武将ジャパン2024/05/04
漫画『ゴールデンカムイ』の連載が始まり、主人公である杉元佐一が最初にこの言葉を発したとき、皆さんはどう感じました?
ちょっと中二病的なセリフだな……とは言いすぎかもしれませんが、「不死身」というキーワードに、若干大げさだな、という印象を抱いた方もいたのではないでしょうか。
そしてその印象は、物語が進むにつれ、消えていったはずです。
自身を奮い立たたせながら、前へ前へと突き進んでいく杉元。
それでいて平時は繊細な感覚を持ち、何事に対してもフラットで、一言でいえばカッコいい。ただし、本人の心中には拭えぬ苦しみもあり、物語を見る者には、憧れだけではない複雑な感情も抱かせるような……。
そうしたキャラクターは、一体どんな土台から醸成されていったのか。
当時の歴史的背景を踏まえながら、杉元佐一という人物を考察してみましょう。
杉元は神奈川県出身
杉元佐一は神奈川県の出身。
彼のキャラクターを考える上でこれはなかなか重要な点かもしれません。
『ゴールデンカムイ』では、出身地による要素には濃淡があり、例えば士族ルーツであるとその傾向が強くなります。
薩摩隼人であることを誇りとする鯉登音之進。
機関銃を操り河井継之助を彷彿とさせる鶴見中尉がその代表格でしょう。
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では杉元はどうか?
神奈川県というエリアは、明治の藩閥政治の色合いは薄いと言える。
たしかに鎌倉時代に幕府はありましたが、以降、政治の中心からは遠かったのが相模国。
江戸時代の徳川幕府は、江戸に近いことを考慮して大藩を置かず、小田原藩を例外に、残りは旗本の直轄地が多い土地となりました。
ただし、江戸に近いからこそ、最先端の流行は追える。
例えば神奈川県内には浮世絵を展示する施設があります。
江戸に近いだけに、同地域に住む人々は浮世絵を集めることができ、かつ保管していたことも多かった。ゆえに神奈川の古民家から浮世絵コレクションが見つかることはしばしばある。
この土地の人々は、海沿いの温暖な気候と、江戸にほど近い垢抜けた感性が特徴となってゆくのです。
そんな神奈川も、幕末以降は一気に騒がしくなります。
ご存知、黒船の来航です。
小さな漁村に過ぎなかった横浜が、瞬く間に都市として発展して外国人居住地もできる。それに伴って西洋食材を販売する店など、新たな文化が根付いてゆく。
もともと江戸に近く、洗練されていたこの地の人々は、日本の近代化最先端の目撃者となります。
横須賀には幕府による製鉄所が作られ、日本海軍の基礎もここから始まりました。
変わりゆく時代の流れを肌で感じながら生きてゆく。他の地域よりもそのスピードは早いであろう、それが神奈川県の明治時代でした。
ただし、それはあくまで都市部での話。
杉元佐一が育った場所は、小さな村でした。
エビフライやカレーライスの知識はあっても、ティーカップを正しく持つ鯉登とは異なり、洋式テーブルマナーは知りません。
まさに神奈川の庶民出身者らしい洗練度といえます。
そんな藩閥の色がつかない土地から、何にも縛られず、北海道へ来たのが杉元佐一という男でした。
結核に一家が取り憑かれてしまい…
やれ明治維新だ、文明開化だ――とは言っても、庶民がその恩恵に預かるには時間がかかります。
当時、限界のあった医療のため、本人や家族が不幸な目に遭っている人物は『ゴールデンカムイ』には度々登場します。
谷垣の妹・フミは疱瘡にかかり、感染を広げないために自ら死を選びました。
チカパシのコタンは、伝染病で壊滅。和人の持ち込んだ感染症への抵抗力が低いアイヌにとって、伝染病は恐ろしいものでした。
山口県に縁がある囚人・海賊房太郎も、一家を病で失っています。
杉元は神奈川の村に生まれています。少し大きな隣町にいけば医院があるような環境でしょうか。
しかし、よりにもよって杉元家を襲った病は、国民的な死病とされる結核でした。
当時は治療法も確立しておらず、庶民は療養所に入院する金銭的余裕もありません。
自宅療養の結果、杉元の家族は次から次へと斃れてゆきました。そして、父の死後、杉元佐一は家に火を放ち、故郷から旅立つことになります。
この結核との関係は、歴史上のある人物を彷彿とさせます。
一体だれなのか?
