JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

アルインコDJ-S17 ハンディ機雑感

2009年08月12日 | 移動運用装備
 山頂から運用していると、相手局に思いのほか、強く届くことがあるようで、「え、ハンディ機? 機種は?」等と聞かれることが度々あります。当局が使っているのは、何度も書いていますがアルインコのDJ-S17(47)という機種で、CQ誌で特集が組まれるようなD-STARとかAPRSとかGPSとか・・・の最新機能とは無縁な、モノバンド機です。VX-8が売れているそうですから、そんな中で、モノバンド機に興味を持つ人は少数で、「珍しいものをお使いですね」などと言われることが多いです。一般にモノバンドハンディ機は、登山とか狩猟とか防災など目的のはっきりした人が連絡用あるいは業務的?に使うケースが多いらしく、無線そのものを趣味として使う人は少ないのかもしれません。飾り気なし、愚直、地味、・・・そんな実用本位な無線機です。



 以前にも一度触れたことがあるのですが、その後の感想も含めてDJ-S17について、いくつか感じていることを書いてみます。

1)いちばん気に入っているのは、乾電池6本で4W~5W出力可能なことで、乾電池ケースも標準で附属しています。最近の充電式乾電池(ニッケル水素電池)は容量も大きく、当局が使っているエネループだと1000回も充放電できるそうです。しかも純正バッテリーに比べて数分の一の値段なので、他機種にはないメリットと感じています。将来、純正品が製造中止になっても、電池ケースが壊れない限り、長く使えます。メーカーとしては純正バッテリーを予備で買ってほしいはずですが、「乾電池でどうぞ」とは、ずいぶん良心的な会社だと思います。

2)動作する電圧の幅が7~16Vとたいへん広く、電源の自由度が大きいです。電圧の低いニッケル水素電池でも問題ありませんし、各種シールドバッテリーにも十分対応できると思います。また送信時の消費電流も5Wで公称1.4Aと低く、シンプルなモノバンド設計が生かされているのではないでしょうか。当局が145MHzを主に使うのは、相手局が多いことや飛びの面白さもさることながら、430に比べて、電池の持ちが良いからです。山移動を始めた頃はよく430も使ったのですが、電池切れが早く、その後、145を中心に運用するようになって、感覚としては1.5倍くらい持ちが良いです。また、出張などでホテルに泊まった際に、小型ACアダプター(9V2A)を使っていますが、問題なく送信できます。この無線機は、総じて、電源部に関して、よく考えられているように思います。

3)防水性が良い。山移動では必須要件です。いくら好天の日を選んでも、運用中に一時的に雨が降ってくることはありますし、ガスがかかってぬれてしまうこともあります。朝露でぬれることもあります。山と「濡れ」は切っても切れない関係で、一方、電子機器である無線機にとって「濡れ」は歓迎したくないわけです。その点で、このハンディ機は、ドシャ降りの雨でも慌てずに済みます。防水以外にも全体的に丈夫な作りが感じられます。

4)バッテリー交換がスムーズにできます。交信中に相手局から「バッテリーが切れそうなので交換します」と言われて、1分以上待たされることがあります。当局の場合は、エネループを入れた予備の乾電池ケースを手元に置いて運用しますが、DJ-S17だとバッテリーを外すのに数秒、装着するのに数秒で、10秒もあれば交換が完了します。ワンタッチです。他の機種はどうなのでしょうか。ハンディ機運用では重要な所と思いますが・・・。 



5)欠点ですが、送信出力の設定が5Wと0.8Wの2段階なので、できればその中間とさらにローパワー設定があれば便利かなと思います。そしてその切替えが独立したスイッチで素早くできるようにしてほしいです。ファンクションボタンを押して数秒の間にもう一つのボタンを押してパワーを切替える現状の方式では、いちいち変更する気持ちにならないし、運用中に誤操作して慌てたこともあります。相手局に応じて、ひんぱんにパワーを切り替えるのがハンディ機運用の秘訣なので、この点は、改善を望みたいところです。


 ときどき「はしごを作っているメーカーの無線機ね」などと言われる方もいます。たしかにI社やY社と違って、本業は建設資材の製造やレンタルですから、異色の通信機メーカーと言えるかもしれません。この会社がなぜ通信機を作るようになったのか?は、わかりませんが、実際使ってみてどうかというと、性能上の心配はまったく無用どころか、あなどれないものを感じます。常置場所でIC910を使っていますが、同じアンテナをDJ-S17につなぎ直して受信してみて、ほぼ同等の性能です。IC910では了解できるがDJ-S17だと了解できない、というようなケースはこれまでのところ特にありません。本当のことです。

 それでも、欲を言えば受信性能に関してはさらなる向上を期待したいところではあります。ハンディ機ですから送信出力はおのずと限界があります。アイコムの7Wハンディあたりが限界では? と思います。それ以上のものを作ったとしてもバッテリーが持ちません。山移動ではアンテナも限界があります。とすると、交信する能力を上げるには、受信性能をいかに改善するかにかかっていると思うのです。変な表現ですが、お互いに受信さえできれば、交信は成立しますので・・・。

 ハンディ機に何を求めるのかは、人それぞれと思いますが、多機能でレピーターやノード局まで届けばあとはインターネットでどこまでも・・・だけではないと思うのです。基本性能や操作のしやすさなどはまだまだ改善の余地があると思います。

