大震災以来、いわゆる「癒されるとか、元気になる音楽」がテレビ・ラジオからよく流れるようになった。よく聞くからというより、悲惨なニュースを聞き映像を見ると、自分自身がそういう音楽を求めるようになった気がする。連日の悲惨なシーン漬で徐々に脳の中で化学変化が起こったようだ。
私の場合、気がつくと勇気付けるとか元気になる音楽より、まだ若かった青春時代をほろ苦く思い出して情緒的になれる音楽を好んで聴いているような気がする。前にお勧めしたレディ・アンテベラムは、今では重すぎる感じがして積極的に聞く気分になれない。
今ではカーペンターズの「青春の輝き」のような透き通った水みたいな曲が良い。その中でも今最も嵌まっているのが、ダン・フォーゲルバーグ(Dan Fogelberg)だ。彼の代表作の「Longer」のメロディーを聞くと心が癒される。当時は何と甘っちょろい軟弱でメッセージ性のかけらも感じない曲と思った。左脳が論理的に正しくない音楽だと思い、右脳をねじ伏せたのかもしれない。
体の中を流れる体液の成分が変わり、右脳が活性化されたのだろうか。いずれにしろ、軟弱なのが今の気分にあっているのだ。歌詞には明確なメッセージがないが、彼の生活スタイルは自然を愛し環境保護・反原発で知られている。私の好みではなく今の日本の状況に合っているのかも。
ネットで調べると、彼の全盛期は70年代後半から80年代だったようだ。当時は60-70年のフォークソング全盛時代が終り、他のジャンルの音楽と影響を受けあい新たな流れの中にあった。彼の音楽ジャンルはフォーク・ロックだそうで、フォーク世代のJテーラーの影響を受けたといわれている。だが、今聞くとむしろスローバラードのカントリー感覚の曲が多いように私には感じる。
私は彼のCDを1枚も持ってない。YouTubeでパソコンの音声をステレオに接続して聴く。どの曲を選んでも米国の美しい自然を写した写真や動画が出てくるので、この映像を見るだけでも心が和んでくる。是非ご覧になることを勧めたい。
ところで、実は音楽だけではない。テレビを見ると涙を流す場面じゃなくても少し感動しただけで涙ぐんでしまう。ハッピーエンドの結末が見え見えのラブ・コメディなのに、予想通りその場面になると涙ぐむ。感傷的になるのは震災のせいではなく、単に年をとっただけのことかもしれない。■