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<ソロの時間>心詠み心を洗う五七五 コロナ禍「自分と向き合う好機」 孤独ぶつける/俳号で違う自分に/悼む気持ち客観視

2021-04-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 04/13 05:00
 五七五の十七音で心の動きや風景の美しさを表現する俳句。場所を選ばず1人で創作でき、俳句のペンネーム「俳号」を使えばいつもと違う自分にもなれる。孤独を癒やしてくれるほか、心のデトックス効果もあるようだ。
 3月下旬の昼下がり、俳句を趣味とする札幌市の村上海斗さん(22)が、市内の中島公園で1句詠む。
 ぶらんこから飛んで地球は少し狭し
 村上さんは北海学園大を卒業し4月から道内企業に就職した。「これから飛び出していく社会が狭く感じるような、大きな人間になりたい」と、高ぶる気持ちを作品に込めた。
 俳句を始めたのは高校の文芸部。大学では無理に交友関係を広げず、「むしろ孤独を俳句にぶつけてきた」と言う。短い言葉で自分の世界を編み出せることに魅力を感じ、日常のささやかな発見を作品にしてきた。仕事の傍らこれからも続けていくつもりだ。
 俳号はオンとオフを切り替える装置にもなる。
 後志管内共和町で暮らす薬剤師の男性(51)は、天田牽牛子(あまだけんごし)という俳号で活動する。仕事一色の日々に疑問を感じて30年ほど前に俳句を始めた。
 運転中に創作することが多く、視界に入る景色の鮮やかさを作品に取り込む。
 夕東風(ゆうこち)や牧(まき)の起伏を金色(こんじき)に
 この句は、近隣の温泉へ向かう道中、雪をかぶった牧場に当たる夕日を表現した。「俳句があれば仕事中の自分とは別人になれる。創作に没頭し、仕事のストレスも忘れられます」
 悲しみや苦しみを表現できるのも俳句だ。
 札幌近郊の建築士の女性(57)は、熱中症で昨年急逝した夫=享年57=を俳句にしたためた。
 青栗やをとこ爪先から昏(く)るる
 搬送先の病院で「爪先が寒い」と訴えた夫の最期を表現し、「青栗」に50代の若さで亡くなったことを重ねた。
 女性が俳句を始めたのは10年前、知人に誘われ著名な俳人の吟行(ぎんこう)に参加したのがきっかけだ。五感をフル稼働させて言葉を組み立てる作業に魅了された。
 句会では俳号・青山酔鳴(すいめい)を名乗る。関心のある北海道の歴史やアイヌ文化、動物や苦手な昆虫などを調べては、句材の幅を広げてきた。そのなかでも「俳句の効能」を感じたのが追悼句の創作という。
 「風のみを釣る父の日の考(ちち)の竿(さお)」は太公望だった亡父を詠んだ。女性は「俳句がなければ、故人を漠然と思い出す程度だったでしょう。言葉にすることで故人を悼む気持ちを客観視することもできる」と話す。
 俳句は基本的には1人で作るが、句会で作品を発表し互いに評し合って勉強したり、楽しんだりする側面もある。その句会はコロナ禍で以前のようには開けなくなっている。
 札幌の俳人・五十嵐秀彦さん(65)=俳句集団「itak(イタック)」代表=は「句会で好まれる作品を作りがちな人もいるが、自分に向き合い、自分にしかできない句を作る好機」とした上で、「どんな時でも作ることができるのが俳句。言葉に少しでも関心があれば、始めてみるといいですよ」と話している。(上田貴子)

 コロナ下をみなさんどのようにお過ごしですか。1人の時間に感じたことや新たに始めたことなど実践例を「ソロのじかん」取材班へお寄せください。ご意見も募集します。
〒060・8711(住所不要) 北海道新聞くらし報道部
ファクス 011・210・5607
メール kurashi@hokkaido-np.co.jp
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/532325

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北海道・新千歳空港にアイヌ文化を体感する音と光のインスタレーション展示

2021-04-13 | アイヌ民族関連
文化庁「CULTURE GATE to JAPAN」に参画、ARコンテンツも開始
PRTIMES 2021年4月13日 12時28分

