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花ごよみ

映画、本、写真など・

光媒の花  道尾 秀介

2013-06-04 | 本 ま、や行(作家)

光媒の花 (集英社文庫)

『隠れ鬼』
認知症の母親と暮らす男の
とざされた過去の秘密。

『虫送り』
小学生の兄妹が
ホームレスに対して犯した罪。

『冬の蝶』
少女と少年のひそやかな約束。
隠された少女の哀しい秘密。

『春の蝶』
両親のトラブルが原因で
耳が聞こえなくなった少女。

『風媒花』
トラック運転手の青年が、
母親に抱いていた誤解。

『遠い光』
自信喪失の女性教師と、
彼女の教え子に対する想い。

以上6つの短編からなる物語。

各章ごとに違った登場人物です。
それぞれの物語がリンクしていて
連作になっています。

暗くて重い物語ですが、
静かな優しさもあるので、
読後感もよく、
穏やかな印象が残りました。

光媒の花、
風でも虫でもなく、
光が花粉を運ぶ花。
光が必要な花。

心の暗闇、
そこに当たる光、
哀しさ、暗さが支配する世界を、
優しい光が射すことによって、
花を咲かす。

その明るさに包まれ、
心の傷が癒される。
一筋の希望の光を見ました。




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白ゆき姫殺人事件 湊 かなえ

2013-05-26 | 本 ま、や行(作家)

白ゆき姫殺人事件

疑いをかけられた女性、
彼女の周辺に満ち溢れる噂話。

雑木林で発見された、
美女OLの事件に関して
ある女性に集まった噂。
果たして彼女は犯罪者なのか?

この作者独特の、
憎悪、嫉妬が渦巻く、
ダークな世界感。

勤め先の同僚、学才時代の友人、後輩…
彼女の周囲の人たちの憶測による証言。

口コミ、ネット、週刊誌によって
疑惑の中心になってしまった同僚の女性。

後半にはこの事件の関連資料として
ツイッターや週刊誌、
新聞記事が出てきます。

新しさを感じる小説になっていますが、
資料を読み進めて行くうちに、
真犯人が分かってしまいました。
参考資料を先まで読みすぎた感じ。
犯人を予想する楽しみが半減しました。
でも試みとしては面白いです。

以前、湊かなえ脚本で
長澤まさみ主演の、
高校入試というタイトルの、
テレビドラマでも、
ネットの掲示板に、
その学校の教師でないと、
知ることのできないような情報が
次々と書き込まれていくようすが、
毎回映し出されていました。
それとよく似た演出でした。

おもしろがって書かれたネット。
真実がねじ曲げられた週刊誌、
それがまるで真実であるかのように
広がっていく様は、
現実的にもありそうで、
怖さを感じました。




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ソロモンの偽証 宮部みゆき

2013-04-05 | 本 ま、や行(作家)

第I部 事件 第II部 決意 第III部 法廷

第I部 事件
第II部 決意
第III部 法廷
3巻からなる物語。
なんといっても1冊1冊が、
かなりの分厚さ!!
読み応えがあります。

クリスマスの深夜、
雪の降り積もった校庭に、
落下した中学生、柏木卓也。

いじめ、噂、匿名の目撃者、その告発状、
悪意が生み出す不幸の連鎖。

教師、保護者、マスコミ、警察など
事件に絡む人々。

嫌疑をかけられ被告となる少年は、
校内一の不良少年。

学校内で行われた中学生による裁判。
登場人達、それぞれの詳しい心理描写。

『第1部』から少し疑問というか、
何となく感じる気持ち悪さを、
残しながら物語は進んでいきます。

最後にすべて明らかになり、
疑問が解消。

検事側、弁護側とも、
真実を明らかにするため
証人を立てて順次立証する様子は
緊迫した空気に包まれています。
まるで本格的な裁判を見ているよう。

この裁判によって、
屋上から飛び降りた、
柏木卓也の人物像が
少しずつあぶりだされていきます。

果たして裁判の結果は?
結末が気がかりで、
本の最後を読みたいのをじっと我慢。
ラストの「もう夏も終わる」
あーもう裁判が終わってしまったんだと実感。
なぜか涙ぐんでしまいました。





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64(ロクヨン) 横山 秀夫

2013-03-11 | 本 ま、や行(作家)

64(ロクヨン)

