かぶれの世界(新)

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私的・先見性欠如症

2007-01-15 22:56:22 | 社会・経済

状すると「甦るか日の丸電機業界」は私もその現場の末端にいたので、長期戦略の誤りなどと指摘するのはいささか後ろめたい気持ちだった。「よく言うよ」と言われると返す言葉がない。私自身が新しい潮流に接する機会があっても感度の鈍い反応をしてきた。

90年代初め頃だと思うがSジョブズ氏が「アップルの目標はソニー」と言ったことがiPODの大成功で実現されたという記事を先日見た。私は当時の彼の発言を記憶しているが、初めて聞いた時、又もやジョブズ氏がピントの外れた大風呂敷を広げたくらいにしか思わなかった。

結局のところ私は当時のパソコン・ビジネスの本流しか見てなかった。世間にはそういう例は幾らでもある。飛躍した発想だが永田町だけを見て政治を語るみたいに。同じ事を言ってもどういうパラダイムを見て語っているかによりその意味するところは異なる。

思い出すのは、78年にアナハイムで開催されたNCC(全米コンピューター会議)の展示を見学した時、創業したばかりのアップル社の展示を見た。本会場のコンベンション・センターに入れてもらえず隣のディズニーランドホテルの廊下でむき出しの机に人気のAppleⅡ等を展示していた。

当時はIBMに代表される大型計算機のアンチテーゼとしてDECDGなどのミニコンが台頭し、誰もがそのビジネスとしての潜在力に注目していた。会場の展示もメディアの扱いもメインフレーム対ミニコンの戦いがメインテーマだった。

AppleⅡを見て思ったのは玩具に毛が生えた程度で、それが20年も経たないうちに大型計算機どころかスパコンに使われている技術でさえ組み込み、今日のように家庭に入り多様な使われ方をされるなどとは思いもしなかった。私も誰が書いても同じような報告書を作ったはずだ。

直後ボストンに飛んで日々その熱気を肌で感じていた現地の人達の話を聞いても半信半疑だった。その後パソコン市場が成長し、コンサルタントの理詰めで美しくもっともらしいプレゼンテーンを何度も見聞きし徐々に理解していった。

その後も先が見えたらもっと違うやり方をしたはずの仕事を繰り返した。成功体験のある領域の近く変化に気づかなかったことがよくある。驕りと油断で目が曇っていたのか、日々の仕事に追われ鈍したのか。ジョブズ氏のような超一流の人だけが持つ先見性など期待できないにしても、半年先さえ見えなくなっていた。

ということで「甦るか・・・」は応援メッセージのつもりだ。今や岡目八目的視野の広さで見ると、日本の電機業界全体が世界の流れから取り残され相対的に地盤沈下しているのは共通する構造的な理由があり、それを克服したところに明日があるのではないかということだ。■

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