朝食後何時ものようにメールをチェックすると、フランス大統領選の結果を知らせるニュース速報が入っていた。何時ものようにCNNが最も早くサルコジの敗北宣言を3:31到着のメールで伝えていた。続いて3:45にNYタイムズ(NYT)、3:48に日経、3:58にWポスト(WP)という順にメールが来た。
その中で、私はサルコジの支持者の前で敗北宣言した言葉「民主的な選択の結果」が印象に残った。彼がメルケル独首相と主導して欧州債務危機に取り組んだ緊縮政策を国民に説得できなかったと述べ、政治活動からの引退をほのめかしたと伝えられた。
これを受けて欧州財務問題の先行き不安が再燃し、外国為替市場では円高(対ユーロ)が進行、東京証券市場では日経平均が261円安と大幅に下落した。先月の雇用統計が期待を下回り米国経済に減速感が出て来たこともあり、必ずしも欧州情勢変化だけが原因ではないが市場は安全への逃避を進めるかフランスの新政権の動きを凝視している。
オランド新大統領の公約である成長や雇用を重視する政策が国民に支持を受けた理由だが、実際に取りうる選択は限られているという報道(NYT)も見受けられる。というのは、フランスは主導して加盟国を説き財政規律を強化するEU新条約を署名しており、政権交代したからといって簡単に反古には出来ない。
仮に新大統領の公約通りに財政出動色の強い政策を実行したとすると、ECBの金融政策と齟齬を来たし、フランスの南欧化を恐れる市場から格付け下落などの手厳しい評価を受けるのは必至と見られている。先ずはドイツとの意識合わせが最優先であり、どういう折り合いをつけるか世界中の視線が集まっている。NYTの言うような100日の猶予期間はないと思う。
同時に行われたギリシャ国民も総選挙で緊縮財政にノーを突きつけた。フランスはユーロ危機対応の主導国、ギリシャは欧州経済の最小国ながら放漫財政でユーロ危機の爆心地、この月とスッポンの組合せで国民が反乱を起した意味を私は理解しかねている。ドイツ人もそう思っているかもしれない、フランス人には南欧系の無責任さを感じると。
そこで冒頭のサルコジの言葉「民主的な選択の結果」を私は思いだす。民主的といえば何でも良い訳ではない。日本の決定できない政治は民主的に選ばれた参院と衆院のネジレが直接の原因であり、そういう環境で解決策が見出せない政治家やメディア・民意が作り出した産物のように。私はサルコジの引退を仄めかす発言にそのような「苦い想い」を感じた。■