昭和64年に起きたある事件、
その事件に関与した人々の心の振幅。

対立する二つの組織、
刑事部と警務部、
警察とマスコミ。

情報公開、家族の問題、
それぞれの場面で、
板挟みになり苦悩する、
元刑事の広報官、
三上がこの小説の主人公。

ページ数647ページの分厚さ。
内容もまた重厚でした。

葛藤を乗り越え
警務部の広報という、
自分の立ち位置、
居場所を自覚し、
一歩前に進んでいくようになった三上は
魅了的でかっこよかったです。

最初は多い登場人物に、
とまどいを感じましたが
だんだん気にならなくなってきます。

主人公の感情の行方、
被害者家族の悲しい執着、
張り巡らされた伏線、その回収
保身のため隠蔽された警察内部事情、
物語の行く先が気になって、
ページを繰る手が止まりません。

濃密なストーリーのこの小説に入り込み、
共感し、涙し、緊迫感を味わいました。
読み応え十分でした。

あ~読み終えたという、
達成感を得たような気分です。



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夜行観覧車  湊 かなえ

2013-01-17 | 本 ま、や行(作家)

夜行観覧車 (双葉文庫)

非の打ちようのないと思われていた
一家で起きた事件。
母親が加害者、父親が被害者。

事件があった家族、高橋家、
その向かいに住む遠藤家、
小島さと子が住む隣の小島家、
高級住宅地に住む家族の内実を書いています。

登場人物はみんな、見栄っぱりで、自己中で、
度の過ぎる嫉妬心を持っていて…
湊 かなえお得意の、
邪悪な心満載の登場人物達。

最悪なのは、
事件の起こった高橋家の向いに住む
遠藤家の癇癪持ちの中学生彩香。
性格がねじ曲がってしまっています。

女子中学生、中年女性の心の暗部、
醜悪さをリアルにあぶり出していて、
うまいな~と感心してしまいます。

読んでいるうちに自分も、
小島さんのように
この人達の家庭を野次馬的興味で
のぞき見しているような感じ、
気になって後半は一気読み。

遠藤家の父親が家に帰る理由、
家から逃げ出したことを繕うため、
比奈子の友達の歩美を伴い
中傷ビラをはがし、落書きを消すシーン。
高橋家の比奈子が歩美達に対し
ありがとうと言うシーンは
ジーンときました。
この本の中で唯一、
救いがある場面でした。

映像化されました。
明日放映です。
TVドラマが始まるまでに、
なんとか間に合いました。



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太陽は動かない  吉田修一

2012-11-13 | 本 ま、や行(作家)

太陽は動かない

新油田、次世代エネルギー開発に伴う利権争い。

AN通信の鷹野一彦と、
部下の田岡は、産業スパイとして暗躍。

機密情報を手に入れようと、
アジアを舞台に情報合戦に身を投じ、
利権に絡む背後関係に探りを入れていた。

韓国のスパイのデイビッド・キム、
謎の美女AYAKO、新米政治家の五十嵐など
スパイ、実業家、大学教授、政治家…

多彩な登場人物が出没、
物語を進めて行きます。

日本・中国・ベトナム、アメリカなど
世界を舞台としたスケール感のあるスパイ小説。

アクション映画を見ているような面白さ。

吉田修一の新ジャンルの小説かな。

初めは複雑で読みづらかったが、
だんだん引き込まれていき
後半はスピード感が加速していき一気読み。

それにしても
デイビッド・キムはいいとこどり。

謎も残りました。

青木優はもういなくなったのだろうと
思っていたのに…
再度出現でびっくり
本を読み返しました。
富士樹海で見つかった人物は
誰なんでしょう

鷹野と田岡の本当の関係は?

鷹野と田岡の
胸に仕込まれた、
タイムリミットのある起爆装置って…
どうしてこんなことまで。

AYAKOも最後まで謎の人物のまま。

分からないまま本を読み終えました。




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横道世之介  吉田 修一

2012-10-22 | 本 ま、や行(作家)

横道世之介

時代設定は80年。
長崎で生まれ、埼玉に近い東京に住み、
サンバサークルに入って、
サンバを踊る18歳の大学生の1年間。

とても読みやすい小説です。

上京し大学に通うごく普通の学生の生活。
世之介の将来の
目指すところの基礎となった一年。

間に学生時代の友人のその後を挟んで、
描かれています。

世之介の周囲の人達の今と、
過ぎ去った日々。

可愛い祥子ちゃんなど
登場人物の人柄も、
それぞれ魅力がありました。

世之介も不快な所が全くないいい人。
読んでいるうちに、
隙だらけでごく普通の学生の、
彼の魅力に気づき
だんだん惹きつけられていきます。

純朴で愛すべき人間です。
世之介に関係した人達にも、
ほんわかとした、いい思い出を残したはず。

思ってもいなかったストーリーに、
心苦しくなりますが
やっぱり彼ならではの行動だと。

世之介に出会えたことが一番の幸せ。
お母さんがそう思っていて、
悲しいけれど温かい気持ちになりました。

高良健吾主演で映画化があるそうです。





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誰かが足りない 宮下 奈都

2012-08-22 | 本 ま、や行(作家)


