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難病の女子高生らアイヌの絵本制作「少数派の姿伝えたい」

2021-04-17 | アイヌ民族関連
産経新聞 2021.4.16 11:30

 難病や発達障害などさまざまな背景でマイノリティー(少数派)として生きる子供たちが、北海道の少数民族、アイヌの人々を紹介する絵本を制作するプロジェクトをスタートさせた。費用は今夏、クラウドファンディングで寄付を募る予定で、今秋ごろの完成を目指す。難病を抱えるリーダーの高校生は「力強く生きるマイノリティーの姿を伝え、多くの人に考えてもらう絵本にしたい」と意気込んでいる。(木ノ下めぐみ)
難病「みんなと違う」
 プロジェクトのリーダーを務める大阪府豊中市の梅花高校3年、岩見朱莉(あかり)さん(17)は、3万人に1人の割合で発症するとされる難病「骨形成不全症」とともに生きてきた。生まれつき骨が折れやすく、幼稚園時代の半分は病床で過ごした。小学校に入学してからもプールの授業には参加できず、転んで骨折、入院することもしょっちゅうだったという。
 友人に恵まれ、「嫌な思いはほとんどしなかった」。だが、教諭や友人から「骨が折れやすいからこの遊びは無理だよね」と言われ続け、小学校高学年のときに「みんなとは違うんだ」と気づいた。自身がマイノリティーだと自覚したのはこのときからだ。
 プロジェクトのきっかけは、北海道に住む自閉症スペクトラム障害(ASD)の小学3年の女児が昨年書いたアイヌに関する作文だった。岩見さんと女児は、子供の家庭学習を支援する「ぱんだの庭」(大阪府豊中市)でともにオンライン指導を受けており、岩見さんは作文を読んで深く共感。女児と話をするうちに、女児の「多くの人に本当のアイヌを知ってほしい」との願いをかなえたいと思ったという。
事情ある子供たち
 北海道が把握しているアイヌの人数は、約1万3千人(平成29年調査)。アイヌであることを理由に就職や結婚ができないなどの差別が続き、アイヌであることを隠す人もいるとされる。
 自分と同じマイノリティーであるアイヌの人たちを絵本で紹介しようと思い立った岩見さんは、「ぱんだの庭」の協力を得て、会員の子供らに参加を呼び掛けた。北海道や東京都、兵庫県、香港などから小学1年から高校3年の11人が賛同し、昨年11月、「ドリームキッズプロジェクト」を発足させた。
 メンバーには難病や障害、外国籍などさまざまな背景があり、中には新型コロナウイルスに感染したことをきっかけに、学校に行けなくなった子も。「多数派から一転、マイノリティーになることは誰にでも起こり得る。偏見や差別で苦しみ続ける人もいる」と岩見さん。「少数派の人が希望を持てる社会になってほしい」。そんな思いが活動の原動力になっている。
今も続く差別
 アイヌをめぐっては、今年3月に放送された日本テレビの情報番組で、出演者が披露した謎かけの中にアイヌを差別する表現があり、放送倫理・番組向上機構(BPO)が放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。岩見さんは「正しい知識を持っていないと相手を傷つけ、大変なことになると再確認した」という。
 今月初め、岩見さんらメンバー5人は北海道白老町を訪れ、アイヌの女性に会った。アイヌの衣装や踊りなどの豊かな文化について学ぶとともに、アイヌだというだけでいじめを受けた経験も聞いた。
 「差別や偏見は無知によって生まれる。多くの人がわかりやすく読める絵本にしたい」と岩見さん。完成した絵本は中国語や英語が得意なメンバーがそれぞれの言葉に翻訳し、海外にも発信するつもりだ。
https://www.sankei.com/life/news/210416/lif2104160013-n1.html

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『アバター』『ライオン・キング』『ウォーリー』…大ヒット映画やドキュメンタリーから考える“地球”

