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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

1-3月期GDP2次・ネガティブな上方修正

2022年06月12日 | 経済
 6月半ばともなると、2次速報で1-3月期GDPの結果を聞かされても、過去のものの感はある。この間に、コロナ感染の収束、ウクライナ戦争の長期化、急速に進んだ円安と、大きな環境の変化があっただけに、なおさらだ。上方修正ではあるが、内容が悪く、設備投資は前期比でマイナスへと符号が変わり、押し上げは在庫が大幅に積み上がったことが理由だ。過去ではあるが、今後に尾を引きそうである。

………
 設備投資は、実質で前期比-0.7%と下方修正となり、水準は1年前に逆戻りだ。遡れば、8年前の2014年1-3月期と同レベルと思うと、寂しい限りである。輸出は105兆円を回復して、最高水準にあるから、設備投資がもう少し高くても良さそうなのだが、輸出や消費の動きと逆行して減った。機械設備等は寄与度0.0だが、輸送用機械が-0.1になっていて、企業の建設投資もマイナスだったようだ。

 今後については、鉱工業生産の予測が異様なほど高く、前月比が5月+4.8、6月+8.9となっており、資本財(除く輸送機械)に至っては、5月+14.3、6月+0.6である。ただし、意欲が高いだけで、半導体不足や中国のロックダウンの制約を受け、実現せずじまいになっている。そうこうするうち、機械受注は、民需(除く船電)の4-6月期の見通しが-8.1と下がっており、先送りで終わる心配も出てきた。

 消費は、わずかな上方修正だが、ゼロを挟んで符号がプラスへと転じた。耐久財と半耐久財が減少する一方、非耐久財が伸びて補ったものの、物価高に引きずられた感がある。サービスは、コロナが拡大した割に、ほぼ横バイだった。鉱工業生産の消費財の予測は、耐久財は、全体の傾向と同様に、5月+7.7、6月+10.8と高い伸びになっているのに、非耐久消費財は、5月-0.6、6月+0.8と停滞が見込まれている。

 今回の上方修正の大きな要因となった在庫は、寄与度が+0.2から+0.5に変わった。1次速報で仮置きだった仕掛品の寄与度が+0.3にもなったためである。当然ながら、次の4-6月期では、反動減が出ることになり、-0.4にもなるだろう。コロナ感染の収束に伴い、消費が回復することによって、4-6月期は、高成長が期待されるところだが、在庫減で目減りした上に、設備投資も伸び悩む形かもしれない。

(図)


………
 日本は、物価が上がっていると言っても、米国はむろん、ユーロ圏より低い。ひとり通貨安に見舞われているにもかかわらず、今回も「物価の優等生」なのだ。コロナの行動規制の緩和の遅れもあるにせよ、サービスが未だマイナスで、東京都区部で、ようやくプラスになったくらいである。そもそも、2019年10月の10%消費増税で大きく消費水準を落としたために、需給ギャップが開いている。

 その反面として、消費税収は、2020、21年度に、国だけで計4.3兆円増えており、地方も合わせると、その4割増くらいになる。これだけ冷やしていれば、物価が上がりにくいのも当然だ。「物価対策」はスゴい効果を上げていて、「岸田インフレ」などと、そしられる筋合いではない。むろん、本当に必要なのは、「物価対策」の弊害を緩和すべく、21年度だけで7.6兆円にもなる国の大規模な税収増の一部を低所得層に再分配することだ。

 物価高が嫌だからと言って、直接、価格を弄ろうとする政策は、資源配分を歪めたり、財政を不効率にする。また、金融政策も思うように効かない。物価高に伴う生活苦を緩和すべく、低所得層に再分配するのが王道だ。ところが、再分配のインフラがないせいか、道を外れる政策ばかりが出てくる。たしか、成長と分配の循環が「新しい資本主義」のはずだが。それは野党も同様で、朝野を問わず、政策立案能力が衰えているのだろうね。


(今日までの日経)
 「新資本主義」市場に配慮、かすむ岸田色。円安進行、一時134円台 米2年債利回り14年ぶり3%台。米物価、強い消費がけん引。欧州中銀、11年ぶり利上げ 7月0.25%。車部品、棚卸し資産4割増。海外勢は長期国債を過去最大の売り越し 日銀の上限撤廃を見込む。定住外国人「正社員」に壁。先進国物価、今年8.5%上昇 OECD予測。国債管理で有識者会議 財務省。米小売り、在庫急増に苦慮。


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