米国大統領選はオバマ氏の圧勝で終わり、何が勝敗を分けたか分析評価され、主要メディアの記事では一定の見方が出た。大雑把に要約すると、オバマ氏の大局感と演説など個人的魅力、巧みな選挙戦略に加え、直前のリーマンショックによる金融不安が決定的な役割を果たした。
CNNの出口調査を見ると、オバマ氏は女性(56-43%)と若者(66-32%)の票で勝ったといえる。別の切り口で見ると年収5万ドル以下(60-38%)と非白人の圧倒的な支持で勝った。加えて選挙戦でインターネットの果たした役割の大きさが、今回の大統領選挙を特徴付けたと考える。
アフリカ人留学生と白人女性の子供が、上院議員をたった3年経験しただけで米国大統領に出て勝ってしまう。そして、多分これから軍事・経済などの政治のあり方を思い切り変えてしまう。こんな政治システムを持つ国は世界中どこにも無い、それが米国の強みではないかとつくづく思う。
今回は、最早旬を過ぎたテーマかもしれないが、オバマ次期米国大統領のインターネット活用について議論してみたい。来るべき衆院選でインターネットの役割を考える上で参考になるだろう。
予備選が始まると、SNS(Social Networking Service)を代表するフェースブックの創業者が会社を辞めてオバマ氏の選挙運動に参画したのは有名だが、実は彼の元にネットビジネスの優秀な人材が集まり、正にビジネスの世界でも最先端のネットワーク戦略を実行したといわれている。
話題の動画サイト「You tube」の活用は支持者を広げる有効な手段となったのはよく知られていることだ。だが、もっと支持者一人一人に響く細かいパーソナルな仕組が作られた。
例えば、支持者として携帯メールアドレスを登録すると、テレビや新聞に報じられる前の新鮮なキャンペーン情報が、最初に支持者に伝えられるシステムが出来あがった。例えば、副大統領候補の決定はCNNより先に携帯メールで支持者に伝えられたという。
このかつて無い密度の濃い情報の流れは、しかも、一方向ではなかった。例えば、争点となっている政策課題について専門家と選挙民が議論し、その中で事実が確かめられ政策として高められていく、そういう専門サイトが草の根で立ち上げられ、オバマ支持が政策に基づく力強いものになって行ったという。何か政策のWikipediaっぽい。風頼みではない、実に巧妙なやり方だ。
このプロセスを通じて、自分の1票が政治に反映できると実感した若者の支持が広がり、今まで政治に無関心だった若者の足を投票所に向けたという。それが、頭書のような若者(18-29歳)の66%がオバマ氏に投票する結果となった。多分、この多くが年収5万ドル以下の人たちの投票と重なると思われる。彼らのネットを通じた小額の献金は、前例の無い膨大な額に積みあがった。
これまでに何度か触れたように、少なくとも今までは日本のネット社会は選挙結果を左右するような勢力にはなりえていない。その中で議論されている内容は、ネット右翼などと言われるように極端になりがちで、多数の支持を受けるまでに至っていない。
今回の大統領選から読み解けるのは、米国のメインストリームの人材が積極的に参加してネット社会を構築し、そこで生まれた考えが具体的に政策に反映されるという仕組があるということだ。そこで、次代を背負う若者が政策決定のプロセスに参加し、揉まれて育っていく。10年後、20年後に日米両国の若きリーダーが顔を合わせた時どういうことになるのか。■
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