2021-04-17 | 先住民族関連
シネマカフェ 4/16(金) 19:00

月22日は地球環境について考える、世界共通の“アースデイ”。世界規模での気候変動や環境破壊には早急な対応が必要で、近年サステナビリティ(持続可能性)が重視されている。実は、お馴染みのディズニーやピクサーのアニメーションや、ハリウッド大作からでも地球環境について関心を持ったり、意識を高めたりすることができる。
例えば、マーベルの『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』。サノスの全人類無差別半減計画という凶行によって、ニューヨークのハドソン川にクジラが戻ってくるなど、視点を変えた見方もできる。
今回は、こうしたメッセージを再認識しながら、より環境問題への理解を深めることができる「ディズニープラス」配信作品に注目した。
大自然の生き物、その厳しさを身近に感じる!
まずは、ディズニーが誇るアニメーション映画『ライオン・キング』。ライオンのシンバの冒険を通して、誰もが大自然の生き物たちを身近に感じることができ、そこには食うか食われるかの自然の掟の厳しさも。
ドキュメンタリー『ディズニーネイチャー/サバンナを生きる百獣の王』は、ライオンの群れのボス争いから子育てなどを中心に、チーターやハイエナ、ワニとの格闘など、サバンナの生き物たちのありのままの姿をとらえた、まさに『ライオン・キング』の世界を映す。
自然の厳しさという点では、ドキュメンタリーシリーズ「ホスタイル・プラネット 非情の惑星」。過酷な環境に適応しながら生き抜く動物たちの物語は、時にあまりにも残酷だが、だからこそ命の尊さが身に沁みる。ドキュメンタリーの両作品ともにダイナミックで美しい映像で観る者を魅了しながら、自然を破壊する行為の重さを体感することができるだろう。
守るべき地球の尊さと環境破壊に迫る
自然の偉大さに触れることは、環境問題に興味を抱く大きなきっかけになる。『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロンが手掛けた壮大な映像に圧倒される最新ドキュメンタリー「クジラと海洋生物たちの社会」(4月22日より日本初で配信開始)は、3年間にわたり5つの異なるクジラに密着。人間と同じような感情が読み取れるクジラたちの生態に、この美しい海を、愛おしい海洋の生き物たちを守らなければいけないという気持ちが自然と芽生えてくる。
それは環境問題に熱心に取り組んでいることでも知られるキャメロンの願いでもあるはず。そんなキャメロンによる圧巻の映像世界に魅了される『アバター』は、熱帯雨林にも似た自然豊かで神秘的な惑星パンドラで、地下資源をめぐる争いが展開。美しい惑星が破壊され、先住民族が悲嘆する姿は心が痛む。
しかし実際のところ、このような地下資源をめぐる環境破壊は世界各地で行われている事実。それは現在までに、どれほどの深刻な事態を地球にもたらしているのかは、ドキュメンタリー『パリ協定離脱に揺らぐアメリカ』で、アメリカのエネルギーの未来をめぐる国民の議論と各地域で起こる危機の調査によっていかに切迫しているかを分かりやすく伝えている。
地球の未来に警鐘を鳴らす秀作たち
このまま無為無策で突き進めば、地球はまさにピクサーのアニメーション映画『ウォーリー』の舞台のように、人間によって汚染されゴミの山となった星になってしまうかもしれない…。ゴミ処理ロボットの主人公ウォーリーのキャラクターが愛らしい映画ではあるものの、そう遠くない地球の未来に警鐘を鳴らす作り手たちのメッセージは、そこかしこに込められている。
もし、こうした映画を観て“地球のために自分には何ができるだろう”と思った方には、アカデミー賞俳優で熱心な環境活動家でもあるレオナルド・ディカプリオ製作のドキュメンタリー『地球が壊れる前に』が、最適な入門編となりそう。
ディカプリオ自身が出演し、現場に出向き、関係者に話を聞きながら環境問題について掘り下げていく本作には、元合衆国大統領バラク・オバマやローマ法王フランシスコ、電気自動車テスラで知られるアメリカの実業家イーロン・マスクらも登場。環境問題に対する多角的な視点を知ることで問題への理解が深まるだけでなく、地球上の生物や自然の壊滅的な崩壊を防ぐために、私たちが個人として何ができるのか、また社会として取ることのできる行動も紹介されている。
「クジラと海洋生物たちの社会」は4月22日(木)よりディズニープラスにて配信開始。
紹介作品はディズニープラスにて配信中。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f66b14c7061c1b469c24eb896d3aa17691815ae1

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「平取」←この地名、どう読むか分かる?

