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あ~、いやだ!

 以前、『デジタルデバイド』というタイトルで、何も知らない高校2年生について紹介したが、彼にまた新たな伝説がいくつか生まれたので、報告する。
 半月ほど前、彼(S)が突然私に質問した。『「シャイ」って、どういう意味?』『えっ、お前は「シャイ」の意味を知らないのか』『うん、みんながよく使うから気になってたんだけど、どういう意味なの?』今時の高校生にとって「シャイ」という言葉は必需品であり、ほぼ日本語化していると思っていた私は唖然としてしまった。『そんな当たり前の言葉の意味を知らずに、今までどうやってきたんだ』とたずねる私に、『まあ、適当に』と答えて、恥ずかしがる素振りを少しも見せない。『そんなバカな質問がとてもできない恥ずかしい気持ちを、「シャイ」って言うんだ』と私が嫌味を言っても、『なんだ、そういう意味だったのか』と、ちっともへこたれない。まるで、暖簾に腕押しだ。
 さらに、1週間前のことだ。休み時間を終えた高校生たちと授業を始めようとしたら、1人の生徒が、Sを指差して、『塾長、こいつ、9・11(セプテンバーイレブン)を知らないんですよ』『えっ』としばし絶句する私のことなどお構いなしに、Sは『だから、教えてよ、何の日なの?』と隣の席の友人にたずねる。友人が、『セプテンバーって何月か分かる?』と聞くと、『10月』。『何だって?』余りの無知ぶりに私が息も継げないでいると、『ああ、9月か、間違えた。う~ん、9月11日・・・何の日だったけ』『本当に知らないのか』と私は嘆息するばかりであったが、『選挙の日だろ』と茶々を入れる者がいた。『なんだ、選挙の日か。で、何の選挙?』・・・・彼の頭の中には、9・11のアメリカ同時テロも、衆議院総選挙も存在しないらしい。ここまで来るとさすがに一同シラーッとしてしまい、『さあ、こんなバカほっといて、勉強するぞ』と言う私の声に、みんな素直に従って勉強し始めた。これほど、現代の高校生として、超が付くほど社会的常識が無い人間も珍しい。意識が低いのは勿論だが、精神的にもものすごく幼い彼を見ていると悲しくなるが、さらに追い打ちをかける事件を昨日引き起こしてくれた。
 彼が、火・水と2日続けて塾にやって来なかった。夏休み中は、日曜日を除いて週に6日間通って来ることになっている。それまでは、旅行やら、家の用事やらで欠席することはあったが、この2日間は連絡がなかった。変だなと思って、彼の携帯に連絡したのだが、留守電になっていてつながらない。仕方がないから、まあいいかとほかっておいた。すると、木曜日の朝、私の大切な水分補給源であるペットボトルのお茶を買いに妻と出かけたら、スーパーで彼の母親にばったり出会った。何度も面談で話したことがある人なので、挨拶もそこそこに、2日続けて彼が欠席した理由を尋ねたところ、『えーっ、行ってないんですか。2日とも私が車で送って行ったんですよ。』と絶叫してしまった。彼女がちょっと落ち着いてからあれこれたずねたが、どうも塾まで来たはいいが、中には入らず、どこかへ遊びに行ってしまったようなのだ。ある大学の付属高校の生徒として、内部推薦での進学を狙っている彼にとって、夏休み明けのテストはかなり重要なものだ。それを何度も言い聞かせて、夏休み中コツコツ勉強してきたのに、直前になって塾をサボって遊びに出かけるとは・・・私はしばし開いた口がふさがらなかったが、母親の味わった衝撃は、私などとは比べ物にならないだろう。それを思うと、申し訳なさで一杯になったが、余りに精神的に幼すぎる子供を持った親の苦労が思いやられて、気の毒な気持ちにさえなった。
 その夜は、父親にひどく叱られたらしく、また私にも当然厳しく怒られるのも分かっているので、恐れをなして塾を欠席してしまった。どんな風に怒ってやろうかと楽しみにしていた私は、拍子抜けしてしまった。しかし、この一夜の冷却期間が彼にとっては奏効したようで、今夜登場した彼の顔を見ても、私はさほど怒る気にもなれず、頭を一発叩いただけで、許してやった。
 だけど、本当にいやになる。こんな何も知らず、自分の置かれた立場さえ理解できない男が、このまま大学に入り、のほほんと4年間過ごして社会に出たところで果たしてまともな仕事ができるのだろうか。あー、いやだいやだ。
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