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裁判員制度下の公判調書

2007年04月30日 | Weblog
 裁判員制度の下での公判調書について,審理中のやりとりを機械で文字化する「音声認識システム」の実用化についての記事が下記のとおり,朝日新聞に掲載されています。一方,速記官制度を守る会と、電子速記研究会は,「裁判員制度を支える速記官」(http://www3.sokkikan.coco.ac/modules/wordpress/index.php?p=96)というDVDを作成されています。いずれにしても,裁判員制度の下で,裁判官と裁判員による充実した評議のために,正確でかつ迅速な調書の作成が求められており,そのために関心が高まるのはまことに結構なことのように思われます。

               記
裁判員時代の公判調書、自動化なるか 方言認識など課題

 裁判員制度のもとで、証人や被告が法廷で話した内容を翌日には裁判員たちが確認できるよう、最高裁は審理中のやりとりを機械で文字化する「音声認識システム」の実用化を進めている。2年後の制度開始までに全地裁での導入を目指すが、言葉の認識率をどう高めるかがカギ。全国一律のシステムのため各地の方言、独特の言い回しへの対応が困難という課題も浮上している。

 裁判の証人尋問や被告人質問は裁判所速記官が廷内で記録していたが、最高裁は98年に採用を停止。現在はやりとりを録音して後でテープ起こしする「録音反訳」が主流だが、調書作成に4日はかかる。

 裁判員制度の裁判では公判は原則ほぼ連日開かれる。調書のないまま連日開廷したのでは、きちんと流れをふまえて尋問・質問に臨みたい検察・弁護側や、評議に入ってから核心となる証言や供述を確認したいという裁判員・裁判官のニーズに応えられない。

 そこで最高裁はすばやい文字化を図ることにし、昨年度からNECに音声認識システムの研究開発を委託。今年度は1億3000万円を計上し、認識率の向上にかけている。完璧(かんぺき)な書面化には時間がかかるにしても「確認したい場面のチェックが優先」として、検索機能を充実させ、すぐ「頭出し」できるようにする考えだ。

 NECによると、アナウンサー調の話し言葉であれば認識率90~95%まで向上したものの、そのほかは話し手や話す状況によって数値は大きく変わる。同じ響きの他の言葉に変換される、語尾が文字化されない、などの課題は残り、最終的には人による点検が必要という。

 法廷に出てくる人にアナウンサー並みの話し方は期待できない。特に難題なのは、地方によって違う方言や言い回しの認識だ。法廷でよく使われている言葉の辞書化も進めているが、全国一律なシステムのため、各地裁の管内に特有の言葉への対応は困難という。

 大阪地裁で40年以上、速記官の経験がある石渡照代さん(63)は「記録には正確さが高く求められる。速記官は聞き取りにくければその場で聞き直しを頼むが」と機械による音声認識を懸念している。「転勤族の裁判官はともかく、法廷で方言を使うことはごく日常的。例えばヤクザの方言を使ったおどしが恐喝罪が成立するかどうかを左右するだけに、地方に合った対応が不可欠だ」と指摘する