2021-04-17 | アイヌ民族関連
Jタウンネット 2021/04/16 08:00
日本全国にいくつもある「難読地名」。変わった読み方を覚えながら、その土地についても学んでいきましょう。隔日出題、クイズ形式でお届けします。
今回は北海道の難読地名。
「平取」
この地名、どう読むか分かりますか?
答え「びらとり」
北海道南部、日高地方の西端に位置する町。由来はアイヌ語の「ピラ・ウトル」(「崖の間」という意味)。早くからアイヌと和人の交易がおこなわれた土地。
https://news.goo.ne.jp/article/jtown/region/jtown-321561.html

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藤沢周平、葉室麟に続く…「時代小説の新鋭」が生まれているのをご存知ですか

2021-04-17 | アイヌ民族関連
現代ビジネス 4/16(金) 11:01
苦戦が続く「歴史・時代小説」
 かつて人気作家と言えば、歴史・時代小説の作家たちが占めていた時代がある。出版界を下支えする手堅い書き手たちもいた。ただ出版不況も相まって、残念ながら最近はセールス面では苦戦していると言わざるを得ない。
 そんな状況を打破すべく、各出版社はそれぞれに模索している。藤沢周平、逢坂剛、宮部みゆきらを輩出したオール讀物新人賞(文藝春秋『オール讀物』主催)が101回目を迎える今年から、歴史・時代小説に特化した賞にリニューアルしたのもその一例だ。最大の打開策は、人気作家の登場だからだ。
 とはいえ実はここ数年、有望な新鋭たちが腕を競い合い、なかなか面白い状況になっている。マグマの胎動はあって、待たれるのは起爆剤だ。そのいくつかの兆候も見えてきたというのが現在の歴史・時代小説の状況だ。
 そんな中、一人の書き手が登場した。砂原浩太朗である。2016年、第2回決戦! 小説大賞を受賞してデビュー。今年1月に『高瀬庄左衛門御留書』が刊行されるや、人生の機微を端正な筆致でつづった物語に多くの読者が心を射抜かれた。長編2作目にしてすでに手練れであり、文学界も大いに驚き、その存在に注目した。
 はっきり言おう。砂原浩太朗の登場は、待ち望まれていた。この作家が現れるまでの歴史・時代小説の動向を追えば、どんな潮流の中で砂原が登場してきたか、なぜ待ち望まれていたのかわかってもらえると思う。
 現在の歴史・時代小説の潮流を説明するにあたって、2000年ごろの状況から始めたいと思う。なぜかと言えば、今も燦然と輝く巨星たち、池波正太郎や司馬遼太郎、藤沢周平が次々と世を去ったのが1990年代であるからだ。彼らを失ったときには、大きな喪失感を味わったものだ。
 しかしその喪失感を埋めるべく、2000年前後に新しい書き手たちが続々と登場した。現在より一つ前の世代の活躍だ。例えば『あかね空』(01年、翌年直木賞)の山本一力であり、『利休にたずねよ』(08年、同賞)の山本兼一、『蜩ノ記』(11年、翌年同賞)の葉室麟、『汐のなごり』(08年)の北重人らである。一足早いデビューの火坂雅志、安部龍太郎、宇江佐真理、諸田玲子らもいる。彼らは旺盛に執筆し、文庫を含め手堅い売り上げが見込める作家たちである。
“ニューウエーブ歴史・時代小説”の登場
 このころセールス面で特に活況を呈していたのは、佐伯泰英に代表される文庫書下ろし時代小説と、“ニューウエーブ歴史・時代小説”だ。このうち後者は、現在の潮流に一定の影響を及ぼしているのではないかと思う。
