレポートだ。希望のある内容だしね。
個人的にはモリカケが痛手になったと思っている。だいぶ麻生さんと財務省に尻を拭ってもらったから。
安倍さんは自分のクビと引き換えに、亡国増税を止めようとする覚悟は無かったようだ。
結局、自分の身が1番可愛いのか。
日本経済破壊の戦犯として名を遺すより、首差し出して増税中止のほうがよっぽどマシだと思うがね。