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花ごよみ

映画、本、写真など・

マグマ (真山 仁)

2012-06-09 | 本 ま、や行(作家)


マグマ (角川文庫)

この小説を原作として、
WOWOWでドラマ化されるのを知って
読みました。


地熱発電に命を注ぎ込む研究者、
原発廃止を唱える政治家、
外資系投資ファンドによる、
原発に変わる地熱開発ビジネス再生の、
可能性を目論む人達。

外資系投資ファンド会社勤務の、
野上妙子が主人公。

国際エネルギー情勢の変化に伴い、
注目されることになった地熱開発。
大地の下に眠る逞しい生命である地熱。
妙子は地熱開発ビジネスに奔走。

原子力発電に深く関わる利権等、
今、現実に直面する事態に対しての問題点、
国立公園問題などが
描かれていて興味深い物語でした。

登場人物の役割も終始ずれることもなく
分かり易くて頭の中が、
混乱せずにすみました。
物語としても面白かったです。

地熱発電は昨年九州に旅行に行ったとき、
たまたま霧島に宿泊した際、
そこの旅館が、
地熱発電をしていることを知り
関心を持ちました。
もちろんその時点ではこの小説の
存在は知らずにいましたが…





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まほろ駅前番外地 三浦 しをん

2012-06-02 | 本 ま、や行(作家)


まほろ駅前番外地

多田便利軒の多田と行天、
そして星、曽根田のばあちゃん、
小学生、由良、岡老人の夫人等が、
主人公になって繰り広げられる物語。

7編の短編からの構成になっています。
今回多田と行天は脇役かな。

でも前作と同様、
今回も、まほろ駅前で、
便利屋を営んでいる二人のことは
きっちりと描かれています。

過去に癒しがたい傷を持つ多田と、
少年時代に心の闇を持つ行天、
触れられたくない過去を持つ二人。

会話も交わさず、
お互い好きなことをしていても
一人でいるより二人の方が、
誰もいないよりはまし
距離を置きながらも、
離れることのない奇妙な二人。

短編のタイトルは「光る石」
「星良一の優雅な日常」
「思い出の銀幕」「岡夫人は観察する」
「由良公は運が悪い」
「逃げる男」「なごりの月」となっています。

「逃げる男」の柏木亜沙子は新しい登場人物

短編全てが味わい深く
切なくも人の優しさを感じ取れる
ストーリーでした。




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折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) 米澤 穂信

2012-05-09 | 本 ま、や行(作家)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

舞台はブリテン島の東に位置する
12世紀末のソロン島と小ソロン島。

その地の領主ローレント・エイルウィンの
娘である16歳のアミーナは、
この本では探偵役を担っている
騎士ファルクフィッツジョンと、
その従士、ニコラと出会う。

騎士ファルクは、
アミーナの父である領主に、
領主は暗殺騎士に、
命を狙われていることを告げる。

ファルクが告げたように、
自然の要塞の小ソロン島で、
暗殺騎士によって、
「走狗(ミニオン)」とされた人物に、
亡き者とされた父。

父を亡くした領主の娘アミーナは、
ファルク.フィッツジョンの従士ニコラとともに
犯人をあぶり出すため、行動を起こす。

容疑者は暗殺騎士エドリックの
「走狗(ミニオン)」で、
実行犯は、犯行の記憶がなくなっている。

傭兵として雇われた個性豊かな八人。

塔上の牢から消えた、
20年間幽閉されていた人物。

甦った首を欠失しない限り、
復活可能な伝説の、
「呪われたデーン人」の攻撃。

理性と論理は魔術をも打ち破る
 魔術と呪いがはびこる世界での推理は、
真相に達することは可能なのか。
魔術と呪いに勝る、
論理的な思考の上での推理。


魔術、魔法、呪い、剣…
魅力的なミステリアスな舞台設定。

戦闘の情景は映画を見ているようで、
迫力を感じました。
ファルク・フィッツジョンの論理的な推理。
推理の場面は本を読みながら
自分もいっしょに考えてしまいます。

魔法も法則があるので突飛さはなく
違和感などは感じずに
納得出来るように描かれています。

終盤が近づくにつれ
本の中の世界に、
入り込むようになってきました。





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少女 湊かなえ

2012-03-14 | 本 ま、や行(作家)


少女 (双葉文庫)