 ニューウエーブ歴史・時代小説とは、和田竜の『のぼうの城』(07年)、『村上海賊の娘』(13年)に代表される。この兆候が表れたのは畠中恵の「しゃばけ」シリーズからだったように思う。同シリーズは第4作『おまけのこ』(05年)あたりからブレークした。『村上海賊の娘』は、単行本(上・下巻)だけでミリオンセラーを記録した。これは1980年刊の司馬遼太郎『項羽と劉邦』(上・中・下巻)以来という声もある。登場人物のキャラクターが立ち、司馬、藤沢らが描いてきた社会や人間のリアリティーよりは、思い切ったアクション、エンターテインメント性を重視している。ドラマツルギーが小説というより映画、漫画に近い。
 そんなニューウエーブ歴史・時代小説は、小説の間口をぐんと広げ、ハードルも低くすることになった。その結果、今まで本を読まない人も手に取ることとなったわけだ。一方で、書き手にも小説はここまでやっていいと自由度を知らしめた。実際に公募の小説新人賞で、応募作に歴史・時代小説が目につき始めたのは、『のぼうの城』が話題になった08年ごろからのことだ。ネットで資料検索がしやすい環境も一助となっている。
 そして今、そのころデビューした新鋭たちが活躍している。この新しい潮流が顕在化したのは、木下昌輝の『宇喜多の捨て嫁』(14年)からだと言っていい。戦国武将の梟雄、宇喜多直家の姿を連作短編で描いた同作は、思いがけない切り口、鮮やかな描写で新しい歴史・時代小説として耳目を集めた。デビュー作ながら直木賞の候補となる。これをきっかけに若い作家たちの執筆の場が広がった。
 こうした状況を生んだ理由について、言及しなくてはならないことがもう一つある。彼らの先輩で、これからの歴史・時代小説をリードすると目されていた北重人、火坂雅志、宇江佐真理、山本兼一、葉室麟らが相次いで亡くなってしまったことだ。堅調な売り上げを支えていた書き手が減ってしまった危機感は大きい。
小説の自由度が格段に上がった
 ともあれ、どんな作家がいるか少し紹介しよう。よく古代に材を取る澤田瞳子(『火定』17年など)、現代に通じる人間性を描いてみせる天野純希(『破天の剣』12年など)、多彩な題材を駆使する谷津矢車(『蔦屋』14年など)――。さらには伊達政宗に侵攻される会津の武将たちを描いた『会津執権の栄誉』(17年)でデビューした佐藤巖太郎、樺太(サハリン)で生きるアイヌに迫った『熱源』(19年)で直木賞を射止めた川越宗一も加わった。
 小説の自由度を上げ、意外な切り口、珍しい素材、思いがけない物語性、鮮やかな描写に腐心して作品を送り出している。2000年以降の歴史・時代小説の潮流は(ニューウエーブ歴史・時代小説は少々異なるが)、過去の作品を呑み込んで、それを超えようという試みが続いてきた。特にその時、作家たちの念頭にあったのは司馬遼太郎作品だ。それほどに司馬史観のくびきは大きい。司馬が提示した歴史解釈はスタンダードとして根強く残っている。超えるのは難しいが新鋭たちは切磋琢磨し、多彩な清新の風が吹いている面白味があるのが現在の状況である。しかし、先行世代の穴を量の点で埋めるにはまだ距離があった。
 そこをブレイクスルーしたのが今村翔吾の登場である。文庫書下ろし時代小説『火喰鳥―羽州ぼろ鳶組』で17年にデビュー。21年には、早くも同シリーズで吉川英治文庫賞に輝いた。単行本でも存在感を示し、『八本目の槍』(19年)で吉川英治文学新人賞、『じんかん』(20年)で山田風太郎賞を受賞した。
 この作家の最大の特徴は、これでもかというほどエンターテインメントに振っていることだ。自由度を上げた歴史・時代小説ではあるが、その枠を見事に取っ払ってみせた。この振り切った娯楽性が今、群雄割拠の現状を大いにかき回している。この影響は徐々に広まっているところだ。木下昌輝が『戀童夢幻』(20年)、『応仁悪童伝』(21年)などで娯楽性を意識した物語づくりをしている。09年に『天地明察』で新しい歴史・時代小説の息吹を先取りした冲方丁も、『剣樹抄』(19年)でこの作家が本来持っているエンターテインメント性を打ち出した。今後の展開を楽しみとするところである。
