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花ごよみ

映画、本、写真など・

贖罪 (湊 かなえ)

2011-10-14 | 本 ま、や行(作家)

贖罪 (ミステリ・フロンティア)

空気のきれいさ以外、
取り柄のない穏やかな田舎町。
そこで起こった惨たらしい事件。
少女はもう戻ることはなかった。
彼女と友人だった、
残された四人の少女たち。
現場にいたのに犯人の顔を思い出せない..

彼女たちに投げられた、
被害者の母親の怒りの言葉が
4人の少女の人生を大きく狂わせていく。

事件に関係してしまったせいで
運命を狂わせてしまう
少女達が切なくて辛い。

その少女達がそれぞれ違う立場から
事件のこと、成長してからのことを
綴ってきます。

彼女たちの生き様自体が贖罪。
ゆがんでしまった4人の運命。
溜め込んでしまった深い心の闇。

「フランス人形」
「PTA臨時総会」
「くまの兄妹」
「とつきとおか」
「償い」
「終章」
と進むにつれ
事件の全容が次第に、
明らかになってきます。

一人一人が自分の心の中を語っていく
「告白」と構成がよく似ていました。

気分が重くなる内容。
自分の行動や言葉が知らず知らず
相手を悲しませ苦しめる。
人間の愚かさ、悪意、
妖しくて暗い作品。
それでいて引き込まれる作品でした。








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暗闇の蝶 (マーティン ブース)

2011-09-15 | 本 ま、や行(作家)
暗闇の蝶 (新潮文庫)

ジョージ・クルーニー主演の映画、
「ラスト・ターゲット」の原作本。
尚、アメリカ公開時は、
「The American」というタイトル。
「暗闇の蝶 」も前回は、
「影なき紳士」というタイトルでした。
今回は「影なき紳士」の新訳書です。
一つの作品に4個もタイトルがあるとは…

映画を先に見ているので
どうしてもジョージ・クルーニーを
思い浮かべながら読んでしまいます。

映画を見て不明な部分もあったので
読んでみることにしました。

世界中を転々とし、
今はイタリアの美しい小さな田舎町で
のどかな生活を送っている、
謎に包まれた初老の男。
周囲の人達からは、
ミスター・バタフライと呼ばれていて
蝶を描く画家というのが表向きの仕事。

静かな世界に身を置きながらも、
銃器造りという人には言えない闇の仕事。
自身のことをアーティストと
自負するほどの最高クラスのガンメーカー。

主人公が淡々と心情を、
吐露していくというように
ほんとにゆっくりとストーリーが進行、
中盤までは進行はするけど展開がないのです。
何も起こりません。

神父や美しい学生娼婦との交流。
のんびりと静かに話は進んでいきつつ、
徐々に彼の過去に関係した犯罪が
明らかになっていきます。

最後の仕事を成し終えて、
引退を考えていたところ、
彼を追跡する謎の男の登場、
そのあたりからつきまとう緊張感。
そして愛する人との
破綻に至たるラストへと…

本の方では蝶を描く画家、
映画では蝶を撮る写真家、

本と映画は美しいイタリアの風景や、
人物は同じ感じで
表面的には似ていますが、
結局別物でした。

物語を大まかに見ると大体同じでも
細かい部分はかなり違っているんです。
それに異なるラストでした。

本を読む目的の不明な部分は、
解けませんでした。
とにかく映画と本は別物だったので…


映画の感想は→こちらです。




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のぼうの城 (和田竜)

2011-06-26 | 本 ま、や行(作家)


のぼうの城 上 (小学館文庫)


のぼうの城 下 (小学館文庫)