株式会社ネイキッド(英語表記:NAKED, INC. 、 所在地:東京都渋谷区、代表:村松亮太郎)は、文化庁が主催する文化発信プロジェクト「CULTURE GATE to JAPAN」に参画し、2021年2月22日(月)より北海道・新千歳空港 国内線ターミナルビルにて、『Imagine ainu -イマジンアイヌ-』を展示しています。
ネイキッドは、これまでも新千歳空港の国際線ターミナルコンコースにて、アイヌ文化をテーマにしたアニメーション作品を展示し、アイヌの文化や歴史を発信してきました。今回、新たに文化庁が主催する文化発信プロジェクト「CULTURE GATE to JAPAN」へ参画し、アイヌを継承する人々と共にアイヌ文化の神秘的な世界と新しい魅力に出会える作品を創り出しています。
アイヌの文化や精神を伝承する“音”を体感
北海道の先住民族であるアイヌの歴史が培ってきた文化や精神は、人から人へ、様々な楽器や独特の歌声の音色にのせて口頭伝承されてきました。その口頭伝承されてきたアイヌの文化や精神を今回は、「INVISIBLE」をテーマに、立体音響とLED照明を使用し、全身で体感しながら想像する音と光のインスタレーションで表現。口頭伝承の中にある「カムイユカラ」を始め、叙事詩「ユカラ」や伝統歌でもある「ウポポ」を取り入れた物語が繰り広げられます。
更に、3月下旬からはお手持ちのスマートフォンで体験するARが登場。音と光のインスタレーションと一緒に想像することの助けになり、更にお楽しみいただけます。
広大な大地が育んだ表現豊かなアイヌの“音”を体感することで、文化や伝統だけでなく、より広くアイヌ文化の魅力を感じられます。
CULTURE GATE to JAPAN
文化庁の「令和2年度空港等におけるメディア芸術日本文化発信事業」による、新たな形の文化発信プロジェクトで、2021年2月から全国7空港と、東京国際クルーズターミナルで順次開始されています。本プロジェクトは、メディア芸術のフィールドで活躍するアーティストやクリエイターが各エリアの文化を題材にしたアート作品を展示し、日本文化の魅力を発信しています。
開催概要
作品名:Imagine ainu -イマジンアイヌ-
場所:新千歳空港 国内線旅客ターミナルビル1階到着ロビー「到着口1前」
期間:2021年2月22日(月)〜9月30日(木)
時間:施設の開館時間に準ずる
公式サイト:https://culture-gate.jp/
主催:文化庁「令和 2 年度空港等におけるメディア芸術日本文化発信事業」
制作協力:<アイヌ語翻訳・ナレーション>関根 摩耶
協力:平取町二風谷アイヌ語教室子ども部
監修:<朗読・歌唱・演奏>ウポポイ(民族共生象徴空間)
(川上 さやか、新谷 史織、上河 彩、長野 いくみ、桐田 晴華、山道 ヒビキ)
<アイヌ文様>関根 真紀
<アイヌ語>中川 裕
企画・演出・制作:NAKED, INC.
1997年に村松亮太郎が設立したクリエイティブカンパニー。"Core Creative, Total Creation, and Borderless Creativity"を理念に、映画やテレビ、MV、広告、空間演出、地方創生、教育プログラムなどジャンルを超えて手がけてきた。近年では、世界各地を繋ぐネットワーク型のアートプロジェクト「Breath / Bless Project」やAR/VR商品の開発など、オンライン・オフラインを超えた様々な体験を展開。アート、エンターテインメント、カルチャー、伝統、教育、音楽、都市、食、スポーツなど、LIFE(生活)のあらゆるSCENE(シーン)において新たな体験や価値を生み出している。
代表作は、花の体感型アート展「FLOWERS BY NAKED」、サウナのアート体験「NAKED SAUNA」、ヴァーチャルガイド「NAKED SAMURAI」、AIが生み出す音楽体験「HUMANOID DJ」、食×アートの体験型レストラン「TREE by NAKED yoyogi park」など。
■NAKED, INC. :https://naked.co.jp
■Official Instagram :@naked_inc
■Official Facebook :@NAKEDINC.official
■Official Twitter :@naked_staff
■Official YouTube :https://www.youtube.com/c/NAKEDINC
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000649.000008210.html

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地政学的な争点にもなる人種問題 白人が牛耳る制度機構、勢力バランスが変わる世界で軋み