そのヒントは黒猫にあるのではないでしょうか。
劇中で杉元は、黒猫に「お前が家にあまりいつかないから結核になるのか」と話しかけていました。
実はアジアの伝統で、黒猫は魔除けの効果があります。
そして、黒猫と結核は、新選組の沖田総司の話が有名です。
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結核療養中の沖田が黒猫を斬ろうとしたものの叶わず、己の衰弱を思い知ったというものです。
この話は史実ではなく後世の創作と思われますが、それでもあえて黒猫と結核を組み合わせて出すことで、杉元と沖田という組み合わせを感じさせる。
命が尽きることを悟った土方歳三が、己の後継者であるかのように杉元を見つめる場面がありました。
土方が杉本の中に、沖田総司につながるものを見出したのだとすれば、ありえる設定ではないでしょうか。
杉元は反射的な攻撃を得意とする戦闘スタイルですが、これも沖田と一致しています。沖田は電光石火の突き技が得意であったと伝わります。
梅子の目を治すために
フラットで何にも縛られない杉元佐一には、金塊を探す動機づけとして梅子がいます。
故郷では、寅次と梅子という幼馴染三人組で日々を過ごしていた杉元。
梅子とは淡い相思相愛でした。杉元と駆け落ちすら願うものの、彼は応じません。
杉元が村を捨てたあと、彼女は寅次に嫁ぎます。寅次は、梅子が杉元に恋しているとわかっており、それが心の棘となっていたようです。
【日露戦争】に出征した杉元は、寅次と戦います。その寅次は【奉天会戦】の激闘で杉元をかばい戦死しました。
梅子の眼病を治療するために、渡米することを考えていた寅次。そのことができなかったのが、彼の心残りです。
杉元は寅次の指の骨を持ち、故郷に戻ります。
視力が衰えていた梅子は杉元だとはっきりとは判別できません。
彼の臭いからそうだろうか……?とは思ったものの、恐ろしい戦場で身につけた血生臭さを察し、怯えてしまいました。
このとき、杉元はもう戻れないほど己が変貌したと悟ったのです。
せめて梅子の目を治したい――親友の願いを受け継いだ杉元は、砂金採掘のため北海道へやってきました。
そんな彼が、網走監獄にいる「のっぺら坊」という囚人が隠した金塊の話を聞く。そのありかを示す刺青人皮の話を知り、金塊探しに身を投じる……。
梅子は古典的な女性といえます。
個性があまり感じられず、杉元の動機付けとして出てきた都合のいい存在にも思えてしまう。
存在感も薄く、杉元自身もそこまで思い出しているわけではありません。
梅子は杉元にとって故郷を擬人化したような存在かもしれません。杉元の好物は干し柿です。柿の木は本州ではどこにでもあり、それを干したものは庶民にとって気軽な軽食でした。
ところが北海道には柿の木がない。いわば杉元にとっては故郷の象徴のように思えます。
この好物には、のちに「塩をかけた脳みそ」も追加されます。本州の和人ならば思いつかない好物が加わったのです。
杉元は金塊探しに奔走するうちに、北海道そのものに惹かれてゆき、馴染んでゆく様がわかってきます。
そもそも杉元が金塊探しに興味を失ってしまったら、物語は終わってしまいます。そうならず、アシㇼパのために戦うようになり、樺太まで彼女を奪還するために向かう。
金塊探しが終わったあとで、杉元の動機とは結局何だったのか?が明らかになります。
梅子は眼病が回復し、再婚し、妊娠していました。嫁ぎ先では幸せに暮らしているようで、花屋の店先に立っています。
