北海道Likers / 2021年3月31日 20時30分
近年注目度の上がっているアイヌ。2020年には「ウポポイ(民族共生象徴空間)」が白老町にオープンし、その勢いはさらに加速しそうです。そんな中、等身大の自分をさらけ出してアイヌについて発信し続ける、1人の大学生がいます。その名は関根摩耶さん。高校在学中から徐々に発信をはじめ、現在まで活躍の幅を広げています。発信するに至ったきっかけや想いについてお話を伺いました。
関根摩耶(せきね・まや)1999年生まれ。北海道平取町二風谷の出身のアイヌ。現在、慶應義塾大学に通う現役の大学生。2018年4月より始まった道南バスのアイヌ語アナウンスを務める。2018年度には、STVラジオで「アイヌ語ラジオ講座」のパーソナリティを務めた。現在、YouTubeチャンネル「しとちゃんねる」を運営するなど、多岐にわたりアイヌ文化やアイヌ語について発信している。
カッコいい大人と友人に恵まれた
北海道LikersライターFujie:活動を拝見していると、アイヌへの誇りや強い想いを感じます。そんな関根さんの考えに影響を与えた人や出来事があれば教えてください。
関根さん:一番のきっかけは地元の大人たちがみんなカッコよかったことだと思いますね。家族とか親戚とか、地域の人たちがアイヌのことを仕事にしていて。たとえば私の母の家系はみんな工芸家。母も叔父もおばあちゃんも、みんな伝統工芸士と呼ばれるような人たちで、アイヌの工芸品を作る家庭で生まれ育っているんですよ。
そういった大人たちが、いつも明るく仕事の愚痴をこぼすことなく、また「なんで自分はこんな仕事しなきゃいけないんだろう」と悩むこともなく、アイヌはどのように発展していけるかと常に前を見ている姿勢が本当にカッコいいなと。今の社会で自分の役割を見つけて、そこに対して全力投球できる人って少ないと思いますし。小さい頃から自分もそういう風になりたいという思いがありました。
大人たち以外にも、本当に人に恵まれていたと感じています。中学、高校では地元を離れても“私”を見てくれる友達に出会えました。自分が「アイヌなんだよね」と伝えても「え!かっこいいじゃん!」と言ってくれるのが嬉しくて。関根摩耶という人物を通してアイヌを知ったから、「摩耶がアイヌならアイヌはいい人だね」と思ってくれる友人たちの存在が、本当に自分の自信につながっています。
北海道LikersライターFujie:小さい頃から誇りをもっていたアイヌ文化を世の中に向けて発信しようと思ったきっかけはなんですか?
関根さん:よく周りの人たちに「アイヌのことを学びたいと思っても間口が狭い」と言われてきました。私が知っているアイヌはとても楽しい存在なのに、そんなアイヌの楽しさや生きていく自信を与えてくれる存在であるということを知る場所がないのは寂しいなと思って。それでYouTubeとか、かっこいいアイヌを知ってもらえるような活動をしてみようと思ったんです。
北海道LikersライターFujie:知ってもらう場所の1つとしてYouTubeを選んだのですね?
関根さん:何をやるかということはYouTube以外にもいろいろと考えたんですが、何よりもアイヌに一番足りないのは発信力だと思いました。いろんな素晴らしい文化や価値観、手仕事の工芸品や文様、音楽、それに歌も。たくさん持っていながらそれを発信する媒体があまりにも少ないなと感じていたんです。
そんなとき、友人たちと食事をしながらアイヌ語を勉強する、ちょっとした勉強会を開いたら「アイヌって面白いね」「なんでこうなんだろう」と、いろんな人が興味・関心をもってくれました。
アイヌの話となると差別の歴史など暗い話になることが多いですが、友人たちは腫れものに触れる感じではなくて、ストレートに興味を向けてくれたんですよね。これぐらい素直にアイヌについてコミュニケーションを取れる場所があってもいいのかなと思って、友人たちと話してYouTubeをはじめることにしました。
面白おかしい“YouTuber”というよりは、ただいろんな人が知る機会があればいいなという思いでやっています。そのうえで、私のチャンネルが、アイヌの食や文化、言語といったいろんな引き出しのあるものになっていけばいいなと思っています。
北海道LikersライターFujie:アイヌについての発信をはじめてから関根さんご自身が変わったと思うことや気づいたことはありますか?