2021-04-13 | 先住民族関連
現代ビジネス 2021.4.13(火
 白人の特権、制度的人種差別、無意識の偏見、アイデンティティー政治――。
 米国と英国では、こうした用語が政治の議論で通用するようになっている。
 しかし、人種は単なる国内問題ではない。世界の権力構造が変わりつつあるこの時代、人種的平等をめぐる論争は地政学的な闘いの一部にもなりつつある。
 購買力平価ベースの国内総生産(GDP)でランキングすると、経済規模が世界で最も大きな国は中国で、米国、インド、日本、ドイツがこれに続く。
 だが、世界で最も重要な政治機構は今日でも、1945年当時の政治経済のパワーバランスを反映している。国連安全保障理事会で拒否権を有する常任理事国は米国、ロシア、中国、英国、フランスの5カ国だ。
 これら5カ国のうち4カ国が、人口の大部分を白人が占める国であるという事実は、帝国主義の時代から引き継がれた「白人の特権」の国際的な形態を反映していると言えるだろう。
 世界の人口が約76億人で、そのうちのざっと58億人がアジアとアフリカに住んでいること考えれば、この仕組みは持続不可能に見える。
 しかし、特権を持つ常任理事国5カ国の一角に中国が名を連ねている。そしてそのことが、本当は改革を求めたい中国に歯止めをかける。
 何しろ、インドや日本が国連安保理の常任理事国になるという考えは、中国政府にとってはあまり歓迎できるものではない。
 また、ナイジェリアと南アフリカ、あるいはメキシコとブラジルなどに見られる地域的なライバル関係も、国連改革の機運の盛り上がりを鈍らせる一因になっている。
米中対立にも影響
 それにもかかわらず、今日では人種をめぐる議論が米中対立の一部になりつつある。
 新疆ウイグル自治区におけるウイグル人など少数民族の扱いに対する西側諸国の批判の高まりに業を煮やした中国政府が、米国とオーストラリアがかつて先住民族に残酷な仕打ちをしたことや、欧州列強にも植民地支配を行った歴史があることを指摘して形勢逆転を試みているからだ。
 米国で今日見られる人種間の緊張も、中国政府に有利な攻撃材料を与えている。
 中国外務省の趙立堅報道官は先日、米国とその同盟国には「中国に説教をする資格などない。あんなに多くの人々が新型コロナウイルス感染症『COVID-19』で命を落とし、ジョージ・フロイドさんのような人々が息もできずにいるのだから」とツイートした。
 またナショナリストの中国紙グローバル・タイムズ(環球時報)は、米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国が機密情報を共有する枠組み「ファイブアイズ」を「白人至上主義の枢軸」と呼んで批判する記事を掲載した。
 中国政府はもっと前向きなムードで、中国とアフリカ諸国はともに植民地主義と戦っているとの理屈を持ち出し、アフリカとの同盟構築を目指してきた。
 反植民地主義の主張は、インドの外交政策に関する議論でも使われている。
 英国の下院議員のグループが先日、インドの農民による抗議行動について議論したところ、インド政府がインド駐在の英国大使を呼び出して抗議した。
 元外務次官カンワル・シバル氏も新聞に寄稿し、英国は「植民地時代の考え方から抜け出せていない」と批判した。
インドや中国にも批判の矛先
 しかし、反人種差別の主張は一方通行ではない。
 インド人民党(BJP)政権は国内のヒンズー教徒を優遇する一方でそのツケを少数派のイスラム教徒に回していると批判されることが多い。
 中国政府を批判する人々は、新疆ウイグル自治区への同政府のアプローチについて、多数派である漢民族の文化を中国全土に押しつけようとするエスニック・ナショナリズム(民族主義)の一形態に根ざしたものだと論じている。
 また、中国は外国に住む中国系の人々を、実際の国籍とは無関係に、中国政府に一定の忠誠心を示さなければならない拡張された漢民族コミュニティーの一部として扱っているように見えることがある。
 人種間の関係をめぐって米国内が揺れているように見えるにもかかわらず、外交政策を論じる思想家のなかには、西側諸国は最終的に人種の多様性が国際問題における強みの源泉であることに気づくだろうと述べる向きもある。
 米国のシンクタンク、ニュー・アメリカを率いるアン・マリー・スローター氏は、米国の外交政策策定過程に反人種差別主義をもっと体系的に組み込むべきだと主張している。
 外交政策のエスタブリッシュメントがもし白人に牛耳られていなかったら、大国同士の競争よりも世界の公平性の問題、例えば、新型コロナワクチンの公平な分配などに注意が向かうかもしれない、とも考えている。
米国の新たな文化帝国主義に警戒
 米国は人種の平等を支持していると心の底から受け止められていたら、世界の人々の関心や支持を集める中国との争いで、本当の意味での利益を手にすることができるかもしれない。
 長期的には、多民族の米国と自民族中心的な中国とを対比して違いを示すことが目標になるだろう。
 だが、話はそれほど簡単には進みそうにない。
 それは、人種の平等についての米国の考え方を世界中に広めようとするやり方が、外国の友人を獲得する最善の方法にならないことがあるためだ。
 米国の同盟国のなかにさえ、これは米国の新しい形態の文化帝国主義ではないかとの指摘がある。
 例えばフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、集団アイデンティティーという異質なイデオロギーが米国の大学からフランスに輸入されていると指摘し、人種のアイデンティティーよりも誰もが等しく市民であることを重視するフランス自身の共和主義の伝統が踏みにじられているという苦言も呈している。
 米国と世界各地の両方で生じている人種の政治を重視する傾向は、すぐにはなくなりそうにない。
 この問題への関心はいくつかの予期せぬ出来事――ジョージ・フロイドさんの殺害や、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動への支持の盛り上がりなど――から湧き出たものではあるが、もっと深いところにある構造的な力も働いている。
 人口動態の変化と新たな富の集中が、かつて盤石に見えた権力構造を変えようとしている。
 そうしたことが起きるなかでは、人種の正義をめぐる世界的な議論は激しさを増す一方だろう。
By Gideon Rachman
© The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64895