 しかも「羽州ぼろ鳶組」はシリーズとしてデビュー4年で12作を数える。もう一つの書下ろし文庫「くらまし屋稼業」シリーズも既に7作。エンターテインメントに振りきったサービス精神と、執筆量を見るにつけ、この人は『南国太平記』の直木三十五、『宮本武蔵』の吉川英治らが営々と紡いできた娯楽小説、大衆小説の系譜を正しく継いでいるのではないかと思わせる。司馬らをさらに遡って、一周回って新しさに出会った感がある。
 こうして司馬作品を軸に歴史・時代小説をながめると、エンターテインメント性に一つの活路を見出している。
藤沢の「後を継ぐ」作家たち
 ところが一方、我々の心には、人間の機微を描いた藤沢周平作品の存在も大きな位置を占めている。端正な筆致で人情、哀愁、喜び、悲しみを描いてあまりある世界。読み終えた後は心が洗われ、こんな世の中だが、なんとか生きていこうと改めて背中を押してくれる。
 2000年以降、藤沢の後を継ぐ作家と目されたのは、まず乙川優三郎である。『五年の梅』(00年、翌年山本周五郎賞)、『むこうだんばら亭』(05年)など、無駄をそぎ落とした文章で生きていることの苦しさ、悲しみをあぶり出してきた。『生きる』(02年、直木賞)は逆境の中で生きる姿を追い、重苦しいテーマに一条の光を生み出している。
 次いでこの分野では葉室麟がいた。夫婦のいちずな愛を描いた『いのちなりけり』(08年)、映画化された『蜩ノ記』(11年)に始まる「羽根藩」シリーズなどで、人間の矜持や愛情を情感豊かに紡ぎ出した。
 残念なことに、乙川は13年刊の『脊梁山脈』(大佛次郎賞)から現代小説にシフトしてしまった。葉室は先述の通りこの世を去ってしまった。
 人生の哀歓を描いてなお生きる力を与える小説は、生半可な腕では書けない。人生経験を重ね、洞察力、文章力がないと太刀打ちできないだろう。おいそれと書き手は現れない。それなのに現代はコロナウイルスが蔓延し、様々な差別意識は吹き出し、ネット社会は広がっている。この混迷の時代に、心が癒され、明日への活力を与えてくれる小説はますます必要とされている。
 もっと大きな観点に立てば、これはなにも藤沢の系譜だけの話ではない。歴史・時代小説全般に言えることだ。現代の我々はもはや経済成長など無理だと薄々感じている。地球環境の危機を訴えるスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんや、脱成長経済を提唱する大阪市立大学准教授の齋藤幸平さんらに代表されるように、今、従来の資本主義に待ったをかける議論が盛んだ。こうした議論に、別の視座を与えてくれるものの一つが歴史・時代小説である。
 苦しみ、しがらみ、制約多きこの世を生きる武士や庶民の姿を通してにじみ出てくるのは、人間の矜持、志、道、おてんとうさまのもとでのまっとうさといった人間本来の善なる姿、美しさだ。そういえば、葉室は最後に残した幕末を舞台にした数点の作品で、「仁」「道義の国」ということを盛んに書いていたことを思い出す。これからの世を問う議論に、今まで忘れられていた観点を与えてくれたのではないかと思うと、今更ながらにその不在が悔やまれる。
渇望されていた新しい書き手
写真:現代ビジネス
 そうした中で殊に藤沢の系譜の作品には名もなき下級武士、庶民の生活から日本人の美しさが匂い立つ。正調時代小説とでも言おうか。それが私たちの心をとらえて離さない。こういう作品が乙川、葉室以降、なかなかなかったのだ。だから新しい書き手が現れてくれないかと、渇望されていたのだ。
 そこに登場したのが砂原浩太朗であり、『高瀬庄左衛門御留書』なのである。干天の慈雨のように受け止められた。読むと誰かと語り合いたくなるし、読んでいない人には伝えたくなる。我知らず熱い思いを抱えて、黙っていられないのだ。相次いで書評で取り上げられ、口コミでも広まって版を重ねている。