関根さん:元々アイヌのことを知ってほしいという感情はかなり小さい頃から持っていました。でも、今までは自分中心だったなと思います。発信をはじめてから自分自身が周りのことを知らないことに気づいて。たとえばの問題や在日朝鮮人の問題など、もっと日本にある多くの文化や価値観を勉強したいと思っています。
あとは発信することで自分もアイヌのことを学ぶことができました。今まではなんとなく血縁でアイヌという認識だけでしたが、言語や文化を学べば学ぶほど「アイヌって深い」と感じ、自分や先祖に自信を持てるようになったと思います。アイヌの考え方は民族関係なしに誰もが持っていてもいい価値観であり、今だからこそ見つめなおすべきことかもしれないと考えるようになりました。
北海道LikersライターFujie:関根さんが考える、今後アイヌが進むべき道はどういったものでしょう?
関根さん:アイヌは文字を持たない民族です。口承文化だからこそのユーモアがたくさん残っていて。消えてしまえばそれっきりですが、せっかく今残っているのであれば私がアイヌとして伝えていきたいです。
また、アイヌだけではなく日本中にはいろんな文化がありますよね。地方の方言もその1つです。日本の先住民族アイヌとして、アイヌから日本中の文化保全、多文化共生に貢献できたらと思っています。
さらに言うと、もっと海外からのアイヌへの評価を高めていきたいと思っています。日本は外部評価が大事にされる国でもあると思うので「アイヌってかっこいいよね!」と言われるようになれば、アイヌというのがアイヌだけの誇りではなくて、北海道民の誇りになりえて、それがもっと広がれば日本の誇りになるんじゃないかと考えています。最近では、YouTubeに海外からコメントをいただくことも多く、うれしく思っています。
北海道LikersライターFujie:関根さんご自身はどのような未来予想図を?
関根さん:摩耶かっけえ!って思われたいのと、私が死ぬときにたくさんの人が悲しんでくれるくらい、いろんな人に影響を与えられる人になれたらいいなと思っています。
――――“アイヌは楽しいもの”。インタビュー中、言葉の端々にその信念が顔をのぞかせていた。その言葉を発する関根さんの表情もまた、楽しそうであった。なんとも頼もしい関根さん……実は筆者と高校の同級生。今後の活躍を祈っております。
https://news.infoseek.co.jp/article/hokkaidolikers_35536/
近年注目度の上がっているアイヌ。2020年には「ウポポイ(民族共生象徴空間)」が白老町にオープンし、その勢いはさらに加速しそうです。そんな中、等身大の自分をさらけ出してアイヌについて発信し続ける、1人の大学生がいます。その名は関根摩耶さん。高校在学中から徐々に発信をはじめ、現在まで活躍の幅を広げています。発信するに至ったきっかけや想いについてお話を伺いました。
関根摩耶(せきね・まや)1999年生まれ。北海道平取町二風谷の出身のアイヌ。現在、慶應義塾大学に通う現役の大学生。2018年4月より始まった道南バスのアイヌ語アナウンスを務める。2018年度には、STVラジオで「アイヌ語ラジオ講座」のパーソナリティを務めた。現在、YouTubeチャンネル「しとちゃんねる」を運営するなど、多岐にわたりアイヌ文化やアイヌ語について発信している。
カッコいい大人と友人に恵まれた
北海道LikersライターFujie:活動を拝見していると、アイヌへの誇りや強い想いを感じます。そんな関根さんの考えに影響を与えた人や出来事があれば教えてください。
関根さん:一番のきっかけは地元の大人たちがみんなカッコよかったことだと思いますね。家族とか親戚とか、地域の人たちがアイヌのことを仕事にしていて。たとえば私の母の家系はみんな工芸家。母も叔父もおばあちゃんも、みんな伝統工芸士と呼ばれるような人たちで、アイヌの工芸品を作る家庭で生まれ育っているんですよ。
そういった大人たちが、いつも明るく仕事の愚痴をこぼすことなく、また「なんで自分はこんな仕事しなきゃいけないんだろう」と悩むこともなく、アイヌはどのように発展していけるかと常に前を見ている姿勢が本当にカッコいいなと。今の社会で自分の役割を見つけて、そこに対して全力投球できる人って少ないと思いますし。小さい頃から自分もそういう風になりたいという思いがありました。
大人たち以外にも、本当に人に恵まれていたと感じています。中学、高校では地元を離れても“私”を見てくれる友達に出会えました。自分が「アイヌなんだよね」と伝えても「え!かっこいいじゃん!」と言ってくれるのが嬉しくて。関根摩耶という人物を通してアイヌを知ったから、「摩耶がアイヌならアイヌはいい人だね」と思ってくれる友人たちの存在が、本当に自分の自信につながっています。
北海道LikersライターFujie:小さい頃から誇りをもっていたアイヌ文化を世の中に向けて発信しようと思ったきっかけはなんですか?