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トルコ大統領、ウクライナ情勢仲介に意欲 ロシアをけん制する意図か 

2021-04-13 | 先住民族関連
東京新聞 2021年4月12日 19時02分
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、トルコのイスタンブールを訪れ、エルドアン大統領と会談した。ロシアがウクライナとの国境に軍を集結させるなど両国の緊張が高まっていることを受け、エルドアン氏は「平和的解決に向け、必要な支援を提供する準備がある」と述べ、和平仲介に意欲を示した。ロシアメディアが伝えた。
 エルドアン氏はまた、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合を認めない、との立場を重ねて示した。エルドアン氏はクリミア半島の先住民族「クリミア・タタール人」を民族的な近さから「同胞」と呼び、クリミア奪還を目指すゼレンスキー氏を後押しする姿勢を見せている。
 ロシアはバイデン米大統領がウクライナ支持を打ち出していることに反発、黒海周辺での軍事演習も活発化させている。一方、トルコによると、米国は軍艦2隻を今週黒海に派遣。ロシアをけん制する狙いがあるとみられる。(モスクワ支局・小柳悠志)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/97603

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コロナ入院と救急診療で人種間格差が存在 米CDC研究

2021-04-13 | アイヌ民族関連
CNN 4/13(火) 11:45
 米疾病対策センター(CDC)は12日、新型コロナウイルス感染症で入院したり救急診療を受けたりした患者の割合について、白人と非白人との間で格差があるとの研究結果を発表した。
CDCのワレンスキー所長は新型ウイルスに関するホワイトハウスでの会見で、米国内の医療格差が浮き彫りになったとの認識を示し、「格差を認めて公平なワクチン供給に尽力する必要がある」と強調した。
この日に報告された研究2件のうち、1件では昨年3~12月に新型ウイルス関連で入院した患者の割合を分析。人種的、民族的少数者は、白人より入院する率が高かったことが確認された。米国内のすべての地域で、入院する患者の割合は中南米系が最も大きかった。
特に4~7月は格差が最も大きく、その後は白人の入院患者が増えるにつれて格差が縮小した。研究チームはこれについて、人種的少数者のリスクが低減したわけではなく、白人のリスクが増大した結果だと指摘している。
それでも12月の時点で全地域の格差は残り、特に西部の中南米系住民で入院するケースが目立っていた。このグループの感染リスクや重症化リスクが高かったためとみられる。
2件目の研究では13の州を対象として、昨年10~12月に新型ウイルス感染症で救急診療を受けた患者の対人口比を調べたところ、白人に比べて中南米系や先住民は1.7倍、黒人は1.4倍に及んだことが分かった。中南米系と先住民は全年齢層で、黒人は75歳以上で、それぞれ白人より比率が高かった。
ただこの13州は全米平均と比べて白人人口の比率が高く、全国的には一般化できない可能性もある。
研究チームはこの結果を踏まえて、非白人グループを優先した予防態勢、基礎疾患の管理、学校や職場の環境整備を進め、検査、ワクチン体制を強化することが重要だと指摘している。
ワレンスキー氏は同時に、新型ウイルスのワクチン接種を1回以上受けた人の割合も人種別に紹介した。
それによると、黒人は米人口全体に占める割合が12%だが、ワクチンを打った人は8.4%。人口比率18%の中南米系も、接種者は10.7%にとどまっている。
同氏はCDCの対応について、人種的少数者へのワクチン接種や検査を進める体制の拡充に向け、予算を増額していると説明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/217f80f79f7cd33579fa36ff700abe35d3e84fde