 砂原の登場がいかに待ち望まれていたか、お分かりいただけただろうか。そこで、『高瀬庄左衛門御留書』の内容にも触れておきたい。
 舞台は神山藩(架空の藩という設定は藤沢の海坂藩、葉室の羽根藩を思い起こさせる)。主人公はしがない郡方の役人を務める高瀬庄左衛門。ある日、同じお役目につく嫡男が郷村廻りの途中で転落死した知らせが届く。息子と折り合いが悪かった嫁の志穂は実家に戻した。妻はとうにいない。たった一人の使用人も去っていき、一人暮らしが始まった。
 ところが志穂は、絵を描く庄左衛門に教えを乞うて通ってくる。息子をしのぐ俊才の立花弦之助や、二八蕎麦屋の半次らとの縁もでき、なかなか忙しい日々を送ることとなった。しかし、藩内には不穏な気配が立ち込める。郡奉行の役宅に投げ文があり、気がかりなことがあちこちで起こる中、藩を揺るがす事件に巻き込まれていく。
 それぞれの人物の造形と言い、物語を彩るエピソードや気がかりな事件が重なっていく構成と言い、すべてに妙味があって、気持ちよくあるべき場所に過不足なく収まっていながら、ストーリーは思わぬ展開を見せていく。文章は端的、なおかつしっとりと読ませる。
 読了後の余韻がすごかった。一つは庄左衛門と志穂の間に通う情愛である。そしてもう一つは、さまざまな迷いもあった人生を振り返った庄左衛門が、今の人生を受け入れる姿だ。生きることの喜び、悲しみ、あきらめも希望もすべて呑み込んだ物語は、しみじみと胸に迫る。
 『小説現代』2月号に藤沢周平の一人娘、遠藤展子さんと砂原の対談が載っている。そのリードを読むと、なんと『高瀬庄左衛門御留書』は「神山藩」シリーズの第1作らしい。藤沢の「海坂藩」シリーズ、葉室の「羽根藩」シリーズのように是非育ってほしい。そして今までの人気作家たちがそうだったように、次々と作品を生み出す腕力も期待したい。
 砂原浩太朗という新星の登場が大きな刺激となり、歴史・時代小説のジャンルがますます面白くなってきた。目が離せないのである。
内藤 麻里子(文芸ジャーナリスト)
https://news.yahoo.co.jp/articles/d7bea154fcc342e479029f4caca83081e76bbaa0?page=1

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アマゾンのエコロジカルな世界を映す記録映画『カナルタ 螺旋状の夢』公開

2021-04-17 | 先住民族関連
シネマネット 2021/04/16 20:00
『カナルタ 螺旋状の夢』
映画『カナルタ 螺旋状の夢』の劇場公開が決定。クラウドファンディングプロジェクトが5月27日までMotion Galleryで行なわれている。
『東京ドキュメンタリー映画祭2020』で上映された『カナルタ 螺旋状の夢』は、エクアドル共和国のアマゾン熱帯雨林で自給自足生活を営む先住民シュアール族の姿を捉えた長編ドキュメンタリー。同作が初監督作品となる映像作家、文化人類学者の太田光海監督は、構想に約7年をかけ、現地で1年以上の住み込み撮影を単身で行なったという。9月末から10月初旬に劇場公開予定。
クラウドファンディングプロジェクトは配給、宣伝費用のために実施。目標金額は120万円で、3,500円から25万円までの支援コースが用意されている。
今後は「エコ・自然・アート」を切り口に、同地に根付くサーフ文化とアマゾン熱帯雨林の民族文化が出会うイベントや、ギャラリーでの写真展などを企画中とのこと。
https://www.cinra.net/news/20210416-kanartafilm

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