杉元が無謀なことをして金を用意せずとも、彼女は目を治すことができ、新しい人生を歩んでいました。
寅次があまり正しくない治療法の情報を得ていたか。はたまた名医が見つかったのか。
詳細はわからないものの、ともかく杉元の知らぬところで、金塊探しの動機づけそのものが消えていたのでした。
では杉本の奮闘は無駄だったのでしょうか。それとも、そもそもの病状把握がおかしかったのか、純粋な医学の進歩か。
ともあれ、梅子は故郷を擬人化したような存在でした。
アシㇼパさんと「契約」を結ぶ
梅子の治療という動機は、ヒグマに襲われた杉元をアシㇼパが救うことで上書きされたようにも思えます。
杉元はカネ。
アシㇼパは金塊争奪の過程で死んだ父の仇討ち。
杉元は殺人を厭わない。
アシㇼパは殺人は嫌だ。
大まかな枠組みを決めて、このコンビは動き出します。
二人の旅は、金塊争奪戦で争うことになる土方陣営、第七師団の紹介とともに、ゆるやかに始まります。
刺青人皮入手という目的はあるものの、実はこの過程は曖昧です。
アニメや実写版ではカットされることも多く、実は刺青人皮の暗号は全て揃えなくても解けるのではないか?という疑念はつきまとうものでした。
アシㇼパの父・ウイルクと友人であったというキロランケが登場します。
キロランケは、網走監獄にいる「のっぺら坊」がウイルクであると言い出します。
一方、アシㇼパを知る謎めいた女・インカㇻマッは、ウイルクはキロランケにより殺され、「のっぺら坊」がその共犯者であると言います。
かくして網走監獄にたどりつき、「のっぺら坊」の正体を知るという目標が設定されます。
そして杉元たちが確認した「のっぺら坊」の正体は、ウイルクでした。
結果的に「のっぺら坊」はウイルクだったのです。
杉元はウイルクの口から金塊争奪戦にアシㇼパを巻き込んだ意図を聞かされました。
その直後、キロランケと尾形により、杉元とウイルクは撃たれてしまう。
ウイルクは死に、杉元は生き延びました。
そしてアシㇼパは、キロランケに連れ去られてしまう。
この折り返し地点である網走監獄で、杉元は目的が再設定されています。
・アシㇼパを取り戻す
・奪還したアシㇼパは、これ以上闘争に巻き込まない
・金塊を得たら、二百円を分け前として獲得する
かくして杉元は、いったん鶴見率いる第七師団と共闘し、樺太に向かうことになります。
キロランケと尾形を倒し、アシㇼパを奪還することでこの旅はいったん終わり、北海道へ戻るまでが「樺太編」になります。
この樺太編で、キロランケはアイヌの独立のために戦う意図をアシㇼパに教え込もうとします。
キロランケとウイルク、そしてロシア人のソフィアを紹介し、戦う意義を教えようとするのです。
杉元はこのキロランケが教えようとした意義からアシㇼパを引き離しつつ、金塊争奪戦を続行することになります。
ただし、この金塊争奪戦の終焉はあまりスッキリしないという疑問は原作終結時点で見られました。
これは鶴見たちにも言えることではあるのですが、杉元の目的において金塊争奪戦はそこまで重要でないとも思えます。
干し柿を食べても元には戻らないけれど
最終回で、梅子に金塊を渡しに来た杉元。
北海道にはない干し柿を頬張り、アシㇼパに感想を聞かれます。
かつて杉元は、アシㇼパの前で干し柿の話をしました。
日露戦争で殺し合い、傷をつけられ、傷をつけてしまった杉元に、干し柿を食べれば戻れるのか?