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震災10年、東北・福島と台湾 「日本は台湾や香港にもっと積極的に」――世界初のヘビメタ議員、台湾フレディ・リムが考える新時代の日台関係

2021-04-13 | 先住民族関連
ニッポンコム 4/13(火) 12:26
李登輝に代表される日本の教育を受けた世代が徐々に歴史となる中、新しい世代の台湾人はどんな日本観を持っているのか?立法委員(国会議員)で、メタルロックバンド「ソニック」のボーカルでもあるフレディ・リム(林昶佐)氏に、震災10年を機にオンラインで話を聞いた。
日台関係は政府間レベルでも深化を
フレディ・リム(林昶佐)氏 写真提供=立法委員林昶佐国会事務所
「短期的には、日本政府にこれまで自粛や制限されていた台湾政府との交流について、もっと踏み込んでほしいと思います。例えば米国のように政府高官が台湾を訪問するようになってほしいです。長期的には国交樹立を含めた国家関係の正常化です」
台湾の立法委員(国会議員)でミュージシャンのフレディ・リム(林昶佐)氏は、日本と台湾との関係が、政府間レベルで深まることへの希望を語った。
「日本の政治家で台湾との交流に熱心なのは主に保守層で、私たちのようなリベラルな政治思想とは必ずしも相いれない点もあります。しかし、それを超えられるベースが私たちにはあり、違うからこそ交流を進め、国家関係の正常化を進めるべきです。そうすることで、台湾も『一つの中国』の枠組みで存在そのものを置き去りにされることはなくなります」
フレディ・リムはオードリー・タン(唐鳳)行政院政務委員、コスプレイヤーとしても若者に人気の頼品よ立法委員と並び、台湾本位の政治観で、台湾社会の柔軟さや多様性を代表する若手オピニオンリーダーだ。
この世代の台湾人は、李登輝に代表される戦前の日本の教育を受けた日本語世代の孫の代に当たる。日本文化を日本語で吸収したかどうかの違いはあるが、当局が日本の情報を制限していた戒厳令下にあっても、日本文化と共に成長した。
「気が付いたらそこに日本があったというのが、私たち世代の共通する思い出だと思います。私にとっては、『キン肉マン』『ドラゴンボール』、そして「志村けん」でした。今の子どもたちも『鬼滅の刃』を見ていますので「日本」は身近にあります。想像力が豊かで面白そうな社会が広がっている、小さい頃、日本にはそんなイメージがありました。小学校の頃、家族と初めて日本に行った際、『街がきれいで、秩序があって、安全』だと思いました。おそらく多くの台湾人が、当時、こんな感想や日本観を持っていたと思います」
一方で、大人になってからは、秩序だった日本の社会は、見えざるプレッシャーも手伝って形成されたものだと考えるようになった。子どもの頃に抱いていたイメージとの間にギャップが生まれているというのだ。
「ソニックのライブ後の気楽なパーティーでも、日本人は欧米のファンとは違って行儀がいいし、私たちが喜びそうなものをプレゼントしてくれるなど気遣いが素晴らしい。でも、会話は慎重で、打ち解けた感じがしないことがあります。日常的にプレッシャーの中で生活していて自然と身に付いた態度なのかもしれません」
そして、台湾人の日本観は、かつての学びの対象から、ここ数年は友人という立場に変わっていると付け加えた。
「例えば、同性婚や先住民族のトピックなどで、台湾は日本よりも進んでいると思います。その代表例とも言えるのが、オードリー・タンでしょう。伝統的なアジア文化圏から飛び出しそうな、今の多様性を大切にする台湾社会を体現していると思います。単に台湾社会の方が、プレッシャーが小さく、新しい考え方への抵抗が少ないからかもしれません。そして、何でも日本から学ぶというより、物事によっては自分たちで解決しなければならない、今の世代には、そういう考え方が浸透しています」
日本人がなくしたものを李登輝から見いだす
フレディはアムネスティ・インターナショナルの台湾支部長を務めるなど、国際的な人権擁護活動にも積極的に関わっていることでも知られている。
