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保釈保証金立替業者

2007年04月17日 | Weblog
毎日新聞からです。何でも事業になるものですね。どう考えたらいいのでしょうか。(瑞祥)

保釈金:立て替え業者急増 刑事被告人対象に「担保不要」
 刑事被告人が保釈の際に裁判所に納める保釈保証金を立て替える専門業者がある。多いところでは、年間で800件以上も扱っており、年々増える傾向にある。保証金の額は、裁判所が事件の内容や被告の資産状況などから決める。「被告の家計が苦しい場合に助かる」と評価する声がある一方で、「第三者である業者の介入は、制度の理念を揺るがしかねない」など疑問視する法曹関係者もいる。

 「日本保釈支援協会」(東京)は、担保や保証人は不要で500万円を上限に立て替える。裁判所への納付や協会への返金は被告の弁護人が行う。被告が逃亡するなどして保釈保証金が没収されると、家族ら申請者に損害分を支払ってもらう仕組みだ。手数料は、金額が増えるほど高く設定していて、200万円を2カ月間立て替えた場合は6万6000円、400万円では13万4000円だ。

 立て替え件数は、始めた04年度は55件だったが、05年度は314件、昨年度は823件で年々増加。被告の逃亡などで保釈保証金が没収されたケースは、昨年度3件あったという。同協会の事務局長(43)が、知人の金銭トラブルに関係して逮捕され(不起訴)、保釈保証金を用意できない人がいることを知り、「困っている人を助けたい」と始めたという。

 横浜市内には、今年2月から立て替え事業を始めた業者がある。雑誌広告やインターネットを見た被告の関係者や弁護人から申し込みがあり、3月末までに10件請け負ったという。理事(61)は「社会貢献ができる新しいビジネスと感じている」と話す。

 担当した被告数人がこうした業者を利用した弁護士は「保釈保証金が高すぎ、被告の家計が苦しい場合はとても助かる」と語り、業者の存在意義を強調する。

 しかし、こうした実態に、元裁判官の萩原昌三郎弁護士は「業者が立て替えるようになると、保釈保証金が期待している精神的な拘束力が弱まる可能性がある」と指摘し、制度面からの懸念を示す。実際、業者を利用した別の弁護士は「簡単に立て替えてもらえ、被告が自分の置かれた状況を甘く受け止めているように感じた」と話す。

 また、業者の中には、金融業を営みながら「保釈保証金の相談に乗る」などと宣伝している例もあり、「実態は貸金業と同じ」と指摘する法曹関係者もいる。

 萩原弁護士は「法曹三者で立て替え制度の必要性の有無や保釈保証金の理念を議論し、必要なら日本弁護士連合会が保証金の立て替えにかかわるべきだ」としている。【渡辺暖、宮川裕章】

 ◇保釈保証金◇ 裁判所が被告の保釈を許可した場合に、被告側に納付させる金。否認事件では、保釈の許可が出るケース自体少ないとされる。判決が出ると返還される。被告が法廷に出頭しなかったり、証拠隠滅をすると、裁判所は保釈を取り消し収監するとともに、保証金を没収することができる。金額は事件の内容や被告の資産などで決まり、100万円から300万円が多い。ライブドア事件で1審の実刑判決を受けた後の堀江貴文被告は5億円。