かぶれの世界(新)

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東芝の危機

2017-06-25 15:33:13 | ニュース
といっても現在の東芝の経営危機ではなく、50年近く前に売れっ子の経済評論家の三鬼陽之助氏が著したベストセラーの題名のことだ。当時東芝に就職が決まった友人に私達悪友がからかった記憶がある。しかし、その後東芝は危機を脱し日本を代表する大企業であり続けたはずだった。山手線の浜松町を降りて歩道橋を歩くと長方形の本社ビルの存在感は図抜けていた。品川の社員倶楽部の門は大名屋敷みたいだった。

私が現役の頃には東芝のパソコンは世界的なブランドだった。何度か浜松町の本社に行きその成功を目の当たりにした。ビジネス上のことだが知人も出来た。会議で知り合った人達は皆退職されたと思う。それでも、会計不正で売りに出された半導体事業の人達のことを思うと、昔の競争相手の苦境に胸が痛くなる思いだ。

多分、彼等にとってみれば今回の東芝の危機には何の責任もない「貰い事故」であり、逆に最も会社の業績に貢献して来たのにこんな仕打ちを受けるのは納得いかない、というのが多くの人達の心情ではないだろうか。会計不正が表面化してから長い時間が経過したが、この心の傷は一生癒えないだろう。

特に西田元会長はIT事業を再興させた立役者(外からはそう見えた)だけに、同じ西田氏が仕掛けたWHの買収が会計不正の発端になったと聞くたびに、裏切られたという気持ちなったと思う。一方、マスコミ報道は福島原発事故以降「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」的に、東電のあらゆる活動に対して十羽一からげで否定的になったが、東芝にも同じものを感じる。

昨今の「東芝の危機」報道にもそのような傾向がある。東芝の半導体事業は関係者の頑張りで競争力を維持し唯一日本で残った、私から言わせると凄いビジネス・ユニットなのだ。危機は彼等の失敗ではなく、他のビジネスの失敗と経営陣の企業統治問題で会社が窮地に陥っているだけなのだ。東芝本体は東証2部に降格、更に上場を維持出来るかも分からない状況だ。虎の子の半導体ビジネスを売る以外に生残れないと判断した。

仮に半導体ビジネスが報じられたスキームで買収されたとしても、新生「東芝メモリ」の経営が順調に存続するか疑問だ。激烈な世界市場で生き残るためには、1)半導体ビジネスをよく理解して的確な判断を下せるトップと、2)何兆円にもなる設備投資を継続していく資金が必須だ。今は東芝本体が生き残るための資金調達のみ注目されているが、東芝メモリが生き残るのも大変なことなのだ。そういう視点からの報道が望まれる。■
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