「のぼう様」と呼ばれ、
領民たちから、
愛される謎の男、成田長親。

埼玉県行田市に昔、忍城があり、
そこには
「のぼう様」と言われる城主の長男が居り、
三成に対して戦を始める。

「のぼう様」の由来は「でくのぼう」から

小さな城、忍城(おしじょう)に、
攻めてくる三成の大軍。
守るは一千にも満たない兵士。
城の臨時城主は「のぼう様」

初戦は圧勝。

次に三成は本気になり、
水攻め行うが、
長親「のぼう様」は水攻め攻略に対し、
敵中で田楽踊りをおどり、鉄砲の的になる。

忍城側の武将には、
正木丹波 柴崎和泉、酒巻靱負、甲斐姫 、
それぞれが個性たっぷりに書かれています。

対する豊臣側の武将には、
石田三成、大谷吉継、長束正家

忍城に対し豊臣側は10倍の兵、
そして非常な水攻め、
でも忍城を落とせなかった。
どうしてなのか、
その謎を解明。

長束正家がたった一人だけ、
悪人っぽい。
その他の登場人物は
結構魅力ある人物に
描かれています。

読後感はいいです。
時代小説といっても
かたぐるしい表現ではなく、 
結構読みやすくて楽しめました。

野村萬斎主演で映画化。
水攻めなどのシーンがあり、
震災の影響で上映延期です。




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深追い (横山秀夫)

2011-03-31 | 本 ま、や行(作家)

横山秀夫おなじみの警察小説。
三ツ鐘警察署が舞台。
7つの短編集になっています。

警察内部にうずまく欲望。
組織の中での葛藤。
人間としての苦悩。
サスペンスというより
人間ドラマになっています。

ラストは結構曖昧で
読者の想像力に委ねるという感じ。

主人公は全て三ツ鐘警察署員。

【深追い】
恋心から職務を逸脱した捜査。
相手は未だ美しい初恋の女。
なぜに彼女は夫亡き後も
夫のポケベルにメッセージを、
送り続けるのか。

【又聞き】
業務は鑑識写真を焼くこと。
小学生時に海で溺れ助けられた経験を持つ。
救助した大学生に浮かび上がる疑問

【引継ぎ】
盗犯検挙推進月間、
警察官だった父のノートから
犯人に至るヒントを得、
犯人捕獲を目指すが…

【訳あり】
巡査長の再就職先の奔走。
そんな折、刑事二課長の、
身辺調査を依頼され
極秘調査をする。
その結果は…

【締め出し】
犯人とにらんだ人物は因縁のある
男だった。

【仕返し】
息子はいじめられていると
悩んでいたのに…

【人ごと】
届けられた花屋の会員証から
探し出された落とし主の、
マンションの部屋は
まるで花園のよう。




WOWOWドラマW 横山秀夫サスペンスで
この小説を原作として
「深追い」「引き継ぎ」
「締め出し」「仕返し」というタイトルで、
三ツ鐘署と舞台として
1話で完結するドラマが制作されました。

「深追い」谷原章介が主人公、
「引き継ぎ」北村一輝が主人公として
すでに放映されています。

次回は「締め出し」小出恵介、
「仕返し」三浦友和と続きます。

この主人公達4人は
全て同じ警察署に勤務していて、
三ツ鐘署を中心に交錯して、
まるで連続ドラマのように
なっています。

WOWOWドラマ、俳優陣も豪華で
結構気に入っています。




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まほろ駅前多田便利軒 (三浦 しをん)

2011-01-10 | 本 ま、や行(作家)

東京のはずれにあるまほろ市。
その駅前で主人公である多田啓介は、
便利屋を営業。

仕事の内容は、ペットあずかり、
塾の送迎、納屋の整理など…。

その便利屋に、高校時代のクラスメートである
行天春彦という名の男が住み着いた。

主人公の便利屋多田と、
何となく外見からしても、
へんてこりんな男、行天、
このコンビが、
引き起こすエピソードの数々。
それを解決していく過程において
表出した悲哀さ、面白さ、
交わらない心の方向性、
なのにどこか思いやる心が、
見え隠れする不思議な二人。

他の登場人物も憎めない人達。
面白く読めました。

でも内容は軽くはなく、
色んなところで立ち止まり、
考えてしまいます。

行天を見る多田の目、
多田を見る行天の目、
哀れみと軽蔑は、
視点を変えて見ると
同じようなもの、
多田、行天、どちらも過去に、
心に痛手を負いながら
同じく孤独で空虚感を抱える二人。

誰とも交わらないのが、
無事でやすらかなことと思い、
おびえながら日常を過ごしていた多田、
そんな彼の心が、
失ったものは戻っては来なくても、
形を変え、姿を変え、
幸福は再生して、何度でも訪れる、
と意識するようになってくる。