関根さん:よく周りの人たちに「アイヌのことを学びたいと思っても間口が狭い」と言われてきました。私が知っているアイヌはとても楽しい存在なのに、そんなアイヌの楽しさや生きていく自信を与えてくれる存在であるということを知る場所がないのは寂しいなと思って。それでYouTubeとか、かっこいいアイヌを知ってもらえるような活動をしてみようと思ったんです。
北海道LikersライターFujie:知ってもらう場所の1つとしてYouTubeを選んだのですね?
関根さん:何をやるかということはYouTube以外にもいろいろと考えたんですが、何よりもアイヌに一番足りないのは発信力だと思いました。いろんな素晴らしい文化や価値観、手仕事の工芸品や文様、音楽、それに歌も。たくさん持っていながらそれを発信する媒体があまりにも少ないなと感じていたんです。
そんなとき、友人たちと食事をしながらアイヌ語を勉強する、ちょっとした勉強会を開いたら「アイヌって面白いね」「なんでこうなんだろう」と、いろんな人が興味・関心をもってくれました。
アイヌの話となると差別の歴史など暗い話になることが多いですが、友人たちは腫れものに触れる感じではなくて、ストレートに興味を向けてくれたんですよね。これぐらい素直にアイヌについてコミュニケーションを取れる場所があってもいいのかなと思って、友人たちと話してYouTubeをはじめることにしました。
面白おかしい“YouTuber”というよりは、ただいろんな人が知る機会があればいいなという思いでやっています。そのうえで、私のチャンネルが、アイヌの食や文化、言語といったいろんな引き出しのあるものになっていけばいいなと思っています。
北海道LikersライターFujie:アイヌについての発信をはじめてから関根さんご自身が変わったと思うことや気づいたことはありますか?
関根さん:元々アイヌのことを知ってほしいという感情はかなり小さい頃から持っていました。でも、今までは自分中心だったなと思います。発信をはじめてから自分自身が周りのことを知らないことに気づいて。たとえばの問題や在日朝鮮人の問題など、もっと日本にある多くの文化や価値観を勉強したいと思っています。
あとは発信することで自分もアイヌのことを学ぶことができました。今まではなんとなく血縁でアイヌという認識だけでしたが、言語や文化を学べば学ぶほど「アイヌって深い」と感じ、自分や先祖に自信を持てるようになったと思います。アイヌの考え方は民族関係なしに誰もが持っていてもいい価値観であり、今だからこそ見つめなおすべきことかもしれないと考えるようになりました。
北海道LikersライターFujie:関根さんが考える、今後アイヌが進むべき道はどういったものでしょう?
関根さん:アイヌは文字を持たない民族です。口承文化だからこそのユーモアがたくさん残っていて。消えてしまえばそれっきりですが、せっかく今残っているのであれば私がアイヌとして伝えていきたいです。
また、アイヌだけではなく日本中にはいろんな文化がありますよね。地方の方言もその1つです。日本の先住民族アイヌとして、アイヌから日本中の文化保全、多文化共生に貢献できたらと思っています。
さらに言うと、もっと海外からのアイヌへの評価を高めていきたいと思っています。日本は外部評価が大事にされる国でもあると思うので「アイヌってかっこいいよね!」と言われるようになれば、アイヌというのがアイヌだけの誇りではなくて、北海道民の誇りになりえて、それがもっと広がれば日本の誇りになるんじゃないかと考えています。最近では、YouTubeに海外からコメントをいただくことも多く、うれしく思っています。
北海道LikersライターFujie:関根さんご自身はどのような未来予想図を?
関根さん:摩耶かっけえ!って思われたいのと、私が死ぬときにたくさんの人が悲しんでくれるくらい、いろんな人に影響を与えられる人になれたらいいなと思っています。
――――“アイヌは楽しいもの”。インタビュー中、言葉の端々にその信念が顔をのぞかせていた。その言葉を発する関根さんの表情もまた、楽しそうであった。なんとも頼もしい関根さん……実は筆者と高校の同級生。今後の活躍を祈っております。
https://news.infoseek.co.jp/article/hokkaidolikers_35536/