転入生からの話をきっかけに、
人が亡くなる瞬間を見たいという、
残酷な好奇心にとりつかれた、
由紀と敦子、
女子高生二人。

そういう動機からボランティアに。
選んだ先は由紀の方は小児科病棟で、
敦子は老人ホーム。
その中で起こる出来事。


互いを理解しているようで実際の所は
理解できていない。
友達を見る冷ややか目と捻れた心。
この年代特有の友人関係が、
よく描かれていました。

身勝手で不安定な精神状態。
この年頃の少女にとっては普通で、
実際にあり得ると思いました。

前半は二人の少女の話が平行して語られ、
途中から少女それぞれの話が交差していき、
最終的にはぴたりと収まっていきます。

物語の世界ならではの無駄のない
計算尽くしの展開が楽しめます。

登場人物の絡み合った複雑な人間関係。
誰かに説明するには相関図が必要かも、
それが最後には一つにつながる見事さ。

二人の少女の友情回復物語、
ひと夏の成長物語、
…で終えるのかと思いきや、
もう一つラストに、
ひとひねりが…





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水の柩 道尾 秀介

2012-03-06 | 本 ま、や行(作家)

水の柩

五十数年前
今はダムとなった地に村があった。
その村にかつて暮らしていた祖母の秘密。

旅館の長男で中学校二年生の逸夫、
自分が“普通”と思い、
毎日が普通で退屈と感じ、
つまらない日常を嘆いていた。

逸夫の同級生の敦子はいじめを受け、
つらい日々を送っていた。

そんな逸夫と敦子の間の距離が、
文化祭をきっかけに狭まる。

タイムカプセルに入れた手紙を、
新しいのと取り替えるという
敦子の頼みによって、
退屈だった逸夫の世界が変わり出す。

敦子の悲壮な覚悟。

逸夫の祖母のダム湖に沈められた秘密。

封印した過去におびえる祖母と
日々の仕打ちに逃れるすべのない敦子。
敦子の悲しみと心に受けた癒しがたい傷。

逸夫にとって自分の周囲の、
大事な人々を守りたい。
そして過去を忘れるのではなく、
乗り越えようとする行為。

逸夫の優しさが、
絶望からはい上がる勇気を
与えてくれたような…

美しい情景を感じる文章。
輝く光を受けた、
ダムのシーンが目に浮かびます。
明るい光を感じるラストで救われました。



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カラスの親指  道尾 秀介

2012-02-29 | 本 ま、や行(作家)


カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)

訳ありの中年男の詐欺師、二人。

生きることに疲れ果て、
詐欺を職業として、
日々を送る武沢とテツ。

ある日、少女が彼らの生活に入り込む。
そして少女の姉も…
なんだかこれも訳ありな姉妹二人。
それから姉の彼も…。
彼は一応マジシャン。

その男達3人と女達2人、
5人の共同生活。

悲しい過去を持つ同居人達。

悲惨で暗い過去が、
同居者達それぞれにまとわりつき、
出口を探し、もがいている。

でも突き詰めた悲壮感はなく、
温かく愉快さを感じる人達。

それぞれの今までの生活にかたを付け、
新しい人生を歩みたいと願うが…

彼らはある計画を企て、
これからの新たな人生に望みを掛ける。

それにしても怖いヤミ金。

取立て屋を相手にした詐欺の計画は
うまく遂行されるのか。

ハラハラする展開。

そしてそれぞれの過去が、
徐々に明きらかになっていきます。

二転三転、驚きの結末。
お見事です。
だまされました。

爽やか読後感。
爽やかなだまされ方でした。

阿部寛主演で映画化
ということを知りました。
楽しみです。



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偉大なる、しゅららぼん 万城目 学

2012-02-17 | 本 ま、や行(作家)


偉大なる、しゅららぼん

石走城に住む日出家と対立関係にある、
棗家との一族同士の争い。

両家とも先祖代々、
超能力を持った、
同じ「湖の民」である。

そこに違った勢力である速瀬家が入り込み
互いにその勢力を排除しようとする。

他人の心に入り込み
「相手の精神を操る力」によって
築かれた日出家と、
他人の心に入り込み
「相手の肉体を操る力」を
授かった棗家の将来は?

奈良、京都、大阪と続き、
万城目氏今回の作品は滋賀県、
琵琶湖の東岸に位置する石走が舞台。

因みに石走は米原駅と
長浜駅の間にある架空のまち。

主人公は日出涼介、
涼介は修行のため、
本家で暮らすことになる。

同じ高校に通う本家の息子は淡十郎。
日出涼介、日出淡十郎、
そして棗家の棗広海が同じクラスに。
はじめは淡十郎の恋敵である棗広海を
追い出すためだったのが…

赤い詰襟の学生服を着て、
高校まで船で通う涼介、淡十郎。
二人の住んでいるところはお城。
…な~んてあり得ないでしょう!!。

琵琶湖がメインとなって物語は進みます。

本のページ中頃、ある事件が起き、
そこから怒濤の展開になっていきます。

広々としていてなんか謎めいた
琵琶湖も目に浮かんできます。
知っている風景なので
うれしい!!
のんびりとした風景の中での息詰まる戦い。

ラストもいい感じで
本を読んでいる間、
楽しい時を過ごせました。

映像的にも派手な構成、
奇想天外なストーリーに、
まんまとうまくのせられて
本を読み切ってしまいました。




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ユリゴコロ 沼田 まほかる

2012-02-04 | 本 ま、や行(作家)