幸福は再生する。
ラストの多田のこの言葉が、
印象に残りました。
最後は温かい心になりました。

読み終えてから、
映画化の話を、知りました。
キャスティングを見てびっくり!
多田=瑛太、行天=松田龍平
もっと中年のくたびれた、
おじさんを思い浮かべながら、
本を読んでいました。







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桜田門外ノ変[上 下](吉村 昭)

2010-10-11 | 本 ま、や行(作家)

この本を原作にした映画が、
10月16日に公開ということなので、
以前に買ってあった[桜田門外ノ変上と下]を
読みました。

上巻は、井伊大老の外交政策、
安政の大獄という弾圧、
斉昭への処罰などによって
水戸藩が、徐々に追い込まれていく様が、
描かれていて、
あまり起伏のない展開。

それに、人がたくさん出てきて
名前がなかなか覚えられなくて…。
頭の中で整理できない状態。
だから読み始めるとすぐ、
眠くなってしまう有様。

読み終わるのに、かなりの日数を、
費やしました。
かなりしんどかったです。
内容もあまり頭に入っていません。

やっと上巻を読了したのに、
まだ下巻が残っている…。
ため息が出ました。

ところが桜田門外の変時の、
最高権力者、井伊直弼を、
討ってからの下巻はおもしろくて…
なんと,こちらは1日で、
一気に読み終えました。
えらい違い!

安政の大獄を行い、
水戸藩と対立した、
彦根藩主、井伊直弼を、
江戸城桜田門外で斬った水戸浪士に対して、
追求の手を緩めることのない幕府側。

桜田門の襲撃シーンはかなりリアル。

事を終えてからは、
計画していたことが、
うまくはかどらなくて、
逃げる逃げる水戸浪士。

あまり知らなかった水戸浪士達の、
悲惨な逃亡劇です。

逃亡者となった水戸の脱藩士。
彼等の側からの物語を、丁寧に描き、
淡々とした筆致ながらも、
緊迫感、スリルもあって
上巻のように眠くなりませんでした。

主役は関鉄之介という水戸浪士。
関鉄之介を映画では
大沢たかおが演じます。

生瀬勝久演じる、
桜田門外の変の首謀者、
高橋 多一郎。 
彼の潜伏地は大阪の生国魂神社。
そこから四天王寺に逃げ込み、
その地において自刃。
お墓が四天王寺にあると言うことです。
よく行く所なのに、
気づきませんでした。

映画は見に行くつもり、
その前に試写会、
当たっていないかな…。



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悪人[上][下] (吉田 修一)

2010-08-29 | 本 ま、や行(作家)
 

新聞で連載されていた頃、
独特な雰囲気の挿絵と、
重苦しい内容が気になり
時々、読んでいました。

読んだことさえすっかり忘れていたところ、
映画化されると知り
文庫本を手に入れました。

そこで以前、不完全ながらも
読んでいたことがあるのを
思い出したのです。

「悪人」は誰?
登場人物の誰もが弱さを持っています。
そして誰もが人間として悪とは
いいきれない一面をも
持っている。

主人公は祐一。
祐一と光代
出会ってしまった二人。

この二人の愛だけは
本物と思っていただけに
ラストの光代の心の到達点には
むなしさを感じました。

祐一の心が不憫です。

自分から進んで悪人になっていく
可愛そうです。

光代は自分自身の孤独からの脱出に、
祐一を巻き添えにしたような感じも
少し頭をよぎりました。

悪人というより、
自分だけ悪人を装って
周囲の人達をガードする。

祐一の行動には理不尽さと
哀しさが残ります。

舞台は九州、
表紙にも描かれてる、
二人の潜む断崖の灯台が
祐一と光代の孤独を、
象徴しているよう。

映画では祐一が妻夫木宏、
光代を深田絵里が演じます。
映画も楽しみです。









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向日葵の咲かない夏 (道尾 秀介)