 面白いハンディ機をつくる会社なので、一つ夢を語るとすれば、6mモノバンドハンディとか11mモノバンドハンディ、はたまた7MHzモノバンドSSBハンディ機などというのはどうでしょうか。アマチュア用ですから、アンテナは附属せず、自分で好きにどうぞ、ということで・・・。
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東吾妻山と南屏風岳移動

2009年08月12日 | 奥山 移動運用

◎東吾妻山 耶麻郡猪苗代町



 福島市側の表吾妻連峰に位置し、標高は1974メートル。東北では十指に入る高峰です。
 磐梯吾妻スカイラインを上がって、浄土平駐車場が登山口となります。他に鳥子平から登るコースもあります。どちからもゆっくり登って2時間で山頂です。樹林が続く登山道からは展望がききませんが、山頂近くから一気に眺望が広がります。山頂は広くハンディ機程度なら運用場所には困らないと思います。

 8月の第一日曜日、この日は、全国的に天気がすぐれず、西日本では大雨となっていました。仙台も弱い霧雨が降っていました。ところが、高湯を過ぎたあたりから、くんぐん明るくなり、浄土平に着いたころは、真っ青な空が広がってきました。眼下には一面の雲海。期待していなかっただけにうれしい誤算でした。

 山頂には8時30分頃到着。猪苗代町側からさっそく運用を始めました。設備はいつものDJ-S17とJ型アンテナです。この日はフィールドデーコンテストでもあり、受信してみると7エリア以外に0エリアや1エリアが聞こえていました。ちょうど0エリア村上市の移動局がCQを出していましたので、呼んでみるとこちらにビームを向けていただき、59でレポート交換。その後、145.160でCQを出してみました。はじめに盛岡市移動局から声がかかりました。お互い55。続いて、宮城、福島、山形各局と交信。さらに、栃木市移動局から55、茨城県古河市局から51のレポートをいただきました。標高が高いだけあってよく飛んでくれているようです。その後、東京板橋固定局のCQが55で入感、呼んでみたのですが、残念ながらとってもらえず、交信に至りませんでした。こちらには十分聞こえているのですが、当局の設備ではこのあたりが限界なのかもしれません。

 今回、これまでの山移動としてはもっとも高い地点からの運用でした。約3時間で29局と交信。パイルで取りきれないままになった局もかなりあったように思います。遠距離交信はありませんでしたが、北は岩手県から南は茨城県まで各局に途切れなく応答いただき、磐梯山や猪苗代湖を眺めながらの贅沢なQSOを楽しみました。


山頂


J型アンテナ


鎌沼から一切経山




◎南蔵王 南屏風岳 刈田郡七ヶ宿町

 この山は南蔵王の最奥部と言ってよく、エコーライン登山口から3時間弱、白石スキー場登山口からもほぼ同じくらいの登山となります。標高は1810メートル。南蔵王の中では、高山らしい雰囲気を持った山頂です。エコーライン側からは先日の杉ヶ峰をそのまま直進します。いったん下って芝草平の湿原を登り返すと屏風岳。そこからは緩やかで眺めの良い稜線が南屏風岳まで続いています。南蔵王縦走路のハイライト。到着した南屏風岳からの眺めも申し分ありません。ガレ場の斜面なので無線の運用場所にも困らないと思います。

 さて、8月のこの日は、南方に台風が発生しており、全国的に雨模様でしたが、宮城県は何とか持ちこたえるかどうか、といった天気予報となっていました。徐々に崩れることを予想して、暗いうちにホームを出発。午前5時にエコーライン登山口から歩き始めました。天候は曇り。稜線にはガスがかかっていました。午前7時40分山頂着。相変わらずガスで視界はありませんが、すぐに雨になる様子でもなく、さっそく無線準備にとりかかりました。今回は、ロッドアンテナで作ったツインデルタループ(バタフライアンテナ)を持ってきてみました。リグは、いつものハンディ機DJ-S17(145MHz)です。念のためSWRを計ったところ、バンド内1.1でベタ落ち。このアンテナは広帯域が特徴です。ただ、作りが素末なので、風が強かったり手荒な使い方をすると壊れそうになります。カメラ三脚に取付けて、慎重に手で回しながらの運用です。

 受信してみると、山岳移動があちらこちら聞こえています。飯豊連峰、朝日連峰局などがたぶんハンディ機とホイップアンテナだと思いますが、強力に入感していました。アンテナに指向性がありますので、当てずっぽうに向けて145.160でCQを出したところ、さっそく仙台市内の各局より応答がありました。方向を合わせると59で入感とのことでした。いったんバンド内を再度ワッチしてアンテナを回していると、「・・・/9」の交信が聞こえてきました。しばらくして呼んでみると富山県黒部市の唐松岳移動局でした。お互い55のレポート交換。相手局は標高2650メートル程の稜線から、ハンディ機5W+3エレ八木とのことでした。余力を残して終止安定した交信でした。当局にとっては、宮城県内の移動地から9エリアは初めての交信でした。高山同士であれば、ハンディ機+簡素な外部アンテナで数百キロの交信は十分可能なようです。その後も、宮城、福島、山形各局と交信いただきました。最後に、0エリア佐渡島移動局と交信できました。相手局はモービル金北山移動で、お互い59。何の障害物もないという感じの強力な信号が届いていました。

 運用中、サーっとガスが切れて、周りの山々が姿を現してくれました。急いでシャッターを切ったのですが、結局、撮れたのはガスの中の標識だけです。一瞬のことでした。撤収中にはポツポツと降り始め、その後、雨脚は強くなるばかりでした。






ツインデルタループアンテナ
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