日本裁判官ネットワークブログ
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以下のとおり,朝日新聞に裁判員制度関係の記事が続いています。いろいろ話題になることが多いですね。


「常識で判断 疑問なら無罪」 裁判員へ「法廷の心得」(11日)

 2年後に導入が迫った裁判員制度で、裁判官が裁判員に刑事裁判の鉄則を説く「基本講座」(説示)のガイドライン案が決まった。裁判員が判断するうえで最低限必要な考え方の枠組みをわかりやすく示す。裁判員制度に関する規則を作る最高裁の委員会の準備会が10日、まとめた。5月の委員会で正式に示される。

 まず、刑事裁判は検察官の証明をチェックするものとの原則を示す。

 被告人が有罪であることは、検察官が証拠に基づいて証明すべきことです。検察官が有罪であることを証明できない場合には、無罪の判断を行うことになります。(太字部分はガイドライン案)

 「事実の認定は、法廷でチェックされた証拠に基づく」という基本も確認される。

 被告人が有罪か無罪かは、法廷に提出された証拠だけに基づいて判断しなければいけません。新聞やテレビなどで見たり聞いたりしたことは、証拠ではありません。ですから、そうした情報に基づいて判断してはいけないのです。

 法廷での手続きが終わると、被告人が本当に起訴状に書いてある罪を犯したか、話し合って判断する「評議」に移る。

 裁判では、不確かなことで人を処罰することは許されませんから、証拠を検討した結果、常識に従って判断し、被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことは間違いないと考えられる場合に、有罪とすることになります。逆に、常識に従って判断し、有罪とすることについて疑問があるときは、無罪としなければなりません。

 評議で誰が何を言ったかについては秘密にするよう、念押しする部分もある。ただ、「公開の法廷で見たり聞いたりしたことや裁判員を務めての印象などは、他の方にお話しいただいても構わない」と付け加えている。

 「基本講座」は、裁判員制度が実施されれば、公判が始まる前、検察官、弁護人が同席する場で、裁判員に選ばれた人たちに説明されることになりそうだ。
この記事の関


裁判員、目立つ市民誘導 模擬制度で課題(10日)

 市民の「健全な社会常識」を裁判に反映させるために09年までに導入される裁判員制度で、プロの裁判官が、ふつうの市民から選ばれた裁判員の考えを誘導しすぎるおそれがないかという懸念が強まっている。法曹三者が、全国で行われている模擬裁判の検討を進める中で、課題として浮上してきた。近く制定される裁判員制度に関する最高裁規則にも、評議のルールが盛り込まれる見通しになっている。

 誘導のおそれが最も強いのが、被告人が有罪か無罪かなどを話し合う「評議」の場だ。

 評議は、制度導入後の「本番」では、公開法廷での公判を終えた後に非公開で行われる。ただ、現在全国で行われている模擬裁判の評議は、録画されるなどして、裁判官と検察官、弁護士の法曹三者の間での検討材料になっている。

 検討過程の中では、裁判官の間でも問題視されるケースが相次いでいる。さいたま地裁が昨年行った評議は「裁判官が自分の考えを押しつけ過ぎている」と指摘されている。「裁判官がしゃべり過ぎ、裁判員が生徒の『ゼミ』になっている」と形容される例もある。

 関係者によると、最高裁規則に盛り込むことが検討されているルールは(1)検察官と弁護人は裁判員にわかりやすい立証をする(2)裁判官は、裁判員が意見を言いやすいように努める(3)裁判官は、法廷の審理の合間などに行う中間評議の際、最終決定ではないので意見を固めなくていいなどと注意喚起する――といった内容。

 日本弁護士連合会の内部では、模擬裁判の評議を法律家や刑事法、心理学の研究者らが分析した結果などをもとに、(1)裁判官と裁判員のやりとりばかりではなく、裁判員相互の議論ができるような場を作るように心がける(2)裁判員の発言に裁判官が反論する形をなるべくとらないようにする(3)評議で裁判官同士、裁判員同士がまとまって座らない(4)裁判長の補助的な役割に終始しがちな陪席裁判官にもっと発言してもらうようにする――といった改善策が検討されている。




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以前,ネットのHP(http://www.j-j-n.com/)でPRましたが,4/8書き込みで関心を持たれた方は,是非ご購入下さい。とてもいい本です。

以下,HPからです。

 全国裁判官懇話会の世話人の一人から「自立する葦」の出版についてお知らせをしてほしいとの要請を受けました。以下は同書の帯の文章です。(伊東武是)