ユリゴコロ

主人公である亮介が、
実家の父親の押し入れで、
偶然目にした「ユリゴコロ」という、
タイトルの4冊のノート。

そこに書かれた手記の内容は、
異常な心の持ち主である人物が記した、
怖ろしい告白だった。

人の命が消滅するときに
発生する心の現象であるユリゴコロを
感じるのは誰なのか?

この手記の作者は?
事実あるいは単なる創作なのか?

ノートに書かれていた
驚くべき亮介の過去の真相は?

明るい未来を疑わなかったのに
彼女の失踪から次々に亮介に
降りかかる得体のしれない、
不幸な出来事。

実際読んでいてノートの内容は
気持ちが悪くなります。
ででも主人公の亮介と同じく、
早く先を知りたくなります。

手記の中身は、
少しずつ明かされていくので
先の展開がとても気になって
本を途中でなかなか、
閉じることはできません。

この家族、とても仲がよくて、
父と血縁関係のない祖父母との強い絆、
すべてを知ってからも
兄に対してなんら変わらない、
弟の様子などは、
なんだかすがすがしいほどで
現実的ではないです。

極めて陰湿で残忍な過去の上に、
成り立った家族、
でも今はごく普通の家族で、
それも家族愛で包まれた一家というのが
なんか腑に落ちないというか、
奇妙で心地悪さが残りました。

2005年に読んだ、
沼田まほかるのデビュー作、
「九月が永遠に続けば」から
7年を隔てて今回が2冊目の本です。



 




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儚い羊たちの祝宴  米澤 穂信

2012-01-31 | 本 ま、や行(作家)



「身内に不幸がありまして」
「北の館の罪人」
「山荘秘聞」
「玉野五十鈴の誉れ」
「儚い羊たちの晩餐」
これら5編の連作短編集。

すべてが女性の一人語りで成り立ち、
女性達はお嬢様かその使用人。
女性ばかりです。

そしてそれぞれが上流階級の、
お嬢様達が集う大学の読書サークル、
「バベルの会」に
関係しています。

「バベルの会」にリンクした、
5つの事件が書かれていますが
主人公も事件の内容も、
すべてが独立した話になっています。

湿度を感じさせる古い館が舞台。

現実感のない独特の空気が流れる中で、
5編とも人間の残酷で歪んだ心が
最後の方でぬくっと顕れて、
なんとも言い難い、
ひんやりとした怖さが残ります。

本を読み終えてから、
“ラストの一行で世界が反転”と
帯に書かれているのに
気づきました。

なるほど…
そう言われてみれば
短編すべてラストが衝撃的でした。
どすんと落とされ、
一瞬思考停止に
陥ってしまうような‥




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ペンギン・ハイウェイ (森見 登美彦 )

2011-11-18 | 本 ま、や行(作家)


ペンギン・ハイウェイ

ぼくは小学四年生、
ぼくの町に突如として、
出現したペンギンたち。

「海辺のカフェ」って
最初『海辺のカフカ』かと…
よく文字を見るとカフェでした。

大好きな歯科医院のお姉さんが、
この不思議なペンギンたちに、
関係していることに気づいたので
その謎を研究することになったぼく。

少年の住む世界は、
不思議なことがいっぱい。
色々な謎に対して、
少年は研究熱心ゆえ、実に多忙。

主人公である小学生のアオヤマ君、
おっぱいの大きな歯科医院の、
お姉さんに対するほのかな恋心、
切なさも感じられます。

ペンギン、そして不思議な海の謎を、
解明しようとする友人たちの行動、冒険心
小学生の心で現実に向かいあい
それを克服して成長していく少年たち、
たくましさを感じました。

色々展開していく不思議な出来事に
論理的なまなざしで探求していく
アオヤマ君は科学の子。

自分の立てた計画どおり実行していると
おとなになると見当もつかないほどの
えらい人間になるって本人は思っていて…
でもなんだかいままでの森見さんの作品に、
登場するのような、
大人になっている可能性も大のような…

何ともいえない不思議なかわいさと
爽やかさの残る作品でした。








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