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驚きの米大統領選(分析その2)

2016-11-13 18:13:59 | ニュース
世界一の経済大国であり軍事大国の次期米大統領にトランプが選ばれ世界中が驚いた。内外のメディアの評論の殆どが驚き、トランプ大統領後の世界を悲観的に見ていた。彼は機を見るに敏なビジネスマンで素早く状況判断して、過激な選挙キャンペーンを現実的なものに変えて行くと期待するとの意見も数多く見られた。特に当選が判明した以降の演説やオバマ大統領との面会後のスピーチが穏当なものだったと評価されている。

だが、自称「アメリカかぶれ」の私としてはそれはアメリカではない。私の知るアメリカは誰にでも開かれた自由で民主的な国で、米国の理想で人種や性差別をしない建前は国中に行き渡っていた。私が90年代半ばに米国赴任した時、職場でPC(politically correct 政治的に正しいこと)を徹底するよう教育を受けた。米国に住み現実は必ずしもそうではないが、それだからこそPCであることの重要性を身に沁みて感じた(つまりアメリカかぶれになった)。

だが、トランプはその全てをことごとく無視し、しかもそれでも支持を受けて大統領に選出された。それが専門家ではなくアメリカ国民や世界中の普通の人達がショックを受けた最大の理由ではないだろうか。世間知らずのナイーブといわれそうだが、アメリカの理想が失われたと思ったと思う。彼は自由な民主主義というvalue(価値観)ではなく、損か得かディール(取引)で物事を決めるだろうと予測されている。それでは中ロと同じになってしまう。中ロに米国が加わって取引で動く世界になる可能性を考えるとぞっとする。我が国もフィリピンになる?

今回の大統領選で米国民は非民主主義的な戦いをしたトランプを当選させた、敗者は米国であり長期にわたり打撃を受ける恐れがあると心配する(アメリカかぶれとしては)。ファイナンシャルタイムズ(FT)は米国の退廃と衰退の始まりと決めつけた。それだけでは済まない。時に身勝手な押し付けとまで酷評された米国の介入による世界平和(パックスアメリカーナ)から、力による脅しと政治取引が横行する世界になる恐れは十分ある。

それではヒラリーはなぜ負けたのだろうか。私が2か月前に投稿した記事「民主主義・資本主義の危機(前)」で「世界は理想より経済」になり、資本主義が国民に富をもたらさなくなった、米国はより深刻だと書いた。ヒラリーはこのアメリカの現状とそれをもたらした現体制の象徴だとみなされたことを、マスコミも(私も)含めて認識していなかったというのが尤もポイントをついた敗因ではないだろうか。

前に指摘したように殆どの米マスメディアの予測は外れた。既に何故外れたか追及し「隠れトランプ支持」や「民主党支持者の投票率低下」などが指摘されている。地域ごとの特性に重みを付けて算出したモデルの見直しを行うそうだ。そのへんは米国らしい。日本のマスメディアの世論調査には新聞社の意見に傾いた結果が出て来る傾向があり、他の調査と併せて見ないと信用できない。多数の「隠れトランプ支持」(500万票といわれる)があったというが、私が知る米国人とは違う、変わったという気がする。自分の意見を誇りをもって言えないとは、ちょっと情けない変化だ。誇りも捨てたのだろうか。

最後に、選挙後の候補者や大統領の振る舞いにはアメリカらしいものを感じた。救われた気がする。トランプの勝利宣言は評価されているが、ヒラリーの敗北宣言のスピーチもトランプの下で国民に団結を求める内容で素晴らしかった。オバマ大統領が述べた様に「民主的な政権交代」をしっかりやるのが米国だ。建前としてであってもそれをきちんと守り続けていくのが偉大な国の在り様だ。それがあれば4年後に民主的な大統領を選び直せる。これが意外と簡単でない例は世界中にある。■
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