そうアシㇼパは問いかけ、杉元は静かに涙を流しました。杉元は梅子が自分のから死の臭いを嗅ぎ取ったことが心に刺さっていたのです。
最終回の杉元は、昔に戻らなくてよいとアシㇼパに告げます。
全部忘れず、背負ってゆくと。それに東京で食べるエビフライのような旨いものは、金がかかると。
でも、アシㇼパさんと一緒にいれば、金をかけずともうまいものが食べられる。
そんな照れ隠しのような伝え方で、杉元はアシㇼパに「故郷」へ帰ろうと言います。
家はなく、何にも縛られず、偏見もない――そんな杉元だからこその道といえました。
理想的な和人とアイヌの関係性
杉元はこの最終回へと向かうために、かなり細やかな配慮がなされていることがわかります。
杉元はアシㇼパを契約と結ぶ。そして樺太のあとは再契約しています。
かつて和人とアイヌの契約関係は、しばしば破棄されるものとして悪名高いものでした。
アイヌは文字を持たず、数もわからないという偏見が和人にはあります。
10個何かを買っても、8個分しか払わない――そうした搾取的な契約を当然のようにしてきたのです。
杉元が、アイヌであるアシㇼパとの契約を履行する姿は、誠実であることがわかります。
『ゴールデンカムイ』名物である食事の場面も、杉元の偏見のなさがわかります。
杉元はアシㇼパの差し出す料理を、変顔をしながらでも食べる。レストランでは同じテーブルに座ることも厭いません。
なにより杉元はアシㇼパの知恵に感謝の気持ちを忘れません。アシㇼパさんから習った教えのおかげで生き延びたとさんざん言います。
これは北海道の歴史を知る上で重要でしょう。
ろくに事前の知識もなく、屯田兵や開拓者として北海道にたどりついた和人たち。
彼らが苦しんでいたとき、アイヌの人々は彼らを迎え、さまざまな知恵を伝えました。
それに対して和人が感謝を十分にしてきたかどうか――そこは冷静に考えねばならないでしょう。
例えば八甲田山雪中行軍遭難事件のあと、アイヌ兵士が寒冷対策に提言をしていますが、陸軍は真摯に聞き入れたとは言い難い状況です。
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アシㇼパは杉元を思うとき、恋をしていると思える表情になります。
一方、杉元はあくまで大事な仲間であり、恋愛対象としては見ていない。
梅子への思いも割と淡白であり、かつ白石のいやらしさと比べると際立ちます。
杉元は真面目なのでしょう。
これはアイヌ女性と和人男性の関係性を考える上でも重要です。
アシㇼパは遊郭の女衒に目をつけられたことがあります。
アイヌ女性の性的搾取は、松前藩のころから悪名高いものでした。松浦武四郎は怒りを込めて、そのことを書き記しています。
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杉元がアシㇼパを性的搾取をふまえた目線で見ると、この悪しき歴史をさらに更新しかねません。
なによりアシㇼパはまだ幼い。
明治時代でも、女性として成熟する区切りとしてはおおよそのところで16前後とされます。
いくら当時でも、アシㇼパの年齢を性的に見ることは恥とされました。
伊藤博文が13の妾を持った時は、世間が呆れ返ったものです。
杉元がアシㇼパを性的にみないことは、明治の和人としてごく良識的な感覚ともいえます
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こうして色々と考えてみると、杉元佐一とは、アイヌと和人の関係性における一つの理想のようにも思えてきます。
ただし、理想的に描かれるせいか「暗い部分が欠けている」という批判もあるかもsりえません。
杉元のように、アイヌのコタンで暮らしていくことは、この後できなくなります。
確かに杉元たちはアイヌの伝統や自然を守るために、力を尽くしました。
しかし、アイヌの伝統は博物館のガラスケースの奥に展示されればよいものかどうか。どうしたって、杉元とアシㇼパの暮らしは今後変わらざるを得ません。