誰かが足りない

予約をするのも困難な、
人気のレストラン「ハライ」。

10月31日の午後6時、
同時刻にそのレストランに来ていた6組の客。

「ハライ」に予約、そして来店し、
食事をすることに至った
6組の彼らの物語を6編の短編として
綴られています。

認知症の不安に戸惑う老婦人。

現実を見ることを避け
ビデオから覗く世界しか、
受けいられない青年。

失敗の匂いを感じ、
人の辛い運命を知ってしまう女性。

それぞれ違う立場ながら
心になんらかの問題を宿している彼等。

「誰かが足りない」という、
心の欠落感を持ち合わせ、
不安を感じながらも、
前進しようとする彼等。

誰かが足りなくても、
過去の光景がなくても、
歩みは遅くても、
希望をもって前へ進み出す。

足りないと思うより、
足りないながらも、
心の充足を得ようと…

彼等は「ハライ」の、
おいしい料理を食べ、
その後は少しでも前向きに
生きることができそうな気がします。

「ハライ」への予約するということが
今の状況から一歩、
未来に向かって踏み出すことへの
スタートラインのような感じになっていました。
いい方向へと軌道修正するきっかけになるような。

優しさを感じる文章で書かれた、
読後感のいい
読みやすい小説でした。







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舟を編む 三浦 しをん

2012-07-18 | 本 ま、や行(作家)

舟を編む

主人公は玄武書房に勤める、
馬締光也ことまじめさん。

在籍していた営業部では、
変人と見られていたが、
新たな辞書『大渡海』を編集することとなり、
メンバーとして編集部に。

馬締はこの部署で辞書作りに没頭する。

多くの問題を乗り越え15年という歳月の末、
チームワークの結晶である『大渡海』の完成へと。

5つの章から構成されていて
それぞれ異なった人物の「大渡海」に対する
心の動きを描いている。
辞書編集に関係した人々の物語。

登場人物もそれぞれ、
自分に適した範囲内で
仕事に情熱を注いで行きます。

辞書を作るといくことの不安と希望、
そして多大な困難さ。

単語の選択基準、語釈、作例の文章、頁数、
紙質、単語の抜け落ち。
日々変化する言葉。

地味な仕事ながら、
限りのない労苦を伴う作業です。

辞書はこういうプロセスを経て、
作られたているのかと思うと
本当に大変そう!!

言葉がなければ何も始まらない
言葉の危うさ、言葉の大切さ、
言葉に対しての愛がいっぱい。

舟とは豊穣なる言葉の、
広くて深い大海をゆく舟、
編むとは、辞書の編纂。
多くの人が安心して、
長く乗ることができるいい舟を作りたい。
その思いで名付けられた『大渡海』という辞書。

これから国語辞典を手にすると
まじめさんのことを思い出すかも…

裏切りや傷つけあいなどが
全くないほのぼのとした物語、
こんな作品もまたいいものです。




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背の眼 (上)(下)  道尾 秀介

2012-06-23 | 本 ま、や行(作家)

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫) 背の眼〈下〉 (幻冬舎文庫)

小説家・道尾が、
白峠村で体験した怖い出来事。

かつて大学の友人であった、
霊現象探求所の真備に相談。

真相解明のため真備と道尾、
それに真備の助手の北見、
この3人のメンバーで、
道尾が恐怖を体験した白峠村の現場に行く。

白峠村に伝わる悲惨な一連の出来事。
児童連続失踪事件。

白峠村周辺で撮影された、
背中に二つの眼が写る写真。

「天狗伝説」、白装束の女性、不気味な音声。
なんかおどろおどろしい物語の予感が…

背中に眼、これだけでもかなりの
不気味さ、怖ろしさ。
ホラー独特の雰囲気は、
きちんと描かれています。

ミステリーであって、
しかもホラー。
でも主人公達の明るさもあって
ホラーであっても、
所々で感じる爽やかさも…

霊の共存や除霊とか憑依、
現実離れしていて
なるほどと納得するまでには、
至りませんでした。

第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。

この作品が道尾 秀介のデビュー作です。

この本を原作として、
BS日テレで ドラマ・プレミア
真備庄介霊現象探求所シリーズ 背の眼というタイトルで
テレビドラマ化されました。
録画しているので見るのが楽しみです。



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