2010-03-13 | 本 ま、や行(作家)
夏休み前の終業式。
欠席した級友の家を訪れた僕。
先生からの依頼を受けS君宅を訪れる。
彼は亡くなっていた。

後でもう一度、
S君の家に行くと彼の姿は消えていた。

一週間後、S君は姿を変えて現れる。
僕は妹のミカと、事件の真相を、
探るため行動を起こす。
主人公はミチオという小学生。

「このミステリーがすごい作家別投票第一位」の帯。
これはきっと面白いのだろうと、
期待して読み始めました。

この作品、猟奇的でグロさもたっぷり。

暗くて、気持ち悪くて、残酷で不快、
これだけマイナス面が揃った内容、
かなり引けます。

文字だけ見て
なるべく情景を思い浮かべないように
さらっと読みました。

先が見えないので、途中で止めたくても
止められない、
ついつい読み進めてしまいます。

謎が謎を呼ぶという感じ。
ラストまで謎だらけ。

複雑に入り組んだミステリー。
現実感のないファンタジーとも。

不気味で救いのかけらもない状態のまま
アッと驚く二転三転の展開を迎え、
ラストまで突入、といった感じです。







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虚夢 (薬丸 岳 )

2010-02-14 | 本 ま、や行(作家)
無残な通り魔的行為によって
愛する子供の命を奪われた三上夫婦。

その事件が原因となって、
離婚することになった二人。

数年を経て、加害者に、
遭遇することになった
三上と元妻、佐和子。

この事件によって、
了解不能という、
精神的な病になってしまった、
妻を想う三上。

犯罪を犯したとしても、
心神喪失、心神衰弱ということで
不起訴あるいは無罪となります。

罪を与えるか、それとも罪を与えないのかは
その時の加害者の
精神の状態にかかっています。

その時の精神状態が基準となって、
有罪、無罪の区分けが出来るなんて…。

被害者家族にとっては、
やりきれない、
深い心の傷が残ってしまう。

被害者がいれば加害者は、
当然いるはずなのに
加害者の心の病がさまたげとなって
憎むべき人の存在は、
被害者からは見ることは、
できなくなってしまう。
とても悲劇的です。

仕返しを試みたとしても
報復をする方の精神状態は正常なので
罪に問われることになります。

家族にすればあまりに不条理なこと。

佐和子の心の中は?
悲しみ、苦しみ、怒りの限界から、
見いだした解答とは?

佐和子の心情がグッと、
心につきささります。

なにも知らず味方となって、
加害者のことを想うゆき。

このゆきの心の中にも永遠に
癒されることのない、
深くて大きな傷跡が…

重い内容ですがラスト近くなっての、
思いもかけない展開に
夢中になりました。


天使のナイフ悪党
そしてこの「虚夢」
社会を凝視する、
薬丸岳氏の小説です。

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パレード (吉田 修一)

2010-02-06 | 本 ま、や行(作家)
図書館に本の返却に行ったとき、
(パレード)が書架にありました。
もうすぐ、この本を原作とした作品が、
上映されることを、
映画館で手にしたパンフレットで、
知っていました。

映画化原作本は、
図書館に行っても大抵の場合は
誰かが借りていて、
予約をしないと、
なかなか借りられないものなんです。
それが目の前にある!!
これはラッキーと思い
借りてきました。

実は吉田修一さんの作品は
以前借りて、本を中途で断念し
返却した経緯があります。
それ以来読んでいません。。

この本もやっぱり合わない感じを
もちながら読み進めていきました。
…が読んでいるうちに
だんだんいい感じになってきたのです。

以前読むのを中断した本も
読了すれば良かったのかも。

ルームシェアをしている5人、
個々の存在感などなく、
実体のないかげろうのような、
はかない人達。

悪意というものが、
蔓延する世の中、
もうほとほと悪意に飽きてしまった人達。
善人の演技をする方がずっと心地よく
生活しやすい。

話すことは話したいことではなく
周囲の調和を壊さないように
話していいことだけ話す。

そして作り話で
自分というものを自ら演じたり。

そうしないとうまくは、
生きていけない。

まるで友達というものをを
みんなで模倣しているだけ。

現代の人間というものを、
巧みに描いていて、
ひんやりとした空気感が漂う、
ある意味怖い作品でした。

映画公式サイトはこちらです。

 
林遣都くん、金髪です!!







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