作品の限界は踏まえつつ、自分たちにできることは何か考えてゆけたらよいとことです。
どんなに好きで推している作品でも、批評や批判は重要です。
さらに磨きをかけて、ものごとをよくするためには、ヤスリのような意見も時には必要なものです。
さまざまな議論があってこそ、健全なファンダムとなるはずでしょう。
戦争で砕けた兵士の心を癒すこと
杉元の目標は、アシㇼパのために尽くすことが大きいものでした。
そのために頑張り抜きました。
それだけでなく、干し柿の描写からは戦後PTSDからの回復も見て取れます。
戦場で人の心が壊れてしまう――アシㇼパはアイヌの考え方に基づき、そのことを語ります。
では和人はどうだったのか。
古来より、戦争が人の心を傷つけるという詩や文学作品は残されています。
平敦盛を手にかけたことを悔やみ、出家した鎌倉武士の熊谷直実も、現代であればPTSDと認定されるでしょう。
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しかし、だからこそ、そんな心の傷を埋め合わせるための思想も作られてゆきます。
日本ならばまず仏教に救いを求め、さらに儒教道徳を身につけ、江戸時代には武士道が確立されてゆきました。
明治以降、武士だけでなく、広く日本国民がそうあるよう、教えられてきました。
ただし、いくら救いの道を用意しても、結局、心は壊れてしまうのではないか――世界的にはそう認識されるようになってゆきます。
【フランス革命】、それに続く【ナポレオン戦争】で、徴兵制が導入され、【第一次世界大戦後】を迎えて世界は恐ろしいことに気づきました。
従軍兵の精神が壊れてしまったのです。
折しも20世紀初頭は、心理学が確立されつつある時代。
鶴見中尉はこの心理学を悪用し、第七師団兵士の部下たちを縛っていると窺える描写があります。
そして【第二次世界大戦】を経て、さらに時代が下り、【ベトナム戦争】のあと、PTSDに苦しむ兵士を描いたアメリカ映画が作られるようになります。
戦場であれほど苦しんだのに、使い捨てにされた。その苦しみが故郷に戻っても癒されない。
それは描くべき、知るべきテーマでした。
一方で、日本では【アジア太平洋戦争】のあと、アメリカのように帰還兵が社会復帰を目指すことはなくなりました。
復員兵が抱える心の傷とは、アメリカ映画を通して知るものとなっていた。
日本の作品で戦争のPTSDを描いたといえるものがないわけではない。しかし、数としては多くはない。
水木しげるはじめ、戦争を描いた力作はあっても、あくまで個人の体験や感じ方に収束されている感はありました。
もちろん、そうとは気づかれなかっただけで、実際、兵士にはPTSDがあったのではないか?ということの調査がようやく始まった。
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日露戦争で傷を負った杉元のような兵士の苦しみは、さして顧みられることもないまま、歴史のなかに埋もれてしまったように思えます。
しかし、『ゴールデンカムイ』のヒットにより、状況は変わりつつある。
作品の力で彼らの存在に思いが至ったことには意義があったのではないでしょうか。
杉元の場合、彼が語る通り、役目を果たすために頑張ったこと、その自分を好きになること、美味しいものを食べること、そうして善行を素直に重ねていった結果、癒しを得たと思えます。
何かのために努力し、頑張って、その結果、自分自身をも救うこと、自分が生まれてきた役目を果たすこと――そうシンプルに突きつけてくる杉元は、作品のテーマからは外れていない、魅力的な主人公と言えるでしょう。
人として生きる上で十分大事で、シンプルな善良さがある。
杉元には魅力がたくさんあり、その中でも、根底にあるこのことがとても大事だと思える。
まっすぐな男です。
杉元みたいに生きてみたいな。読者が素直にそう思える、なかなか素晴らしい男だと改めて実感します。
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