経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

デフレ克服と財政再建を両立する離れ業

2010年07月26日 | 経済
 今日の経済教室の植田和男先生の見方には、筆者もまったく賛成である。早くから同様の内容をこのコラムに書いていたから、読者の皆さんには、改めて言うまでもないが。ただ、日本に対する分析には若干の違いがある。

 今回の財政緊縮競争で一番危ういのは、日本ではなく、米国であろう。財政赤字が大きいだけでなく、貿易収支も同様の「双子の赤字」の下にあるからだ。貿易黒字の日本とは、ここが異なる。しかも、財政赤字の内容も悪い。海外における軍事費が多く、貴重な財政支出が国外に漏れているからだ。

 安全保障上の必要性を無視して言えば、米国経済にとって、アフガンやイラク、そして、海外基地からの撤退は喫緊の課題である。米国の景気が減速した場合、減税などをしようにもファイナンスに苦慮するおそれがあり、FRBが支援するにしても、かなりのドル安は避けられないだろう。ドル安は、海外での軍事行動を一層困難にもする。

 つまり、海外での軍事行動の縮小は逃れられない課題であり、それを拒んだとしても、ドル安という市場の圧力によって無理やり実現されるということだ。混乱を来たさないためには、徐々に進めねばならないが、EUの緊縮財政のために、持ち時間は少なくなったと見なければならない。本コラムが経済を主題にしつつも、普天間問題にも言及するのは、こうした背景がある。 

 他方、日本は、財政赤字の規模は大きくても、国内でファイナンスしているだけに、自由度は大きい。また、リバウンドとは言え、この2四半期で4.6%、5.0%成長を達成して勢いがある。これを「保つ」だけ良いのであり、当面、成長速度並みの財政拡大を行うことには何の支障もないはずだ。これを、わざわざ緊縮財政に転換することこそ避けなければならない。

 社会保障が厳しい状況にあるのは、植田先生の指摘するとおりである。しかし、これは中期的課題だ。しかも、頑健な財政を造ることによってではなく、少子化ものものを緩和しなければ、解決がつかない。これについては、財政を悪化させずに大規模な対策を打つ方法を本コラムの「小論」で示している。

 植田先生の言う「デフレ克服と財政再建の両立という離れ業」は、少子化対策を主軸にした需要確保によって十分に可能である。残念ながら、これが見えず、困難を招いた欧州のマネばかりしようとするところに、日本の課題がある。

(今日の日経)
 雇用回復、水面下に兆候、景気の谷で正規増加・鈴木大祐。核心・消費税軸に政策連合を・岡部直明。中国、南へ経済圏拡大・バングラ携帯シェア8割。米韓合同演習、過去最大規模。米物価弱まる、設備稼働率74.1%。井関、粗植法を普及。東大スーパー准教授。トーマツ、ママも専門職。経済教室・赤字削減に拙速の懸念・植田和男。
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