 1971年のいわゆる司法の危機から30年余,今裁判所は司法制度改革の中で大きな曲がり角に差し掛かっている。本書は,その30年間における現職裁判官の自主的会合の全記録である。日本の裁判所史上類を見ないこの記録は,裁判官の在り方を考える生きた教材である。

 注文先は,判例時報社
 〒112-0015
 文京区目白台1-7-12
 TEL03-3947-7375
 定価は1680円です。



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との記事が、本日の朝日新聞に掲載されています。以下のとおりですが、最後に書かれているように、「『自主・自立・独立』の精神は、組織の中に根を下ろしている」と信じたいですね。(瑞祥)

司法改革の先駆け、全国裁判官懇話会が35年の歴史に幕

 裁判官有志が集まり、あるべき司法の姿を議論してきた全国裁判官懇話会が、35年間の歴史にひっそりと幕を下ろした。裁判所の人事制度の透明化を訴え、訴訟運営をめぐる先進的な研究にも取り組んだが、世話人を務めていた石塚章夫・前新潟家裁所長(63)が3月に退官し、運営を引き継ぐ若手がいなくなった。

 全国裁判官懇話会の活動を記録した本「自立する葦(あし)」を手に、歩みを振り返る石塚章夫・前新潟家裁所長。
 懇話会は71年、「護憲」を掲げる青年法律家協会(青法協)所属の宮本康昭裁判官が最高裁に再任拒否されたことに抗議し、全国210人余の有志が東京に集まって裁判官の身分保障と独立について議論したのが始まりだ。

 司法修習生時代、判決内容についてとことん議論し、自由にものを言い合う空気に感銘して裁判官になった20代後半の石塚氏にも、懇話会は進歩的な取り組みと映り、「迷わず参加した」。

 懇話会はその後、2年に1度開かれてきた。歴代の世話人が全国2千数百人のすべての裁判官に案内状を送り、参加を呼び掛けた。取り調べの可視化や民事裁判の審理の適正・迅速を目指す「集中審理」の提唱など、司法の流れをつくる足跡を残してきた。

 「民事裁判での裁判官と弁護士の協働」「少年法改正」などを議論した。議論の成果が法律専門誌に載り、専門家の間で活動が評価される一方で、最高裁への抗議をきっかけに集まった懇話会に対する組織の風当たりは常に大きかった。石塚氏自ら、上司に「人事上の不利益」を示唆され、長く地方勤務が続いた。

 それでも活動を続けてきたのは「憲法でうたわれた『良心に従い独立してその職権を行う』という裁判官としての原点を確認できる場だ」との思いがあったからだ。

 司法改革の中、裁判所は今、自ら「開かれた裁判所」をアピールする。懇話会が主張してきた人事・再任制度の透明化も実現した。「以前より風通しが良くなったが、個々の裁判官が本当に独立し、法と良心のみに従って判断できているかどうか……」。組織の意向を自然にくみ取る裁判官が増えていないかと石塚氏は心配する。

 だが、希望も持っている。世話人の引き受け手は結局現れなかったが、最後となった昨年11月の懇話会には約70人が参加し、中には判事になりたての30代の若手もいた。

 「懇話会が訴えた『自主・自立・独立』の精神は、組織の中に根を下ろしている」と信じる。


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報道には接しませんが、最高裁のHPに、4月3日の逆転判決が掲載されています。
下記判示事項のように、患者側勝訴の仙台高裁判決を破棄差戻しにしたものです。
最近は患者側の逆転勝訴が続いていた印象が強く、もちろん事案にもよるのでしょうが、今後の傾向が注目されます。(チェックメイト)
(判示事項)
精神科病院に入院中の患者が消化管出血による吐血等の際に吐物を誤嚥して窒息死した場合において,担当医に転送義務違反等の過失があるとした原審の判断に違法があるとされた事例



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幻冬舎新書で,「裁判官の爆笑お言葉集」という本が話題になっています。裁判官ネットワーク及びその周辺でも同様です。著者は,ブログで,書名に難色を示していたことを表明しておられますが(「爆笑」という言葉に抵抗感があったようです。),この書名もあってか,広告を見ただけでどきっとするところがあり,つい読んでしまう人もいるようです。以下,asahi.comのPR情報からですが,興味を持たれて本を読まれた方は,感想などを是非コメントして下さい。

裁判官の「お言葉集」出版 厳粛判決に人間味も

 「死刑はやむを得ないが、私としては、君にはできるだけ長く生きていてもらいたい」(死刑判決を言い渡して)、「あなたのような動機で人を殺しては、社会は成り立たない」(殺人などの罪で実刑判決を言い渡して)。現実にあった裁判で裁判官が発した、ときに厳しく、またしみじみと考えさせる言葉を集めた本「裁判官の爆笑お言葉集」が出版された。