「4歳からピアノを習いロックの世界に入る中で、欧米のミュージシャンが積極的に政治や社会へのメッセージを音楽にのせていることを知りました。私自身もメッセージを音楽に込め、実際の社会活動でも実践するようにしました。国民党による中華中心主義的な学校教育で培った見方から離れ、違う立場から物事を見たり接したりするようになり、徐々にそれはアムネスティ・インターナショナルでの活動にも発展していきました」
台湾主体の考えや世界的な人権擁護活動に関わる中、2004年、フレディは李登輝が自身の思想や政治観を伝える政治塾・李登輝学校に、第1期生として入校する。
「李登輝総統は既に、すでに政治の第一線からは退いていましたが、年齢からは到底想像できないほどの、知識欲の塊のでした。ある時は私が持っていたマンガに興味を示し、テクノロジー関連の話になるとITとIoTの違いやAIについて深く知ろうとする――いつも新しい情報や知識を得ようとしていました。面白いことに、その姿は私が知っている日本人とは違うものだったのです」
そして、日本人が李登輝に共鳴するのは、現代の彼らがなくしてしまったものを、知らないうちに追い求め、補っているのではないかと考えるようになった。
「日本人の李総統への礼の尽くし方や著書の引用を見るたびに、私は日本人が失ったものを補っているように感じるのです。戦後の日本人は、戦争の負い目もあって、内向きだったと思います。アジアで担うべきリーダーシップや負うべき責任について避けてきた。例えば地域の安定について、自分たちの発した言葉が、隣国からどのように取られてしまうのか、すごく気にしていた。いつも慎重で、保守的。しかし、日本は紛れもなくアジアの中で政治的にも社会的にも1、2を争う大国です。もっと地域の発展に貢献し、責任を負うべき存在です。そんな日本人が抑えていたものを、李総統の発言で補っていたのではないでしょうか」
政界進出と親友オードリー・タンとの再会
2014年、フレディにとって本格的に政治の世界へ進むきっかけとなる事件が起きる。当時の与党・国民党が中国と締結しようとしていたサービス貿易協定について、社会全体を巻き込んだ反対運動・ひまわり学生運動だ。
当初フレディは、運動の中心となっていた学生らに寄り添いサポートすることが、先輩としての役割だと思っていた。しかし、運動に深く関わるうちに、彼らの将来や生活が危機に瀕していることを強く感じたのだ。その後、運動はリーダーらが中心となって新政党「時代力量」の結党へと発展する。フレディもそれに加わり、2016年、同党から立法院選挙(国会議員選挙)に出馬して初当選を果たした。
「出馬すべきか本当に悩みました。私の選挙区は、高齢化が進む地域で、国民党のベテラン議員が地元に強固な地盤を築いていたので、選挙戦は相当厳しいものになると考えていました。ただ、ひまわり学生運動で若者をあおるだけあおり、身を引いてしまうのはいかがなものか。やるからには誰も成し遂げたことがないようなことをしたい、そう思って出馬しました。その後、考え方の相違から離党して無所属となりましたが、同じように必死になって選挙に臨み、再選を果たしました」
2020年は新型コロナウイルスの流行で、台湾の防疫対策が世界的に注目された。その中で戦略物資となったマスクを、デジタル技術を駆使して販売店の在庫状況が一目で分かる「マスクマップ」作りを主導したオードリー・タンは、日本でも注目されるようになった。
実は、フレディとオードリーは2000年頃からの親友だ。オードリーはソニックの音楽にほれ込み、フレディはオードリーの天才的な思考や映画「マトリックス」のような電脳的な未来観に夢中だった。
「若い頃は、ほぼ毎週末、お互いの家を行き来して、音楽やデジタル技術がもたらす未来の話ばかりしていました。私自身、プログラミングは彼女から習ったようなものです。今思えば空想、バカ話のたぐいだったのかもしれません。それでも本当に楽しい時間でした。
