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フィリピン地滑りの原因を探る

2006-02-21 22:15:15 | ニュース

フィリピン中部のレイテ島というと太平洋戦争で敗戦をダメ押しした栗田艦隊の歴史的謎の転進を私は先ず思い出す。しかし17日朝レイテ島で発生した地滑りの規模の大きさは私の記憶のキーワードを書き換えた。

レイテ島南部の標高約1000mの山が半分崩れて麓の村にある約400戸の家屋と小学校を土砂で埋め尽くし、犠牲者は1000人以上とも言われている。フィリピンではこの1週間、豪雨による洪水の発生で南東部を中心に被害が続いており違法伐採が原因という声が上がっていた。

伐採5年後が危険

私は実家が約25年前に土砂崩れで被害を受けた経験がある。実家は山の麓の谷間に東側から蔵と母屋が並んで南向きに建てられている。その時は台風で豪雨が続き、北東の斜面が崩れ蔵に向かって土砂が流れていった。土蔵はびくともせず土砂は母屋に向かい母屋の東側を半壊させた。幸い母と祖母は西側に寝ていたので事なきを得た。

後から聞くと、土砂崩れが起こった斜面は5年くらい前に伐採されたそうで、その切り株が腐って斜面を締め安定させる役割を果たせなくなる5年後くらいが最も危険な時期だったという。伐採後檜が植林されていたがまだ斜面を安定させるほどには育っていなかった。

違法伐採が原因ではなさそう

しかし、報道を見て行くとフィリピンで違法伐採は問題になっており、2003年にも同じレイテ島で大規模な地滑りを誘発したといわれる。しかし、今回土砂崩れが起こったセントバーナード市ギンサウゴン地区では伐採があったのは30年前であり、伐採が直接原因となったか疑わしい。

1月の地滑多発の原因は異常気象

地滑り直前の10日間に200cmの大雨が降ったと報じられている。フィリピンでこの時期の豪雨と地滑りは極めて異常らしい。通常雨季は6月から12月なのに今年になっても雨が続いていた。異常気象は地球温暖化のせいかも知れない。

フィリピン当局は昨年11月からのラニーニャ(ご存知エルニーニョの太平洋版、海面温度が5ヶ月以上0.5度上昇或いは下降する現象)が影響した可能性を指摘したと報じられている。デューラム大学のペトリ教授によれば、世界全体で1月の地滑りによる死者数は通常60人なのに、今年はアジアを中心に283人が記録されているという(BBC)。

2004年台風被害の記憶

1昨年雨台風が連続して日本本土を直撃し山林被害が広がったとき、実家の近くの山の被害状況を見て回った時を思い出す。被害を受けたパターンは1種類ではないが、斜面の保水力が飽和し全体に地盤が緩くなっている中で、斜面の地下水の通り道と思われるところの木が下方に向かい列になって倒れているのが興味を引いた。

これらは強風で斜面の全ての木が横方向に倒れたパターンと異なり、地下水の通り道と思われるところの木だけが点々と倒れていた。主に樹齢30年から80年以上の檜が根元から倒れ、根は思ったより浅かった(湿気の多い山地のためと思われる)が、最も深いものは樹齢100年程度で大きな岩を抱え深さ1.5m程度はあった。

地震が引き金を引いた

地滑りが起こったときマグニチュード2.6の地震が記録されているが、山は地滑り準備完了の状態で地震は引き金を引いただけということで意見が一致しているようだ。議論は最初に戻って、30年前に伐採されココナッツが植林されたのが原因と知事の娘が指摘している。ココナッツの根は浅く横に広がっている(BBC)

しかし、雨量が多く湿度の高い山地では大木でも驚くほど根が浅い。ワシントン州のオリンピック国立公園にある温帯雨林には巨大な倒木があちこちにあるが、根が広く浅く強風に耐えられなかったと説明されていた。この時点で私は、「雨季の水分がまだ乾かないうちに、大雨が降り保水力が飽和し地盤が緩み、斜面のココナッツは余りにも根が浅くグリップが弱く、地震で軽く背中を押すと一気に山が崩れた」と推測する。■

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