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との記事が、本日の朝日新聞に掲載されています。以下のとおりですが、最後に書かれているように、「『自主・自立・独立』の精神は、組織の中に根を下ろしている」と信じたいですね。(瑞祥)

司法改革の先駆け、全国裁判官懇話会が35年の歴史に幕

 裁判官有志が集まり、あるべき司法の姿を議論してきた全国裁判官懇話会が、35年間の歴史にひっそりと幕を下ろした。裁判所の人事制度の透明化を訴え、訴訟運営をめぐる先進的な研究にも取り組んだが、世話人を務めていた石塚章夫・前新潟家裁所長(63)が3月に退官し、運営を引き継ぐ若手がいなくなった。

 全国裁判官懇話会の活動を記録した本「自立する葦(あし)」を手に、歩みを振り返る石塚章夫・前新潟家裁所長。
 懇話会は71年、「護憲」を掲げる青年法律家協会(青法協)所属の宮本康昭裁判官が最高裁に再任拒否されたことに抗議し、全国210人余の有志が東京に集まって裁判官の身分保障と独立について議論したのが始まりだ。

 司法修習生時代、判決内容についてとことん議論し、自由にものを言い合う空気に感銘して裁判官になった20代後半の石塚氏にも、懇話会は進歩的な取り組みと映り、「迷わず参加した」。

 懇話会はその後、2年に1度開かれてきた。歴代の世話人が全国2千数百人のすべての裁判官に案内状を送り、参加を呼び掛けた。取り調べの可視化や民事裁判の審理の適正・迅速を目指す「集中審理」の提唱など、司法の流れをつくる足跡を残してきた。

 「民事裁判での裁判官と弁護士の協働」「少年法改正」などを議論した。議論の成果が法律専門誌に載り、専門家の間で活動が評価される一方で、最高裁への抗議をきっかけに集まった懇話会に対する組織の風当たりは常に大きかった。石塚氏自ら、上司に「人事上の不利益」を示唆され、長く地方勤務が続いた。

 それでも活動を続けてきたのは「憲法でうたわれた『良心に従い独立してその職権を行う』という裁判官としての原点を確認できる場だ」との思いがあったからだ。

 司法改革の中、裁判所は今、自ら「開かれた裁判所」をアピールする。懇話会が主張してきた人事・再任制度の透明化も実現した。「以前より風通しが良くなったが、個々の裁判官が本当に独立し、法と良心のみに従って判断できているかどうか……」。組織の意向を自然にくみ取る裁判官が増えていないかと石塚氏は心配する。

 だが、希望も持っている。世話人の引き受け手は結局現れなかったが、最後となった昨年11月の懇話会には約70人が参加し、中には判事になりたての30代の若手もいた。

 「懇話会が訴えた『自主・自立・独立』の精神は、組織の中に根を下ろしている」と信じる。


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