 著者の長嶺(ながみね)超輝(まさき)さん(31)は大学を卒業した98年以降、司法試験に7回挑戦。04年に「もうコリゴリ」と断念し、ライターに転じた。それでも学生のとき以来の裁判傍聴はやめられず、むしろ「厳粛な手続き中、変わった質問や被告の本音がいきなり出てくる」おもしろさにひかれた。

 裁判での裁判官の発言としては、02年、山室恵・東京地裁判事(当時)がさだまさしさんの歌「償い」の歌詞を引き合いに、被告の反省が十分でないと諭したエピソードが有名。「へえ、裁判官ってこんなことも言うの?」という思いで、新聞も調べて約100の言葉を選んだ。

 長嶺さんにとって最も印象深いのは、交通死亡事故で実刑判決を言い渡した裁判官の「被害者の命の重みは、駅前で配られるポケットティッシュのように軽い。(中略)命の尊さに法が無慈悲であってはならない」という言葉。妙なリアルさに説得力があり、「言わずにはいられなかったんだな」と感じた。

 判決以外の場面でも、「刑務所に入りたいのなら、放火のような重大な犯罪ではなくて、窃盗とか他にも……」(放火事件で、刑務所志願だったという被告に)など、思わずうなずいてしまうような言葉もある。幻冬舎から、756円。

 ■本で紹介された裁判官の言葉

・「この前から聞いてると、あなた切迫感ないんですよ」(被告が「生活費に困って」と言う割に、ぜいたくな生活ぶりが分かって)

・「多少厳しいことを言いましたが、私は、犯罪をやめさせるのが仕事ですから」(大麻取締法違反の罪に問われた被告に質問して)

・「私も中学時代、いじめに遭い、つらい思いをした。ですが、我慢して少しでも人の役に立とうとがんばってきました。あなたもつらいと思うが、厳しく自分を律してやり直して下さい」(公然わいせつ罪に問われた被告が「人間関係のストレスが動機」と話したのに対して)

・「恋愛は相手があって成立する。本当に人を愛するなら、自分の気持ちに忠実なだけではダメだ」(ストーカー規制法違反の罪に問われた被告の一審有罪判決を支持して)

・「親友は真の友ではなく、愛する妻は良い妻でなかったということですか。十分に理解はできる。しかし、殺害は許されない。分かりますね」(妻と不倫していた友人を殺したとして殺人の有罪判決を言い渡して)

・「今回は子どもの足を焼いたが、これからはわが身を焼く思いで、自分の子どもにとって何が最善か、よく考えるようにしなさい」(子への虐待を繰り返した被告に有罪判決を言い渡して)

・「私があなたに判決するのは3回目です」(覚せい剤取締法違反の有罪判決を言い渡して)



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2日の朝刊に、賛否両論の弁護士の意見が掲載されています。

賛成論(松本 誠弁護士)「注意喚起で抑止力に」被害者無視できぬ
反対論(高山俊吉弁護士)「故意犯と線引き必要」防止策作りが先決

なかなか考えさせられる論争です。(チェックメイト)


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東京新聞の今日の朝刊1面からです。
これもアメリカ連邦最高裁らしい判決でしょうか。
5対4の多数意見というところがまた興味深いです。(チェックメイト)
(記事抜粋)
 米連邦最高裁は二日、米政府に対して、自動車から排出される二酸化炭素(CO2)などの規制への取り組みが甘いとして、温暖化対策を見直すよう求める判決を下した。マサチューセッツ州など十二州と十三の環境保護団体が、現行の大気浄化法に基づいた規制を行うよう米環境保護局(EPA)を訴えていた。
 連邦最高裁判事のうち政策見直しを求めたのは五人で、ロバーツ長官ら四人が異議を唱えた。
 判決は、EPAが新車や新型トラックから排出されるCO2やその他の地球温暖化の原因となる排出物の規制を拒んでいることに、筋の通った説明がないと指摘。温暖化対策をめぐる初の最高裁判決となった。

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今日は、全国の裁判官のおそらく約3分の1が異動の発令を受けました。
4月1日付けの辞令を今朝から前任地で受け取り、新任地に向かいます。
赴任期間として、住居を移転するときは10日、住居を移転しないときは5日が保障されていますが、直ちに着任する裁判官も少なくありません。(チェックメイト)

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日本裁判官ネットワークのHP4月号 http://www.j-j-n.com/ がアップしました。

よろしくお願いします。


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