このところ世界の中で注目されていたのは中東革命動向及び欧州の信用危機と並び、米国の金融政策である第2次量的緩和(QE2)の終了とその評価、QE3はあり得るかであった。何れもその動向によっては世界経済に大きな影響を与えるものだからだ。その点では日本の政局など取るに足らないローカルな問題だと見做されている。
そのQE2の効果がどうだったかその評価について、既に内外の多くの識者の意見が公表されている。評者の視点によって見方が違うのは当然で、必ずしも一定の評価を得るまでになってないというのが私の印象だ。そこで、私の見方を整理して紹介したい。
少なくとも当局者にとって中央銀行の最も重要な役割は物価の安定であり、国民が期待する経済回復は過剰な期待と警戒する。実際、住宅市場は低迷し雇用改善は遅々として進んでいない。このところ景気回復は足踏み気味である。FRBの金融政策が一方的に非難されてはいないが、更なる金融緩和を求める声が全く無いわけではない。
FRBにとってQE2はリーマンショック後の世界同時信用不安が引き起こす米国の長期的なデフレを何としても防ぐことであった。換言すると日本の「失われた10年」を防ぐ、よく言われる「米国の日本化」を防ぐことにあった。だが、景気低迷が続くとしばしば目的が変わる。その前に、QE2の評価をきちんとすべきだ。
現状、少なくとも当座のデフレは回避できたといっても良く、彼らにとって本来の目標は達成されたと私は思う。だが、米国内ではインフレリスクを高め将来の資産インフレを招き悪影響が出る前に、異常な超金融緩和を止めるべきとの声がFRB内にもあると報じられている。米国内だけではない、欧州や新興国もQE2を非難する声が続いた。
特に独裁国にとってQE2は劇薬だった。実際のところ、米国内で消化できないリスクマネーが新興国と国際商品相場に向った。ドル安の進行と平行して金や原油・穀物など暴騰しいわゆる過剰流動性相場が作られた。結果としてQE2が世界中の物価高騰を招くことになった。資源高と新興国に流入したマネーは急激な物価上昇をもたらし、新興国は揃って金利上昇や資本流入制限策を打った。
だが、政権基盤の安定しない新興国にとって物価上昇は民衆の不満を暴発させる起爆装置となる。正にQE2は劇薬だった。中東革命も中国の暴動頻発は、失業した若者の怒りを暴発させることになった。米国も例外ではなかった。ガソリン価格の高騰が民衆(というより消費者だが)、彼らの生活を圧迫し間接的に大統領の支持率を低下させた。
だが、米国に他の施策があったろうか。実質ゼロ金利下にあったFRBがデフレ回避のために取りうる対策は他に無かったと私は考える。6000億ドルの国債買い入れは政策金利を0.75%の引き下げに相当する(Jon Hilsenrath)という。だが、薬効は徐々になくなっている。
これ以上の金融緩和(QE3)はすべきではない。特に商品相場が実需以外の要因で左右されると、薬の効きめより害毒の方が大きくなる。FRBも財務省もこの損得計算を十分認識しており、QE3をやることはありえないというのが私の予測である。
蛇足だが、世界の報道からフクシマの名前が余り聞かれなくなった。世界に恥を撒き散らした政局は幸いなるかな殆ど無視されている。もう勝手にやってくれという感じだ。日本の強さはそれでも企業業績は予想を遥かに上回る速さで回復に向っていることだ。一方、国の指針や支援を待ついわば自力では立ち向かえない人達には、長い不満の道のりが待っている。この二重構造が大震災の復興で少しでも改善することを祈りたい。■