その後、私は音楽活動で、彼女はビジネスで忙しくなり、疎遠になっていましたが、2016年、オードリーが行政院(内閣)のデジタル担当の政務委員に任命されたのです。まさか国政の場で親友と再会するとは思いもしませんでした。
今年、3月下旬の台湾最大のロックフェス『大港開唱(メガポート・フェスティバル)』にもオードリーを招待しました。このコロナ禍で、世界で唯一予定通り開催される大型音楽イベントで、台湾がコロナ対策で成功していることを意味しています。世界にアピールする意味でも、シンボルとなったオードリーへの出演を依頼しました。後日、ライブアルバムとしてウェブでも公開しようと思っています」
香港問題の協力は日台関係深化のチャンス
2016年の初当選以来、フレディは立法院で外交・国防委員会に所属し、中国からの有形無形のプレッシャーと、日々対峙(たいじ)している。
「台湾政府は、一見、中国に対し非常に強硬な姿勢で臨んでいるように見られます。例えば、まだ世界が新型コロナウイルスの脅威にさらされる以前から、水際対策を徹底し、中国との往来に制限を設けました。しかし、台湾は民主国家であり社会であるため、政府の号令一つで全てできるわけではありません。国民の支持や協力があってはじめて可能で、今も続けているのです。例えば、オードリーのマスクマップもそうですが、彼女は民間で進んでいたプロジェクトを調整し、発展させたのでした。これらは市民が社会に貢献しようとする高い意識があって、初めて実現できたのです。政府と国民が一つになって中国と向き合っているのです」
民主派活動家への弾圧だけでなく、「香港国家安全維持法案」(国安法)で一国二制度が事実上崩壊したといわれる香港について、台湾では香港人の支援を進めている。そして日本も積極的に関わってほしいという。
「今や香港やウイグル、チベットの問題は国際的な関心事です。台湾では、特に香港人の移民や留学に大きく門戸を開き、自由を求める香港人がやってきています。ただ、中には最終目的地が台湾ではない人もいます。人道支援として彼らが希望する国へ向かえるようにするためにも、国際的な連携と国家間の協力関係が不可欠です。私は日本にもっと積極的に関わってほしいと思っています。また、日台関係の側面からも、関係をもう一段引き上げるチャンスだとも考えています。残念ながら、民間交流の熱量に比べ、政府間の交流は進展しているとは思えません。台湾と米国の関係が従来よりも引き上げられた今、日本はもっと積極的になっていいと思います。香港問題での協力は、は日台関係の深化にとっていい機会だと思うのです」
【Profile】
林 昶佐 Freddy LIM, Tshiong-Tso
台湾立法委員(国会議員)、ミュージシャン。1976年、台湾台北生まれ。国立台北大学卒。1995年、在学中にメタルバンド「ソニック」を結成し、日本はじめ、世界ツアーを行うなど、台湾を代表するロックバンドとして成功する。2004年、李登輝の思想を伝える李登輝学校に第1期生として入校。国際的な人権擁護活動にも力を入れ、2010年、アムネスティ・インターナショナル台湾の支部長に就任。2011年、東日本大震災では友人らと共にチャリティー募金を行い、100万元(約387万円)を寄付した。2014年、ひまわり学生運動にも参画。時代力量党の創設メンバーとして、2016年の立法院選挙(国会議員選挙)に出馬し初当選。その際、英国放送協会(BBC)から「議会に入った世界初のヘビーメタル・ミュージシャン」と紹介された。その後、同党を離党し、2019年、無所属で2期目の当選を果たす。
【Profile】
高橋 郁文 TAKAHASHI Ikutomo
ニッポンドットコム翻訳編集者。大学院でバイリンガリズムを研究後、大手メーカー、出版社などを経て、2011年より現職。台北生まれ台北育ちの台北っ子。
https://news.yahoo.co.jp/articles/be84d600a933131ca82ae68cb893092d1ace72ae




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